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未払い残業代請求は「証拠集め」が肝心:証拠がない場合の請求方法も紹介

更新日:2019年06月18日
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最近、サービス残業が問題になっており、そのことによって「残業代も出ないのに仕事ばっかりの生活で疲れた」「安い給料で毎日、朝から晩まで働いているのに残業代出なくてやってられない」といった理由で仕事を退職しようと考えている方もいるかと思います。

確かに、残業代も出ないのに残業をさせられる毎日は嫌ですよね。辞めようと思っている方はその前に、未払いのサービス残業代を請求したくないですか?サービス残業代は、残業をした証拠さえ用意出来ていれば請求することが出来ます。

そこで今回は、未払いの残業代を請求するための証拠集めについて説明していきます。

証拠が必要な理由

 そもそも未払いの残業代を請求するためには、なぜ証拠が必要なのでしょうか。それは、訴える側に立証責任(確固たる証拠で物事を証明する責任)があるからです。
 未払いの残業代を請求する場合、立証責任は労働者側にあります。労働者は自らの手で残業をしている事実を立証しなければなりません。

残業をした証拠になるもの

では残業をしている事実を立証するためには、どのような証拠を集めればよいのでしょうか。具体的に言うと、次の4種類に証拠を集める必要があります。

・労働契約を把握出来る証拠
・残業していた事実を証明する証拠
・残業内容が分かる証拠
・支給額が分かる証拠

 ひとつずつ見ていきましょう。

労働契約を把握出来る証拠

 労働契約を把握出来る証拠を持っていると「未払い残業代が発生しているかどうか」「どのように残業代を計算するか」等の判断材料になります。まず、はじめに集めた方がよい証拠と言えます。
 また、会社は未払い残業代の支払いを免れるために、虚偽の主張をするケースがあります。その場合に労働契約を把握出来る証拠も持っていると論破出来ます。

 労働契約を把握出来る証拠には下記の書類が当たります。

⑴雇用時に交付される書類

 会社が労働者を雇用する際には、労働基準法施行規則第5条が定めた書面を交付しなければなりません。労働基準法施行規則第5条では、労働条件について以下の情報を労働者に伝えておかなければいけない項目を定めています。

・労働する契約期間に関すること
・労働する場所や仕事内容に関すること
・労働する時間(始業・終業の時間)や、あらかじめ決められた1日の労働時間を超えての労働が出来るか否か、休憩時間、休日、休暇に関すること
・退職や解雇に関すること
・退職手当が出る労働者の条件、退職手当の決定や計算方法、支払いの方法、支払い時期に関すること
・退職手当てを除いた臨時に支払われる賃金、賞与に関すること
・労働者に負担させるべき食事、作業用品に関すること
・安全や衛生に関すること
・職業訓練に関すること
・災害補償や業務外に起きた傷病扶助(怪我や病気に対して協力して助けること)に関すること
・表彰や制裁に関すること
・休職に関すること

 これらが記載されているには、会社から一方的に交付される書類と労使間(労働者と会社の間)で締結する書類の2種類が挙げられます。
 会社から一方的に交付される書類には雇用通知書や労働条件通知書、採用条件通知書が挙げられます。労使間で締結する書類には雇用契約書や労働契約書等が挙げられます。

⑵就業規則

就業規則とは、会社が労働者に定めた労働のルールです。
就業規則には、就業時間、休日、時間外労働の有無、割増賃金の計算方法など、未払い残業代を請求するためには必要な情報が多く含まれています。そのため、就業規則は有力な証拠になるのです。

 以上の⑴⑵に関しては、収集しようとすると「残業代請求をするのではないか」と疑いをかけられる可能性が否定出来ません。ですので、リスクを感じる方は収集を強行しなくても構いません。
 しかし、次から説明する証拠については、残業をした事実を証明する証拠になるため必要です。

残業をしていた事実を証明する証拠

 残業をしていた事実を証明する証拠を持っていると「実際に何時間の残業をしたのか」「何時まで会社に残っていたのか」等の立証が可能です。
 残業をしていた事実を証明出来る証拠には次の13個が挙げられます。

①タイムカード・勤怠を記録するツール

労働時間を管理するタイムカードや勤怠を記録するツールは労働時間を算出する証拠としては有効です。
しかし、定時にタイムカードを押させて残業させるサービス残業等もあることから、そもそも会社が労働者の労働時間を管理出来ていないケースも少なくありません。

そのため、タイムカードや勤怠を記録するツールだけでは証拠不十分になる可能性があります。

②業務日誌・日報

タイムカードや勤怠を記録するツールで労働時間の管理をしていない場合もあるでしょう。その場合は、代わりに業務日誌・日報が証拠になる可能性があります。

③メール・FAXの送信履歴

業務で使用しているメールの送信履歴も残業をしている証拠になります。メール送信時刻が、その時間まで労働していたことを証明出来る可能性があります。

また、メールと同様、業務で使用しているFAXの送信履歴も残業をしている証拠になる可能性があります。

④LINE(ライン)

 無料通話・メールアプリのLINE(ライン)も残業をしていた事実の証明になり得ます。例えば、家族に「残業が終わったので今から会社を出ます」といった内容のLINEを送っていれば、残業をしていた証拠になる可能性があります。

⑤ツイッター

 ツイッターでの呟きも証拠になるケースがあります。例えば「残業なう」や「仕事が終わらなくて上司が帰してくれない」と呟きは、その日時に残業をしている証拠になる可能性があります。

⑥メモ・エクセル

 残業した時間をメモやエクセルに残しておく方法も証拠になる可能性があります。例えば、「出勤9:00、退勤21:30」といったように、出退勤時間が分かるようにメモをしていれば証拠になるかもしれません。
 加えて、何時から何時までどのような業務を遂行していたか、誰からどのような指示をされたか等、詳細が書かれているとより有力な証拠になります。

⑦日記・ブログ

 日記やブログ等も証拠になる可能性があります。残業時間が示されていると証拠になる可能性が高くなるでしょう。

⑧残業アプリ

最近では、残業専用の残業アプリも登場しています。GPSをONにして位置情報を記録することで、残業代の推計と証拠の確保することが出来ます。

⑨建物の入退館記録

 セキュリティ管理されたビルの中に、勤務する会社がある場合は入退館記録が証拠になる可能性があります。入退館記録には入退館した時刻が記録されているためです。

⑩交通系ICカード

 SUICAやPASMO等の交通系ICカードは残業時間の証明になります。JR等に依頼すれば、交通機関の利用履歴を確認することが可能です。

⑪会社内の時計

 オフィスの時計を撮った写真も、その時間に社内にいた証拠になり得ます。退社するタイミングに撮った時計の写真がよいでしょう。
また、会社のパソコンの画面に表示されている時刻も、写真に収めておくと証拠になるでしょう。

⑫タクシーの領収書

終電がなく、タクシーで帰宅した場合は会計時に領収書をもらっておけば、ほとんどのタクシー会社の領収書は乗車時間帯が記載されているので、これも有力な証拠になります。

⑬パソコンのログ

パソコンを使う仕事をしている人はパソコンのログも有力な証拠になります。何時にパソコンを立ち上げ、何時まで稼働させていたかが分かるからです。
しかし、パソコンを切らずに帰宅してしまっている場合はずっと稼働していることになってしまい証拠としては弱いので、そこは注意が必要です。

残業時の仕事内容が明記された証拠

退勤時間を証明出来たとしても会社から反論される可能性があります。「勝手に残ってたんでしょ?」「その時間まで喋っていただけで、本当は何もしてなかったんじゃないの?」等と言われてしまうかもしれません。
そうなった際に対処出来るよう、労働者側でも残業時間中に仕事をしていた事実が分かる資料を持っておいた方がよいです。
具体的には次のようなものが労働をしていた証拠になります。

⒈残業指示書・残業指示メール

 上司から残業をするように指示された事実が分かる残業指示書は証拠になり得るでしょう。残業をするように指示を受けたメールも同様に証拠になるでしょう。

⒉残業承認書

また、上司から残業をすることを許可された事実が分かる残業承認書も証拠になる可能性があります。

支給額を証明する証拠

 支給額を証明する証拠も必要です。実際に支払われている支給額が分かれば、未払いの残業代額を把握出来ます。
 支給額を証明するものは、給与明細と源泉徴収票があります。

証拠集めの注意点

 証拠集めをする大際には次の注意点に留意しておきましょう。

【注意①】コピーや写真でOK

 収集する証拠は原本であることに越したことはありません。しかし、タイムカード等、原本を収集するのが難しいケースもあります。
 そのような場合は、コピーや写真でもOKです。

【注意②】在籍中に証拠を集める

 証拠集めは退職後ではなく、在籍中に行いましょう。退職後に証拠集めをしようとするとタイムカード等の残業時間を証明する証拠等の手に入れることが困難になります。
 ですので、退職後だと手に入れづらい証拠は在籍しているうちに集めておきましょう。

【注意③】2年の時効がある

在籍中の方が証拠を集めやすいと説明してきましたが、その他にも理由があります。それは残業代請求には2年という時効がある、ということです。2年の時効を過ぎてしまった期間の残業代は請求することが出来なくなってしまいます。

そのため、証拠集めを退職してからやろうと思っても、準備している間に時効が過ぎてしまうという場合が出てきます。このことは念頭に入れておいた方がよいでしょう。

社内に味方をつくっておこう

証拠集めは最も重要なことではありますが、それとは別に社内に味方をつくっておくことも大切です。

味方をつくっておいた方がよい理由として、労働審判(労働者と事業主との間で起きた労働問題を迅速かつ適正な解決をするための裁判所の手続)になった時、陳述書の作成に協力してもらえる社内の同僚などがいたらとても有利になるからです。

陳述書とは、問題に対して本人が経験したり知っていたりする事実を時系列に沿って記載してある書面のことをいいます。本人の言い分を、裁判所や会社側が理解・把握するために用いられます。
もちろん、同僚の社内的立場もあるので協力してもらうことは簡単ではありませんが、そのような味方をつくることが出来れば、労働審判の手続きは優位に働きます。

退職済みの方の場合の証拠の集め方

 本記事をお読みになっている方の中には、「退職済みで証拠になるものを準備していなかった」という方もいるでしょう。そのような方は、証拠を集めることは簡単ではありません。しかし、諦めるのは早計です。以下に挙げることをやってみましょう。

【退職済み①】開示請求

 退職後でも、会社に対して勤務記録や就業規則、労働契約書等を請求することが出来ます。これを開示請求といいます。
 過去の裁判例では「会社は労働者からの労働時間に係る資料請求に対し開示する義務がある」といったケースがあります。ですので、基本的に会社は労働者の開示請求に応じなければなりません。

【退職済み②】証拠保全

 とはいえ、会社にとって残業代の支払いは大きな痛手になります。開示請求を拒否する会社も少なくありません。
 そのような場合は、証拠保全手続が効果的です。

 証拠保全手続とは、証拠を確保するための手続きのことをいいます。証拠保全手続は、裁判所が会社に書面で通知したり、裁判官や裁判所書記官が会社に出向したり等で行われます。
 裁判所が動くだけに、会社は労働者からの開示請求より強い権威を感じます。そのため、多くの会社は証拠保全手続に応じます。

【退職済み③】収集可能な証拠を用意する

 証拠が存在すれば開示請求や証拠保全手続で解決しますが、そもそも証拠になり得るものが会社にないという場合もあります。
 そのような場合は自身で証拠を用意しなければなりません。退職後の場合、用意出来る証拠が限られます。
下記のものを参考に出来るだけ証拠を用意しましょう。

○家族に「残業が終わったので今から会社を出ます」等といった内容を送ったLINE(ライン)
○交通系ICカードの利用履歴
○給与明細や源泉徴収票等の支給額を証明する証拠

弁護士が準備の相談に乗ってくれる

残業代請求の証拠集めにしておいた方が良い準備について説明してきましたが、人それぞれ事情が異なるので、具体的な対策や準備も異なってきます。
そのため、準備をする際はまず法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。弁護士ならその人にあった対策や準備について的確にアドバイスをしてくれます。

打刻後のメールを証拠に未払い残業代の請求に成功した事例

 ここで、打刻後のメールを証拠に未払い残業代の請求に成功したTさんの事例をご紹介させていただきます。この事例の詳細は以下の通りです。

Tさんの解決事例(男性・30歳代)
ご依頼内容 残業代の請求
雇用形態 正社員
飲食店で働いていたTさん。残業は毎日のようにあり,しかも店舗は朝方まで営業しているため,深夜勤務も度々ありました。しかし,支払われていたのは残業代の一部のみで,残りの残業代と深夜割増賃金は支払われていませんでした。このような職場環境に退職を考えるようになったTさんは,残業代の請求について一度,弁護士の話を聞きたいと考え,当事務所にご相談くださいました。
「会社からの指示で実際の退勤時刻よりも早く打刻をさせられていました。退勤の打刻後にメールを送信していたのですが,メールは勤務時間の証拠になりますか?」。相談の際にTさんは,このようにおっしゃっていました。弁護士は,Tさんからのご質問に対し,会社にタイムカードの開示を求め,タイムカードとメールの送信履歴と照らし合わせたうえで正確な未払い残業代を計算し,請求できるとご説明しました。
ほどなくしてTさんが会社を退職し,正式にご依頼いただくことになりました。弁護士は,すぐ,会社にタイムカードをはじめとする勤怠の資料の開示を求め,開示された資料とTさんが保管していたメールの送信履歴を用いて未払いの残業代を計算し,会社に請求をしました。会社は,「変形労働時間制のため,残業代を支払う義務はない」と反論をしてきましたが,開示された資料には,変形労働時間制である証拠がないため,弁護士は変形労働時間制の証拠を開示するように求めました。しかし,会社はいっこうに開示に応じず,このままでは交渉が進展しないと判断した弁護士は,Tさんと相談のうえ,労働審判を申し立てることにしました。すると,労働審判の申立を行うことを知った会社が急に態度を変えて「未払い分の残業代を支払う」と連絡があり,金額交渉の結果,解決金として未払い残業代140万円が支払われることで合意に至りました。

引用元:https://www.adire-roudou.jp/case/103.html

 以上のように、労働者が個人で請求して会社が応じなくても、弁護士が介入すると残業代の請求に応じるというケースは往々にしてあります。というのも、弁護士は未払いの残業代請求について経験が豊富なため、ケースに応じた対処が可能なのです。
 ですので、弁護士に依頼して未払い残業代を回収する方法は、よい手段と言えるでしょう。

終わりに

以上、証拠になるものを中心に説明してきました。
未払いの残業代請求では、残業を証明する証拠について明確な取り決めはありません。ですので、残業を立証するのに有効と考えられるものがあれば手元に保管しておきましょう。
決して難しいことではありません。残業代請求を考えている方は、ぜひ本記事を参考に準備してみましょう。

この記事の著者

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残業代請求弁護士ガイド 編集部

残業代請求に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 ぜひ残業代請求の参考にしてみてください。 悩んでいる方は一度弁護士に直接相談することをおすすめします。 今後も残業代請求に関する情報を発信して参ります。

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