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残業代請求で発生する弁護士費用の相場

更新日:2021年01月22日
残業代請求で発生する弁護士費用の相場のアイキャッチ

 近年、働き方改革の影響等もあり、未払いの残業代の請求額が増加しています。
 平成28年度には9万人以上の労働者が会社に未払いの残業代を請求し、1,300以上もの企業がその支払いに応じています。なんと、その総額は99億円を超えています。

 ただ、請求をした労働者は、必ずしも知識が豊富で未払いの残業代をもらえると確信して請求を行っていません。
 不安を抱えながら、未払い残業代請求に向けて取り組んだのです。

 その不安の種の1つになっているのが弁護士費用です。

「弁護士費用の相場は?」
「残業代を回収出来るタイミングはいつ?」
「弁護士に以来をしたら逆に損しない?」

 費用に関する不安や疑問は様々です。
そこで本記事では、それらの不安や疑問を持つ読者の皆さんの応えるため、弁護士に残業代請求の依頼をした場合の費用について深掘りしていきます。
 残業代請求を検討している方は、費用に関する不安や疑問を解消して、一歩踏み出してみましょう。

弁護士費用の相場

 はじめに弁護士費用の相場について触れていきます。
 相場は、おおよそ「20~40万円+請求額の20%程度」と考えられています。
例えば300万円の未払い残業代を請求する場合は、相場に当てはめると「20~40万円+60万円」となるため、80~100万円が弁護士費用になります。
 また、弁護士費用の内訳は下記の6つに分かれています。

①相談料
②着手金
③事務手数料
④成功報酬
⑤実費
⑥タイムチャージ・手当

それぞれの相場を見ていきましょう。

【相場①】相談料

相談料とは、弁護士に相談する際に発生する費用のことをいいます。
相場は30分5,000円です。ただ、実際の相談には1時間程度を費やすため、1回の相談で1万円は発生することが予想されます。
 なかには、相談料を初回の相談のみ無料にしたり、何度相談しても無料だったり等、弁護士事務所によって相談料の形態は様々です。

【相場②】着手金

着手金とは、弁護士に依頼をする際に支払う費用のことを指します。依頼を受けた案件に”着手”することから「着手金」といわれています。
残業代を回収出来るかどうかに関わらずこの着手金は発生します。そのため、回収出来なかったとしても着手金が返金されることはありません。
 着手金の相場は2つのタイプに分かれています。

それぞれの事務所で料金を設定している事務所

 それぞれの事務所で料金の設定をしている場合、着手金の相場は20~30万円です。ただ、着手金は「任意交渉」「労働審判」「裁判」のどれで依頼するかによって料金が異なります。

■任意交渉
 任意交渉では、内容証明郵便の発送し会社に残業代の支払いを求めます。

・内容証明郵便とは

「誰が、誰宛てに、いつ、どんな内容の書類を出したのか」ということを郵便局が公的に証明する郵便です。

1書類を出したこと

2書類を出した日付

3書類の内容

を郵便局が証明してくれます。

多くの残業代請求は、はじめに任意交渉を行います。任意交渉の相場は5~10万円になり、労働審判や裁判より低額です。
弁護士に任意交渉を依頼すると内容証明郵便の文書作成や発送等を代理で行ってくれます。

■労働審判
 任意交渉で納得のいく残業代を回収出来ない場合には、労働審判が行われます。

・労働審判とは

裁判所で行われる紛争手続の1つです。裁判官1名と労働審判員2名から構成される労働審判委員会が審理(取り調べを行い事実を明白にすること)します。原則として3回以内で審理を完了させます。

 労働審判の相場は15~20万円です。任意交渉より相場が高いのは、裁判所が関与しているのが最たる理由に挙げられます。裁判所が関与すると、法律に基づいた主張と証拠が必要になります。そのため、任意交渉で用意する書類よりも詳細な書面を作成しなければなりません。
 また、任意交渉に次いで労働審判を行う場合、着手金が割引になる事務所があります。例えば、任意交渉が5万円、労働審判が15万円の着手金が発生する場合、労働審判は半額の7万5,000円になります。

■裁判
 労働審判でも解決しない場合は、裁判を起こして残業代を請求します。相場は20~35万円です。労働審判より費用が高くなるのは、作成する書類の枚数や裁判所に出頭する回数が増えるためです。

以上で挙げた通り、任意交渉、労働審判、裁判のどれにするかで着手金は異なりますが、そもそも着手金を無料にし、成功報酬を割高にしている形態を採っている弁護士事務所も少なくありません。

昔の日弁連の基準で着手金を設定している事務所

 一方で、昔の日弁連の基準で着手金を設定している事務所もあります。そのような事務所では、任意交渉と労働審判、裁判のいずれに関わらず請求額の8%(但し、最低でも10万円)に着手金に設定しています。例えば、請求額が200万円の場合は着手金は16万円になります。

【相場③】成功報酬

成功報酬とは、案件終了後に成果に応じて支払う費用のことを呼びます。別称、報酬金とも呼ばれています。全く残業代を回収出来なかった場合は原則として成功報酬は発生しません。
成功報酬の相場も2通りに分かれています。

回収額の20~30%

 1つ目の相場は回収額の20~30%です。
ネット広告を利用して集客に力を入れている法律事務所では、着手金を無料にする代わりに成功報酬を回収額の24~30%と若干割高に設定されています。

昔の日弁連の基準で設定している事務所

 昔の日弁連の基準では、成功報酬は回収額の16%と決められていました。現在もこの基準で成功報酬を設定している法律事務所は少なくありません。

【相場⑤】実費

実費の相場は1~2万円です。
ここでいう実費とは、次に挙げるものをいいます。

・内容証明郵便の送付代(1,200~2,000円)
・裁判所に納める印紙代
・郵便切手代
・裁判記録の謄写費
・弁護士の交通費、通信費

実費は、弁護士に依頼をしなくても発生する費用のため、厳密には弁護士費用とは異なります。しかし、依頼をすると実費も含めた費用を弁護士に渡すため弁護士費用として考えられています。

【相場⑥】タイムチャージ・手当

 現在では非常に少なくなっていますが、弁護士に対するタイムチャージ(時給)が発生する場合もあります。タイムチャージの相場は1時間当たり1~5万円と非常に高額です。
 また、遠方の依頼者の場合、出張日当があります。相場は半日で3万円、1日だと5万円です。

流れとタイミング

 費用の内訳をお伝えしたところで、次は流れをおさえていきましょう。費用の発生するタイミングも併せた表を以下に示します。
残業代弁護士表

未払い残業代請求は、実は多くが「任意交渉」で完了します。裁判にまでなること稀なのです。弁護士と契約した後、あなたはほぼすべての作業を弁護士に一任出来ます、そのため、あなたに手間や時間が掛かることはありません。こうした手軽さから、近年は多くの人が転職・退職を機に手軽に残業代を請求しています。

着手金の発生

 では着手金の発生についてみていきましょう。

労働審判の場合

 労働審判を依頼した場合、弁護士が労働審判申立書を作成し申し立てをした時点で着手金が発生します。労働審判の場合、収入印紙代と郵便切手代が必要になります。収入印紙代は、請求する金額によって異なります。例えば、100万円の請求なら5,000円、200万円なら7,500円です。郵便切手は手続を行う裁判所によって費用が異なります。

裁判の場合

 裁判で発生する実費は、裁判所に納める印紙代と郵便切手です。収入印紙代は100万円の請求なら1万円、200万円の請求なら1,5000円です。郵便切手は利用する裁判所によって異なります。

着手金は数回かかるが、報酬金は1回のみ

 以上で説明してきた通り、未払い残業代請求を弁護士に依頼する場合、数回に分けて費用がかかります。相談費は1万円程度だし、成功報酬は回収されたお金から差し引く形のためあまり気にならないでしょう。しかし1番気になるのは高額な着手金の支払いではないでしょうか。しかも着手金は任意交渉→労働審判→裁判と3回に渡れば着手金の支払いは3回と多額になります。

成功報酬の発生

 次いで成功報酬の発生についてです。

任意交渉で残業代が支払われる場合

任意交渉で会社が支払いに応じる場合は、両者で金額を決定します。全額を支払われるのが当然ですが、資金繰りが厳しい会社は減額を求めてくることがあります。
資金が豊富な会社であれば一括で支払われるでしょう。豊富でない場合は、分割払いを提案されることがあります。

成功報酬の手順

 支払いに関して会社と合意が出来たら、合意書を作成してそれに従い未払い残業代が支払われます。支払われたら弁護士に成功報酬を支払います。また、弁護士が会社から残業代を回収し、成功報酬分を差し引いた額を依頼者に支払うというケースもあります。

期間

 それでは、弁護士に依頼して残業代が手元に届くまでにはどれだけの期間を要するのでしょうか。以下のように依頼によって異なります。


◆任意交渉…1~2ヶ月程度
◆労働審判…2.5~4ヶ月程度
◆裁判…半年~1年程度

弁護士費用の支払い方法

 弁護士費用の支払いはそれぞれどのように支払うのでしょうか。
相談料は、弁護士に相談をした際に現金で支払うケースが多いです。
 着手金は、弁護士が指定する口座に振り込むか、弁護士事務所に現金を手渡しをするか、選択出来ることが多いです。
 ちなみに、相談料と着手金はクレジットカード支払いを受け付けている事務所は少ないです。
 成功報酬は、回収額から支払われるため依頼者の手元金から支払うことはありません。

弁護士費用を抑えるコツ

 さて、請求額が少額だから出来るだけ弁護士費用を抑えたいという方もいるでしょう。そこで弁護士費用を抑えるコツをお教えいたします。

【コツ①】無料相談を利用する

 まずは相談料を無料、もしくは初回無料にしているところを利用しましょう。ただ、無料相談でも「初回相談30分は無料」等、時間に制限があります。時間内に満足のいく相談が出来るように、疑問点をまとめどうしたいか、という着地点を決めてから相談しましょう。そうすることで、時間に無駄のない効率的な相談が可能になります。

【コツ②】細かい料金体系をしっかり確認する

 一見すると安く済みそうな費用形態を構えている弁護士事務所があります。実情は、「成功報酬が高額」等、かえって高くなる場合もあります。ですので、予想外の費用が発生しないかどうかをしっかり確認しましょう。

【コツ③】残業代請求の証拠を集める

 残業代請求に必要な証拠は集めておくのも費用を抑えるコツになります。
証拠が不十分であれば、弁護士が代理で証拠集めを行うこともあるため費用が高くなる可能性があります。ですので、可能な限り証拠を集めましょう。

【コツ④】追加の着手金が低い事務所を選ぶ

 残業代請求は任意交渉で完了するケースが多いとはいえ、労働審判や裁判に発展する可能性もあります。すると、その都度着手金が発生します。
 ですので、追加の着手金に割引がある事務所がオススメです。

【コツ⑤】未払い残業代の額で料金体系を使い分ける

 請求額によって費用を抑えられる事務所があります。例えば、

A事務所:完全成果報酬で成功報酬が30%
B事務所:着手金20万円で成果報酬20%

と、2つの事務所があるとします。それぞれで請求額200万円と400万円を請求したとすると

○請求額200万円の場合
【A事務所】
着手金0+成功報酬200万円×30%=60万円
【B事務所】
着手金20万円+成功報酬200万円×20%=60万円

○請求額400万円の場合
【A事務所】
着手金0+成功報酬400万円×30%=120万円
【B事務所】
着手金20万円+成功報酬400万円×20%=100万円

 実費等は含めていないので一概には言えませんが、請求額200万円の場合は弁護士費用は変わりません。一方、請求額が400万円の場合は弁護士費用が異なります。
 この一例のように料金形態によっても費用が変わるケースがあるということを念頭に置いておきましょう。

初期費用を支払う資金がない方

 初期費用を支払う資金がない方は、相談料と着手金が無料で残業代を回収した案件のみ費用をもらう完全成功報酬を採っている弁護士事務所に依頼することをオススメします。
 この場合、成功報酬が高い場合あります。しかし、泣き寝入りして全く残業代を支払われないより良策なのではないでしょうか。

弁護士に依頼をしよう

 効果的に未払い残業代の回収をしたいのであれば、残業代請求に強い弁護士に依頼することが必須と言えるでしょう。本記事で紹介した「弁護士の選び方」と「残業代請求に強いい弁護士の特徴」を参考に弁護士を探してみてはいかがでしょうか。

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