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建設作業員は再確認!残業代請求は当然の権利であることのアイキャッチ

建設作業員は再確認!残業代請求は当然の権利であること

建設作業員は再確認!残業代請求は当然の権利であることのアイキャッチ

 働いた時間分の労働賃金をもらう―当然のことですよね。ですが、働いた時間が労働時間と見なされるかどうかということが、しばしば争点になります。
 「管理職は残業が出ない」「〇〇時間以上は労働時間に含まれない」「定時以降は全てサービス残業」等、労働時間については様々な様態があります。

 2020年の東京オリンピックで使用される会場の建設・改修のために人手が必要とされる建設業界も、例外ではありません。新国立競技場の建設工事に従事していた男性社員が過労自殺したように、建設作業員の労働時間は問題視されています。
 本記事では、建設作業員の労働実態と「そもそも労働時間って?」についてご説明していきたいと思います。

建設作業員の労働実態

 建設作業員の労働実態は以下のような特徴が挙げられます。

実態➀土曜日・祝日は出勤

 日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)の調査では、4週間で8日以上の休みを設定している建設現場はわずか5.7%に留まりました。 つまり、週休1日制の労働環境下で働いている建設作業員は少なくないのです。
 実際に、建設業界では土曜日や祝日を出勤日にしている企業は多いです。

実態②労働時間が長い

産業別年間総実労働時間
 厚生労働省が発表した「産業別年間総実労働時間」によると、 上図のように建設業の年間総実労働時間は、運輸業に次いで2番目に多い2,066時間なのです。全産業の平均労働時間の1,777時間に比べると約300時間多いため、建設業の労働時間は多いと言えるでしょう。

 なお、現場監督等の場合は、日中は現場で作業をし、夕方以降は会社で事務作業をこなすことがあるため、さらに労働時間が増える傾向にあります。

労働時間が多い理由

 ではなぜ、建設業は休日が少なく労働時間も多いのでしょうか。これには、次に列挙する建設業界特有の背景が理由です。

理由➀体育会系気質

 建設業界は、「休日も働いて当たり前」「残業することは当たり前」等のように、体育会系気質な面があります。
 そのため、残業せざるを得ないというのが業界に蔓延している傾向にあるのです。

理由②短納期

 建築・建設物は依頼主から納期を設定されます。設定された納期までに完成出来ないと罰則金が発生してしまうため、必ず納期までに完成させなければなりません。ですが、バブル崩壊以降、依頼主の立場が強くなってきたため、短納期を求められことが増えてきました。

これにより、短納期での依頼を受けざるを得なくなったゼネコンの判断は、現場に過酷な長時間労働を強いるという余波を招いているのです。

・ゼネコンとは
 「General constractor」の略で、ダムや道路、ビル等の大きい工事を請け負う建設会社 のことを指します。建設業界を簡単に図式化すると、ゼネコンは以下のような位置づけになります。

■オフィスビルを建てるとき

  1. 顧客
  2. 不動産販売会社
  3. ディベロッパー(開発業者)
  4. ゼネコン
  5. 2次下請け
  6. 3次下請け(孫請け業者)

 仕事を請け負ったゼネコンは下請けに業務を割り振ります。要は、請け負った建設工事に対してどのように進行していくのかを考える羅針盤的な役割を、ゼネコンが担っています。
 ディべロッパー (開発業者)は不動産を開発する役目があり、例えば駅の再開発や、湾岸地域の不動産開発等の仕事が挙げられます。

理由③労働者1人当たりの業務量が増えた

日本は高度経済成長期を経て、一通りのインフラも整い、住宅やマンション、オフィスビル等が足りていると言える状況になっています。成熟した今、建設業界の仕事は減少傾向にあります。

そのため、近年の建設業界は競争過多になっているのです。競争が激しくなれば、受注額を下げるために人件費を抑えます。結果、労働者1人当たりの業務量が増え残業が増える、という悪循環を起こしているのです。

 それが分かるデータとして、国土交通省の調べた大手建設業者50社の受注高の合計データがあります。 年代別で見ると、バブル期以降は以下のように変動しています。

年代 年間の建設工事受注高の合計
1990年度(バブル期) 25兆円
1991~2000年度(バブル崩壊~失われた10年) 15~19兆円の間で変動
2001~2008年度(いざなみ景気) 11~14兆円の間で変動
2009~2012年度(リーマンショック) 10兆円
2015年度 13.7兆円

 このように受注高は半減しており、建設業界は価格競争が起こり安く請け負うという状況になったのです。

建設業は36協定から適用除外

 労働時間が多い理由は他にもあります。それは「36(サブロク)協定」です。
 現在、所定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて残業をさせる場合、会社は労働者と労働基準法36条の基づく「36協定」を結ぶ必要があります。
36協定を結ぶことにより、残業時間は月45時間、年360時間までが残業時間の許容範囲になります。

→36協定については、こちらで詳しく説明をしています。

 但し、建設業は工事の受注量が変動しやすかったり、作業が天候に左右されやすかったり等の特性から、業務量が集中してしまう時期があります。そのような理由により、建設業は36協定による残業規制から適用の除外をされているのです。

 しかし、これがかえって建設業の超過勤務を招いているという指摘の声は以前から多く挙がっています。

「残業時間の上限規制」と「適用の猶予」

 そんな中、2017年3月28日に政府が “働き方改革”の実行計画をまとめまたものを発表しました。

・働き方改革とは
 2015年、政府は女性や高齢者等、誰もが活躍出来ることを目指す「一億総活躍社会」を掲げました。その実現に向け、最大のチャレンジと位置づけられているのが“働き方改革”です。
“働き方改革”については、こちらで詳しく説明をしています。

 この働き方改革の実行計画のよると、月100時間未満、年720時間の残業時間の上限規制が、2019年4月1日に施行される見通しです。 これには36協定のような適用除外の職種はありません。

とはいえ、建設業界は、2020年の東京オリンピックに向け関連建設の整備や再開発プロジェクトが活性化しており工期の遅延が許されない状況下で労働時間の短縮は困難とされています。
もし、残業時間を制限した場合、工期の長期化やコストアップが避けられません。

それを危惧した日本建設業連合会は、政府に五輪が終わるまでは規制の適用を猶予するように要請をし、承認されました。
長時間労働が問題視されている風潮がある中、建設業界においては労働環境の改善はまだまだ先のようです。

残業代が支払われていないことが常態化している

 現在、建設業界は東日本大震災からの復興に加え、前項でも触れましたが東京オリンピックに伴う建設需要の増大により、作業員の負担増加と労働時間の長時間化が顕著になっています。下請け・孫請け業者に雇用されている現場作業員はもちろん、現場を監督する元請け業者の正社員に至るまで、長時間労働に従事しています。

 また、建設工事の多重請負構造も問題になっています。この構造は下流にいけばいくほど仲介が増え請負代金は圧縮されていきます。よって、人件費は削られ残業代がきちんと支払われない事態が常態化しているのです。

残業代請求の検討

 しかし、残業代を支給してもらうことは労働者にとって当然の権利です。建設業界で働いている方の中で、強制的にサービス残業をさせられている方等は残業代の請求を検討してみた方がよいでしょう。

では、どういった場合が残業時間に当たるのでしょうか。これについては、労働時間の基準を知ることで判断することが可能です。

労働時間の基準とは

建設現場
労働基準法32条では「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間と定める、といった内容が記述されています。
要するに、「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている」かどうかが労働時間の判断基準とされているのです。

これを建設業界に当てはめると、「➀会社が行うように」「②会社から命令された場合や会社でせざるを得ない場合」の2つの条件が揃った場合に、労働時間と見なす、ということを示しています。
ちなみに、➀については必ずしも建設現場等である必要はなく、会社から場所の指定をされていれば条件を満たします。

→さらに労働時間の定義について知りたい方は、こちらで詳しく説明をしています。

建設業と残業

 前述の①②を基に、建設業の場合はどういった場合に残業に当たる可能性があるのかを見ていきましょう。

定時内で終わることの出来ない業務量による残業

 定時内で終わることが出来ない業務量による残業は、②の「残業せざるを得ない場合」に該当する可能性が考えられます。人手不足による業務量の過多による定時を超えた時間外労働も②に当たると言えるかもしれません。

社用車で現場に向かう場合

 作業員全員が事務所等に集合し社用車で現場に向かう場合、作業時間のみを労働時間と捉えているケースが多いでしょう。しかし、事務所等に集合している時点から②の「会社から命令された場合」に当たる可能性は否定出来ません。

「名ばかり管理職」による現場監督者のサービス残業
 以上でご説明させていただいた内容に関し「自分は現場監督者で職務手当を貰っているからこの話は当てはまらない」と感じた方もいるのではないでしょうか。
 現場監督者は、別のサービス残業が該当することが考えられます。それは「名ばかり管理職」というものです。

「名ばかり管理職」とは、管理職に就いているにも関わらず与えられた業務がそれに値しない労働者のことを指します。この「名ばかり管理職」の特徴として、少ない職務手当がついたうえで、それに見合わないほど多くの残業をさせられているという点です。要するに、残業代が職務手当に含まれている恰好なのです。

これは、労働基準法41条で定められている「管理監督者については労働時間・休憩・休日の規定の適用が除外される」に基づいているものです。しかし、ここでポイントとなるのが、「現場監督者」=「労働基準法上の管理監督者」とは限らないということです。

労働基準法上の管理監督者とは

では、労働基準法上の管理監督者とはいったいどのような労働者が該当するのでしょうか。過去の判例のおいては、以下の4つの観点から「管理監督者」に該当するかどうかの判断がなされています。


(1)一定部門等を統括する立場である
(2)会社経営に関与している
(3)労働時間や仕事を自身でコントロール出来る
(4)給与面で優遇されていること

→「管理監督者」については、こちらで詳しく説明をしています。

「名ばかり管理職」の可能性がある現場監督者

 以上を分かりやすく現場監督者に当てはめると、以下のような方は「名ばかり管理職」に該当する可能性があります。


・社員の採用に権限がない
・会社の経営方針に一切関与していない
・労働時間の裁量がない

 このような現場監督者は少なくないのではないでしょうか

残業代請求に向けての証拠の準備

 ここまでお伝えしたことに心当たりがある方は、サービス残業をさせられている可能性があります。過労で心身に不調をきたす等、大事に至らないうちに未払い残業代の請求を検討した方がよいでしょう。

 未払い残業代を請求するためには残業をした証拠が必要です。これは立証責任(確実な証拠で証明する責任)が請求者にあるためです
 建設作業員は、タイムカードや出勤簿等で労働時間が管理されていないケースが少なくないため、代わりに以下のものが残業をした証拠になるでしょう。

◆始業・終業時刻、作業の場所や内容をメモしたもの
◆作業日報
◆会社が施主や元請業者に提出した作業報告書
◆社用車のETC利用記録

 まずは、以上の証拠になるものを入手したうえで、こちらの記事「会社と荒波を立てずに残業代を請求する方法」を読んでみてください。残業代請求に向けてするべきことが理解出来るでしょう。

現場監督者の場合

 現場監督者の場合も労働時間の管理がされていないケースがあります。
 建設現場を監督する前後に、現場監督者は会社で施工計画書や設計図書等の書類を作成する業務に従事しています。
 そのため、以下のものが残業証拠になり得ます。

◆書類作成等のために使用したパソコンのログ(パソコンのログ取得方法についてはこちらで詳しく説明をしています。)
◆会社のセキュリティ記録
◆社用車のETC利用記録

終わりに

 「残業代の請求は、会社との関係をぎくしゃくしてしまうかもしれないから請求しづらい」と思う方も少なくないでしょう。ですが、冒頭で触れた通り、働いた分の賃金をもらうことは労働者にとって当然の権利です。
冒頭でも少し触れましたが、新国立競技場の建設現場監督が、長時間労働をしたことが原因で自殺したケースもあります 。そのような悲惨な事件を起こさないためにも、未払い残業代を請求することは、労働者にとって大事な仕事の1つとも言えるのではないでしょうか。

この記事の著者

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編集部

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