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36協定とは?わかりやすく解説

更新日:2019年07月30日
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みなさんは「36(サブロク)協定」をご存知でしょうか?
2012年に、某居酒屋チェーン店の女性社員が長時間労働を理由に過労死と認定された事件があります。この事件で問題になったのが、36協定の不正な手続でした。不正手続をしていたため、そのチェーン店側は思いのままに労働者を長時間労働させることが可能でした。

このことについて、専門家は「適正な手続きがされていないと、過労死を助長しかねない。」と警鐘を鳴らしています。このような36協定の不正な手続は近年、問題となっています。
悪いのはもちろん会社側ですが、労働者側に36協定についての知識があれば、このような問題を未然に防げるかもしれません。

そこで、今回は36協定をわかりやすく説明していきます。

 

36協定とは

 労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えた労働を労働者にさせてはならない、と定められています。また、法定休日(週1回の休日)を設けずに労働させることも認められていません。
 それらは、労働時間の上限を定めて労働者が健康障害等の弊害が起こらないよう保護するために規定されたものです。
 しかし、それらの規定を超えた労働が例外的に認められる条件があります

 そう、36協定の締結です。
36協定とは、「労働者に法定労働時間を超え、法定休日を設けずに働かせる場合、あらかじめ労働組合または、労働者の代表と協定を結ばなくてはならない」という協定のことをいいます。
労働基準法第36条に規定されていることから「36協定」と呼ばれています。正式名称は「時間外・休日労働に関する協定」です。

36協定を締結する条件

 但し、法定労働時間を超える労働は、労働者に健康障害を生じさせる可能性があるだけに、36協定には厳しい締結条件が設けられています。

【条件①】対象者は全ての労働者

 36協定の締結は雇用形態に関わらず、正社員と契約社員、アルバイト、バート等、全ての労働者が対象です。

【条件②】締結する者

 36協定は従業員一人一人と締結しても効力は生じません。会社は「⑴過半数を組織する労働組合」あるいは「⑵過半数を代表する者」と締結しなければなりません。
⑴⑵を詳しく説明していきます。

⑴過半数を組織する労働組合

 「過半数を組織する労働組合」の説明に入るまえに、労働組合について補足させていただきます。

 労働組合とは、労働条件の改善や維持を目的として労働者が主体となって結成する団体のことをいいます。法律では、労働組合を結成することで会社と労働条件について話し合いが出来る等の保障がされています。
 雇用主より立場の弱い労働者が雇う側と対等な立場で交渉する機会を設けられるのが労働組合なのです。

 「過半数を組織する労働組合」を換言すると、「会社の全ての労働者(アルバイト・パート)のうち半数以上が加入している労働組合」となります。
つまり、社内の全労働者のうち半数以上が労働組合員である場合に限り、会社は労働組合と36協定を締結することが可能です。

そうでない場合は、「⑵過半数を代表する者」と36協定を締結する必要があります。

⑵過半数を代表する者

 「過半数を代表する者」とは、 36協定を締結する代表者を選出することを目的に実施された投票・挙手等によって、半数以上の指示を集めた者のことを指します。
 ですので、会社の経営陣によって選出された人や管理監督者は、「労働者の過半数を代表する者」とは言えない可能性があります。

ちなみに、冒頭の女性社員が過労死した某居酒屋チェーン店に関しては、店長がアルバイトの中から代表を指名し、協定書に署名させていました。そのため、不正に36協定を締結されていました。

【条件③】有効期限

 36協定には有効期限の定めが必要です。定期的に見直しを行うという観点から、有効期間は1年間が望ましいと考えられています。

【条件④】労働基準監督署に届出する

 36協定は労使間で締結するものですが、それだけでは効力が生じません。本社の所在地を管轄する労働基準監督署に一括届出をしてはじめて36協定の効力が発生するのです。

【条件⑤】36協定より就業規則が優先される

 労働に関する法令や規則等には、優先順位が設けられています。その優先順位は

労働法令(労働基準法等)>判例>労働協約(労働組合法等)>就業規則>労働契約(雇用契約書・36協定等)

です。
例えば、就業規則に「時間外労働をさせる」と明記されていないが、36協定を締結しているとします。その場合、就業規則上では時間外労働をさせる規定がない事実が優先されるため、36協定を締結しても労働者に法定労働時間を超えて労働させることが認められない可能性があります。
また、就業規則と36協定でそれぞれ異なる休日日数が定められている場合は、就業規則で定めた休日日数が優先される可能性が考えられます。

【条件⑥】労働者への周知

 36協定が結ばれている旨を、就業規則や雇用契約書等に盛り込み周知しなければなりません。
 就業規則がない場合でも、壁に掲示する等して周知する必要があります。

【条件⑦】派遣労働者は派遣元事業所で36協定を締結する

 派遣労働者は派遣先で36協定締結しても効力を発揮しません。派遣労働者は派遣元の事業所と36協定を締結することで効力が生じます。

 以上条件①~⑦の条件をクリアすると36協定は、効力が発揮されます。

36協定と上限時間

 36協定を締結すれば、法定労働時間等を超えて労働させることが可能になるとはいえ、上限時間が設けられています。
残業の上限時間は期間ごとで以下のように決められています。

期間 残業の限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1ヶ月 45時間
2ヶ月 81時間
3ヶ月 120時間
1年間 360時間

1年単位の変形労働時間制の場合の限度時間

変形労働時間制を取り入れている1年単位の労働時間の場合、限度時間が少し変わります。

期間 残業の限度時間
1週間 14時間
2週間 25時間
4週間 40時間
1ヶ月 42時間
2ヶ月 75時間
3ヶ月 110時間
1年間 320時間

36協定の上限時間が適用されないケース

 さて、職種によっては36協定の残業の上限時間が適用されないケースがあります。それは次のような職種が挙げられます。

■工作物の建物等を行う事業
■自動車の運転業務
■新技術・新商品の研究開発業務
■造船事業の船舶改造・修繕業務、郵政事業の年末年始業務等、厚生労働省労働基準局が指定する業務

36協定に関連する違法な残業

36協定に関連する違法な残業はいくつか考えられます。例えば、「残業はないが週6出勤」が挙げられます。
残業がなくても週6日出勤している場合は、法定労働時間の「1週40時間」を超えているため36協定を締結しなければなりません。

 週6日出勤しているにも関わらず、36協定を締結していない場合は違法に残業をさせられている可能性があります。完全週休2日制でない会社は特に注意が必要です。

特別条項付き36協定とは

 特別な事情がある場合は36協定で設けられている残業の上限時間を超えて労働をさせることが出来ます。
それが、「特別条項付き36協定」です。

特別条項付き36協定は、36協定で決めた時間外勤務の限度時間を超過することが、本来は労働基準法違反なのですが、「特別な事情」で限度時間を超えそうな時は、「臨時的なもの」に限って再度協定を結んで労働基準法監督署に届け出れば、限度時間を超える残業が出来るというものです。

もう少し掘り下げて、特別条項付き36協定が認められる条件を説明していきます。

特別条項付き36協定が認められる条件

特別条項付き36協定が認められるものとして以下のものがあります。

(1)「臨時的なもの」であることが条件で、一時的または突発的に時間外労働を行わせる必要のあるもの
(2)特別条項付き協定の回数は、1年のうち半分を超えないことが条件

「臨時的なもの」として認められるもの
①予算、決算業務
②ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
③納期のひっ迫
④大規模なクレームへの対応
⑤機械のトラブルへの対応

特別条項付き36協定が認められないケース

この協定は「特別な事情」について出来る限り詳しい協定を定めて労働基準監督署に届け出なければいけません。具体的な理由を挙げずに、「業務の都合上必要な時」「業務上やむを得えない時」といった抽象的な理由では、毎日のような長時間労働を招くおそれがあると見なされて認められません。

36協定と働き方改革

 特別条項付き36協定を締結さえすれば事実上、無制限に残業をさせることが可能です。これこそが長時間残業の温床になっていたのです。
 その状況を打破するために定められたのが「時間外労働の上限規制」です。2019年4月、働き方改革関連法の一環として制定されました。

時間外労働の上限規制

 「時間外労働の上限規制」は、残業時間の上限が以下のように定められています。

■1年間…720時間
■複数月平均80時間
■1年のうち、6ヶ月のみ月100時間未満

 しかし、これは大企業にのみの適用です。中小企業の関しては2020年4月からの適用になります。

【中小企業の範囲】

業種 資本金の額または出資の総額 または 常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 または 100人以下
卸売業 1億円以下 または 100人以下
その他 3億円以下 または 300人以下

まとめ

本来、労働者の労働時間の長さは36協定で守られています。
もしも、あなたが、毎月45時間を超えるような長時間労働をしていたり、労働時間と残業代が明らかに釣り合っていなかったりするようであれば、違法に残業をさせられている可能性が考えられます。

その場合は、労働問題を得意とする弁護士に相談しましょう。弁護士でしたら、相談に乗ってくれたうえで、あらゆるケースの中から、相談者にあった的確なアドバイスをしてくれます。

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残業代請求弁護士ガイド 編集部

残業代請求に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 ぜひ残業代請求の参考にしてみてください。 悩んでいる方は一度弁護士に直接相談することをおすすめします。 今後も残業代請求に関する情報を発信して参ります。

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