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残業代請求に「負けるケース」と「負けたらどうなるか」を詳しく解説

更新日:2019年07月23日
残業代請求に「負けるケース」と「負けたらどうなるか」を詳しく解説のアイキャッチ

残業代の請求を考えている方の中には次のような不安を抱えている方は少なくないのではないでしょうか。

「残業代を請求して負けたらイヤだな」
「残業代請求をして負けたら、どうなるんだろ」
「どんな場合だと残業代請求に負けるんだろ」

 確かに、残業代請求は一生で何度もしない行為ですので、初めての行動に不安を覚えるのも無理はありません。
 そこで、今回は残業代請求に「負けるケース」と「負けたらどうなるか」を中心にお伝えいたします。本記事で残業代請求に関しての不安を払拭して、行動に移せる一助になれたら幸いです。

残業代請求で負ける可能性があるケース

 残業代の未払いは違法ですので、基本的に残業代請求で負けるケースはありません。しかし、以下のようなケースでは残業代請求が退かれ、負ける可能性があります。

【ケース①】自身の判断での残業代請求

 残業代請求の手続を全て自分で行うと、負ける可能性があります。
 というのも、残業代請求をするためには下記の①から④までの工程を踏まなければなりません。

①有効な証拠の収集
②各書類の作成
③残業代の請求金額の計算
④会社と交渉

上記の工程を他者のアドバイスなしにスムーズに遂行出来るのは、残業代請求に対する予備知識がある方くらいではないでしょうか。
多くの方は予備知識がないため残業代請求に向けた準備をする過程で頓挫し、結果的に負けてしまう可能性があるのです。

【ケース②】残業代請求が苦手な弁護士に依頼

 医者に「内科」「眼科」等といった専門医師がいるように、弁護士にも得意・不得意の分野があります。残業代請求に強い弁護士もいれば弱い弁護士もいるのです。
残業代請求に弱い弁護士に、未払い残業代請求を依頼すると次のような問題が発生し、負ける可能性があります。

・本来回収出来る金額より少ない残業代しか回収出来なかった
・残業代請求に失敗して、1円も回収出来なかった

【ケース③】少額な残業代請求

 未払い残業代が少額の場合も負ける場合があります。
 例えば、請求額が数千~数万円だと、会社から「支払い済み」「残業の事実はない」等と言われ、誤魔化されるケースがあるのです。

【ケース④】残業を証明するものがない

 残業代を請求するためには最低限、「労働条件を証明する書類」「残業の事実を証明するもの」の2つが必須です。
 その2つがなければ、残業代請求をしても会社に「残業の事実がない」と言われ、取り合ってもらえない可能性が考えられます。

【ケース⑤】時効が過ぎている

 実は、残業代請求には2年の時効があります。起算点(時効がスタートする日)は給与支給日です。給与支給日から2年が経過すると時効が成立し、未払いの残業代は無効になります。
 そのため、2年の時効を知らずに残業代請求をして会社から「時効だから無理」と言われ負ける可能性があります。

【ケース⑥】管理監督者に該当している

 労働基準法上の「管理監督者」に該当する労働者は、労働時間に関わらず残業代が支給されません。
 管理監督者は、時間に捉われず仕事が出来る等の性質が考慮され、労働基準法上の労働時間や休憩・休日に関する規定が適用されません。ですので、残業をしても残業代が支給されません。

そう、管理監督者でありながら残業代請求をした場合は負けるのです。

【ケース⑦】固定残業代制を採用している

 固定残業代制が採用されている場合、あらかじめ決められた時間分の残業代が給与に含まれています。そのため、あらかじめ決められた時間以上の残業をしていない場合は、残業代は発生しません。
 ですので、固定残業代を採用されているにも関わらず、残業代を請求した場合は負ける可能性があります。
 固定残業代制と同様に、あらかじめ決められた時間分の残業代が給与に含まれているみなし残業代制を採用されている場合も負ける可能性が考えられます。

残業代請求をして負けた判例

 実際、過去には残業代請求に負けた判例があります。ここでは、請求側の従業員が残業代請求に負けて会社が勝訴した判例をご紹介します。
 どのようにして、会社が勝訴したのかも注視していきましょう。

神代学園ミューズ音楽院事件

 神代学園ミューズ音楽院では、従業員と36協定を締結していないため従業員の残業を禁止していました。もし、定時を超えるようであれば管理職に引き継ぐように周知していました。
 しかし実情は、一部の従業員が定時までに業務を終えることが出来ず残業を行っていました。そこで、残業を行っていた従業員がタイムカードの打刻時間に応じた残業代の支払いを求めました。

 それに対し、学校は「明確に残業禁止命令を出していた」と主張。残業は従業員の自由意思で遂行した面が強く会社が命じたものでない、として残業代の支払いを拒否しました。

 裁判所は「残業禁止の通達に背いて行った残業は、労働時間と見なすのは困難である」として会社の主張に理解を示しました。但し、本件は一部の残業代は支払うように命じられました。

姫浜タクシー事件

 タクシー運転手で元営業次長だったAが定年退職後に、「自分は事実上、管理職ではなかった」と主張し、在職中の時間外労働と深夜労働の賃金を会社に請求しました。

 しかし裁判所は、Aが以下の要素を持っていることを鑑みて、Aを管理監督者であると判断しました。

「多数の乗務員を監督指導する立場であった」
「人材採用において採否を決定する一定の権限を持っていた」
「会社から出退勤時間に関する規定を設けられていなかった」
「他の乗務員と対比すると報酬が高額だった」

 但し、管理監督者であっても深夜労働に対する割増賃金は発生します。そのため、その賃金のみ容認されました。

富士運輸事件

 ドライバーとして勤務していたBは勤続1年8ヶ月で退職。その後、残業代が支払われなかったとして会社に請求をしました。しかし、会社は定額残業手当として支払い済みであると主張。それに納得しないBは会社を相手取り訴訟を起こしました。

 裁判所は、この事件の争点を定額残業手当に当てました。そこで、次の要素かあることから、会社の対応に問題はなかったと判断されました。

・定額残業代制について就業規則にあった
・誰もが閲覧可能な場所に就業規則が掲示されており、従業員に十分に周知されていた。
・会社が実際の残業時間の相当する額の定額残業代を支払っている

 Bの訴訟は退かれ、会社が勝訴しました。

 上記①から③の判例では、いずれも会社の言い分が優位に立って負けたとも言えるでしょう。残業代請求をする際は、会社の言い分に負けない準備をすることが何より大切と言えるのではないでしょうか。

残業代請求に負けないための対策

 会社の言い分に負けないようにするためには、どのような準備をすれば宜しいのでしょうか。下記に列記する4つを行えば、負ける可能性がグッと低くなります。


・労働条件を示す証拠を集める
・残業時間を立証する証拠を集める
・残業代請求に強い弁護士に依頼する
・管理監督者に当たらないことを主張する(※会社から管理監督者と見なされている場合)

 1つずつ見ていきましょう。

【対策①】労働条件を示す証拠を集める

 労働条件を示す証拠には以下のものが挙げられます。

・雇用契約書
・就業規則
・給与明細

 上記のものを証拠として集めておくと、自身がどのような労働条件で雇用されているのかを把握することが可能になります。また、残業代請求をしたのに、「管理監督者にも関わらず残業代請求をしてしまった」等の無駄足を避けられます。

【対策②】残業時間を立証する証拠を集める

 残業時間を立証する証拠になり得るものには次のようなものが挙げられます。

・タイムカード
・シフト表
・業務日報
・勤務時間を記録した手帳
・残業アプリ
・家族に帰宅を知らせるメール
・会社のパソコンのログ
・メール・FAXの送信履歴
・セキュリティカードの入退館履歴
・SUICA等のICカードの利用履歴

 残業時間を立証する証拠は、残業代を計算する際にも利用出来ます。残業代請求をするためには請求する残業代額を確定しなければならないだけに、残業時時間を立証する証拠を持っていることは「負けない最大の対策」と言えます。

【対策③】残業代請求に強い弁護士に依頼する

 ①と②は必須ですが、より負けない一助になるのが、残業代請求に強い弁護士に依頼するという方法です。
 とはいえ、残業代請求に強い弁護士の探し方が分からない方は多いのではないでしょうか。
 そこで、残業代請求に強い弁護士の特徴を下記に列記します。

・ホームぺージに「残業代請求に強い」と明記されている
・ホームページに「過去の残業代請求の実績」が掲載されている
・相談料無料で着手金ゼロの完全成功報酬の仕組みを導入している
・残業代がどれくらい回収出来るのか、事前に答えることが出来る

 また、下記のような弁護士は残業代請求に弱い可能性があるので避けましょう。

・大手の法律事務所
・企業の顧問になっている法律事務所
・裁判の実績の多さをアピールしている

残業代請求に強い弁護士についてはこちらの記事「残業代請求に強い弁護士の探し方」で詳しく説明しているので、併せて見てみてください。

【対策④】管理監督者にあたらないことを主張する

 事実上、管理監督者ではないにも関わらず、会社から管理監督者と見なされている場合は、自身が管理監督者ではないことを主張する必要があります。

 管理監督者であるかどうかの一番の争点は、「経営者のような権限や責任が与えられているかどうか」になります。この争点については詳しくはこちらの記事『管理監督者の定義とは:「管理職」=「管理監督者」ではない』に詳しく明記されているので併せてみてください。そこで、管理監督者でないよう事実が分かれば残業代が発生する旨を主張する可能性があります。

残業代請求に負けたらどうなる?

 ネットでの情報を見ると、残業代請求に負けるとどうなるのか気になる方が多いです。とりわけ、次のような不安を抱いている方が多いようです。

・弁護士費用の負担について
・会社側に迷惑料等のお金を支払わないといけないのか
・会社から嫌がらせを受けることはないか
・転職先の会社に残業代請求をしたことがバレないか

【負け①】弁護士費用の負担について

 「残業代請求に負けると弁護士費用は全額自己負担になるのか」を心配している方が多いようです。
 しかし、完全成功報酬制の法律事務所を選べば、その心配は不要です。完全成功報酬制を説明するために、まず弁護士の報酬の種類をおさらいしていきましょう。

 弁護士に依頼をすると次のような費用が発生します。

相談料…弁護士に相談する際に発生する費用
着手金…弁護士に依頼する際に支払う費用
報奨金…残業代を回収出来た際に支払う費用。一般的に、報奨金は回収額から差し引かれる

 相談料と着手金が無料で、報奨金しか費用を取らない報酬制度のことを完全成功報酬制と呼びます。
 完全成功報酬制を採用している弁護士に依頼した場合、残業代の請求に成功した際にのみ報奨金という名目で費用が発生します。つまり、残業代請求に負けた場合、報奨金は発生しないため、依頼者が弁護士に支払う費用はゼロです。但し、郵送代やコピー代等に掛かった数千円~数万円は、依頼者の自己負担になります。

 完全成功報酬制を採用していない弁護士の場合は、着手金が有料、もしくは相談料も着手金も有料にしています。そのため、残業代請求に負けていても相談料、あるいは相談と着手金を支払わなければなりません。

残業代請求で発生する弁護士費用の相場

【負け②】会社側に迷惑料等のお金を支払わないといけないのか

 残業代請求に負けると「会社に迷惑料のようなお金を支払わないといけないのか」心配している方もいるようです。
 確かに会社からすると、「従業員に残業代請求をされて迷惑を被った」と不服に思うかもしれません。しかし、もし会社から損害賠償請求をされたとしても、認められることはほぼないので、心配する必要はないと言えるでしょう。

【負け③】会社から嫌がらせを受けることはないか

 残業代請求に負けると、「以後、会社から嫌がらせを受けるのではないか」と不安を抱えている方もいます。
 そのような不安を抱えている方には、退職後に残業代請求をすることをオススメします。請求は辞職後でも可能です。辞職後にすぐ請求手続が出来るように、証拠等は在学中にバレないように集めておきましょう。

【負け④】転職先の会社に残業代請求をしたことがバレないか

 退職後に残業代請求をしたとしても、会社から報復として「転職先にバラされる」と心配する方もいるでしょう。
 しかし、従業員から残業代請求があった事実を第三者である他社に情報共有する行為は以下2つの事情があるため、バラす会社は少ないと考えられます。

①従業員の個人情報を本人の同意なしに第三者に共有する行為は違法
 会社が従業員の個人情報を本人の同意なしに第三者に共有する行為は、法律で違反になっています。法を犯してまで、自社の利益に繋がらない嫌がらせをする会社はいないと考えられます。

②会社のイメージダウンに繋がりかねない
 残業代請求があった事実を他社に伝える行為は、自社が従業員に違法残業をさせていることを世間に周知させているのと同じと言えます。会社のイメージダウンに繋がりかねない墓穴を掘るような行為はしないと考えられます。

終わりに

 本記事をご覧になり、残業代請求に関する不安を払拭出来ましたでしょうか。残業代請求に負けないためには本記事で紹介した対策をする必要があります。残業代請求を検討している方はぜひ対策をしてから行動してください。

 また、不安を払拭出来たとしても会社とは出来る限り荒波を立てたくないと思う方も多いいでしょう。そんな方に向けたこちらの記事「会社と荒波を立てずに残業代を請求する方法」も用意しています。ぜひ1つの参考にしてみてください。

この記事の著者

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残業代請求弁護士ガイド 編集部

残業代請求に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 ぜひ残業代請求の参考にしてみてください。 悩んでいる方は一度弁護士に直接相談することをおすすめします。 今後も残業代請求に関する情報を発信して参ります。

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