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労働時間の定義を知って違法残業を見抜こう

2018年04月17日 公開
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「実働時間に対して残業代が少なくて怪しい」

 このような“疑惑も念"を抱いたことがある方もいるのではないでしょうか。ですが、ここで一歩立ち止まって考えてほしいことがあります。それは「そもそも労働時間って何?」ということです。この質問をされて、明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。
それもそのはず、実は労働時間は法律で明文化されていないからです。

 そこで今回は、労働時間の定義にフォーカスした話をしていきたいと思います。

そもそも労働時間とは?

 労働基準法32条では「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間と規定する、といった内容の記述がされています。
 しかしこの情報だけでは、どのような状態が労働時間に該当するのかを理解するのが難しいです。そのため、労働時間の定義は判例等から解釈をする必要があります。

「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」とは

 では、「労働者が使用者(会社)の指揮命令下 に置かれている時間」を以下の判例を基に解説させていただきます。

三菱重工長崎造船所事件(平成12年3月9日)最一小判

労働時間とは労働者が指揮命令下に置かれている時間をいい、客観的に判断する。
そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段のない限り使用者の指揮命令下に置かれたものと評価出来る。

 この判例は、作業に入る前の「着替え・散水の時間が労働時間に当たるかどうか」が争われた問題でした。
 この判例を分かりやすく噛み砕くと以下のようになります。

作業に入る前の着替え・散水を社内で行うように、会社から命令された場合や社内でせざるを得ない場合は、特別な事情がない限り会社の指揮命令下に置かれたものとして扱う。
この行為が所定労働時間外で行うものとされている場合であっても同じである。

結果、この判例では、着替え・散水の時間が労働時間として認められました。                                     
 労働時間かどうかは、やはり「指揮命令下に置かれている」かどうかが大きなポイントになってきます。
 それでは、「指揮命令下に置かれている」とはどのような状態なのでしょうか。

 この判例では、「➀会社が行うように」「②会社から命令された場合や社内でせざるを得ない場合」の2つの条件が揃った場合に「指揮命令下の置かれている」としています。ちなみに、➀については必ずしも社内である必要はなく、会社から場所の指定をされていれば条件を満たします。

今回は仕事内容に「作業に入る前の着替え・散水」を例に挙げていますが、もちろん仕事の内容は問いません。

労働時間に該当するケース

 それでは、他にどのようなケース等が労働時間に該当するのかを上述の判例の解説に照らし合わせながら見ていきましょう。

定時内で終わることのない業務量による残業

 定時内で終わることが出来ない業務量による残業は、会社から指示されていなかったとしても、②の「(残業)せざるを得ない場合」に該当する可能性が考えられます。人手不足が原因による残業も②に当たる、と言えるかもしれません。

勤務時間外の参加せざるを得ない研修

 勤務時間外に行われる研修等は、会社から参加するように言われている場合は、②の「会社から命令された場合」に該当すると考えられます。
 また、研修に参加しないと労働者に不利益が被る場合は、②の「(参加)せざるを得ない場合」に該当する可能性は否定出来ません。

会社から指定された制服等に着替える時間

 会社から指定の制服や作業服等の着用が義務付けられている場合は、②の「会社から命令された場合」に当たる可能性があります。そのため、労働時間と見なされる可能性は十分に考えられます。

労働時間に該当しないケース

 対して、以下のケース等は労働時間に該当しない可能性があります。

希望制の研修

 希望制、かつ労働者に不利益が被らない研修等は、労働時間として数えられない可能性があります。あくまでも労働者の自由意思での参加と見なされ、会社の指揮命令は介在しないと考えられるためです。

任意の着替え時間

 会社から指定されておらず、労働者が任意で作業服に着替える場合は、「会社の指揮命令下」には該当しないと考えられます。よって、労働時間と見なされない可能性があります。

通勤・退勤時間

 通勤時間は「会社の指揮命令下」とは言えないでしょう。というのも、会社に到着するまでと会社から出てからの時間は労働者の自由時間と見なされるためです。ですので、労働時間には該当しないでしょう。

どこからが労働時間なのかが難解なケース

 労働時間に該当するか否かの他に、どこからが労働時間に当たるのかが、やや難解なケースもあります。ここからは、そんなケースを2つ挙げさせていただきます。

自宅から現場直行の場合

 自宅から現場に直行する場合は、現場に到着してからが労働時間になります。理由は、その現場が会社から指揮命令された場所であると考えられるためです。

集合場所が社外の場合

 では、現場直行の中でも、一旦社外のある場所に集まってから現場に向かう、となるとどこからが労働時間になるのでしょうか。
 この場合、社外のある場所に集まった時点からが労働時間ではなく、業務に従事する現場に到着してからが労働時間として見なされます。

休憩時間の考え方

 さて、労働時間と同じく分かりづらい定義があります。それは、休憩時間です。本記事では、休憩時間の定義にも触れさせていただきます。

休憩時間の定義

「休憩時間なのにお客様が来たら対応をしなければならない」等、休憩とは異なる方もいるのではないでしょうか。
実は、休憩時間の定義も法律では明文化されておらず、休憩時間が労働時間に当たると判断された過去の事例から判断しなければなりません。

休憩時間が労働時間と見なされた事例

 過去に、ビル管理人の仮眠時間が、休憩時間ではなく労働時間と見なされた事例がありました。労働時間と見なされたのは、ビル管理人は休憩中、警報や電話等に対して直ちに対応することが義務付けられ、「労働からの解放が保障されていない」ことが理由に挙げられました。

休憩時間が労働時間と見なされるケース

 この事例から、休憩時間かどうかは、やはり「労働からの解放が保障されている」かどうかが大きな判断基準になってきます。
 よって、下記のようなケースは、「労働からの解放が保障されている」とは言い難く、労働時間と見なされる可能性は否定出来ません。

お昼休み中の来客当番や電話番

 お昼休み中に、来客対応や電話番をしなければならない場合は、「労働からの解放が保障されている」とは言えないかもしれません。よって、労働時間と見なされる可能性が考えられます。

荷待ち時間

 長距離のトラック運転手等には、荷待ち時間が休憩時間の扱いになることがあります。しかし、会社から指示があれば直ちに動ける状態である荷待ち時間は労働時間に該当すると言えるでしょう。

→トラック運転手の荷待ち時間については、こちらの記事で詳しく説明をしています。

最後に

「労働者の自由意思に任せて残って仕事をするのは労働時間ではない。」

 このように会社の上司等に言われると、「確かに」と思ってしまいそうですが、労働時間には定義があります。「実働時間に対して残業代が少ない」と感じるようであれば違法に残業をさせられている可能性があります。

違法残業をさせられているようであれば未払い分の残業代を請求出来る権利が労働者にはあります。そのような方かこちらの記事「会社と荒波を立てずに残業代を請求する方法」を併せて読んでみてください。

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編集部

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