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看護師の「残業の実態」と「残業代が発生するケース」

2018年03月02日 公開
看護師の「残業の実態」と「残業代が発生するケース」のアイキャッチ

看護師の方の中には、このような経験がある方はいませんか?

「残業をしても残業代が1円もつかない。」
「残業代が出ないのに定時が過ぎても仕事を続けるのが当たり前。」
「始業2時間前に出勤して情報収集するのが普通。当然残業代は出ない。」

 以上のように、看護師にとってはサービス残業が常態化していることがあります。そこで今回は看護師の残業についてお伝えさせていただきます。

看護師は残業が多い

 看護師のサービス残業は、以前から問題視されています。
 2014年に日本医療労働組合連合会が行った労働実態調査によると、以下に挙げる残業の実態が見えたのです。

・看護師の9割が残業している
・始業時間前に働く“前残業”が多い
・若年層の時間外労働が比較的多い傾向にある
残業代の未払いが3分の2に上る
・休憩の実態について、日勤は2割、夜勤になると2~4割の人が休憩をあまり取れていない。

 このように、看護師は多くの残業をしているのです。

看護師の残業平均時間

 2010年に看護協会が会員10,000人にアンケートを行い、有効回答を得た2,200人のデータによると、月に10~40時間の残業を行っている看護師は20代で58.6%、30代で57%という結果が出ました。
また、過労死ラインを超える月60時間以上の残業をする看護師も2.7%いたのです。

残業の原因となっている勤務形態

 では、なぜ看護師は残業が多いのでしょうか。それには勤務形態が原因の1つとなっているのです。
 看護師の勤務形態は職場によって異なりますが、入院施設がある病院で働く看護師の場合は夜勤があるため、多くが2交代制か3交代制を採用しています。

●2交代制…朝~夕方までの日勤と、夕方~翌朝までの夜勤
●3交代制…朝~夕方までの日勤、夕方~夜中までの準夜勤、夜中~朝までの深夜勤

 一見すると2交代制の方が長い勤務時間のように感じます。しかし、3交代制の方が複雑な勤務形態になりがちなのです。準夜勤を終えた翌日に日勤、といったような厳しいシフトが組まれることもあります。

残業の多い職場

 また、職場によっても残業の多さは異なるのです。
 残業が多い職場の特徴としては、緊急入院や患者の急変等、突発的な対応を求められる場所が挙げられます。
 残業が多い職場を、「病院」「科目」「部署」「役職・立場」ごとに分けて見ていくと以下になります。

残業が多い➀病院

●大学病院
 大学病院は地域の中枢という位置づけであることから、重症患者が搬送されることが多いのです。突発的な対応が求められることから残業が多い傾向にあります。

●総合病院
 大学病院に比べると重症患者の搬送は少ないものの、急病患者が運ばれることが多いため、残業は発生しやすくなっています。

●循環器専門病院
 循環器専門病院は、患者の様態 の急変が多い傾向にあります。そのため、時間外の労働が多くなってしまうのです。

残業が多い②科目

●循環器科
 心臓や血液等、人体の中で最も大切な分野を担う循環器科は、急変が起こりやすいため、残業が多くなりがちです。

●整形外科
 整形外科は手術の件数が比較的多いことから、定時を超えての時間外労働が発生することが多いです。

●産婦人科
 産婦人科では自然分娩を行う等、予定通り出産されないケースがあるため、残業が発生しやすくなります。

残業が多い③部署

●一般病棟
 病棟では救急車の搬入台数が多かったり入退院の回転が早かったり等、業務がかさみ残業が多くなる傾向にあります。

●手術室
 手術室では難しいオペの場合、10時間以上に及ぶため残業が発生しやすくなります。

●外来部門
 1日500人以上の外来(入院せずに通って来て診療を受ける患者)がくる、外来部門は業務量が予測しづらいため、残業することが多くなります。

残業が多い④役職・立場

●管理職
 看護部長や主任等の管理職の方は残業が多い傾向にあります。役職手当を支払う代わりに、それに見合わないほどの残業を強いられているというケースが少なくありません。

→管理職の残業についてはこちらで詳しく説明をしています。

●新人の看護師
 新人の看護師は、仕事に慣れていないため作業に時間がかかってしまいがちです。そのため、残業が発生しがちです。
 また、新人看護師の残業が多い病院の特徴として、病院のマニュアルが整っていないことや、教えてくれる先輩看護師がいない等が挙げられます。

残業が少ない職場

 一方で、残業が少ない職場もあります。急変や急患が少ないことや時間外の研修・勉強会がない職場は比較的、残業が少ないです。
 「病院」「科目」「部署」分けて見ていくと以下が挙げられます。

残業が少ない➀病院

●回復期リハビリテーション病棟
 回復期リハビリテーション病棟は、復帰に向けてのリハビリを中心に行う病院であるため、急変はほぼなく仕事量が安定しています。そのため、比較的定時で帰ることが出来るのです。

●療養型病院
 療養型病院では多くの患者が寝たきりであるため、容態 が急変することは少ないです。そのため、残業は多くありません。

残業が少ない➀科目

●透析科
 透析は決められた時間内で行うため、残業は比較的少ないのです。

●精神科
 精神科は、元から医療行為が少ないです。そのため、患者の症状が落ち着いている病棟であれば残業はほとんどありません。

残業が少ない➀部署

●ICU
ICUは部署の性質上、勤務時間中に決められた仕事を全て終わらせます。「残業が少ない」というより、「残業が出来ない」と言った方が適切でしょう。

●予定入院のみの病棟
 予定入院のみを受け入れる病棟では、1日の業務量を把握した上で仕事をすることが出来ます。また、急な仕事が入ることも少ないため必然的に残業は少なくなるのです。

●デイサービス
 患者が定時に来院するデイサービスも業務時間を比較的予測しやすいため、残業が少ない傾向にあります。

残業が多い理由

 残業が多い職場でも少し触れましたが、残業が多くなる理由を細かく見ていくと以下の5つが挙げられます。

理由➀記録業務

 近年、電子カルテが導入されたことにより、記録業務が効率化され看護師の仕事の負担が軽減されています。とはいえ、記録業務はミスが許されないため、確認をしなければなりません。
そのため、記録にかける時間が多くなり、時間内に終わらず残業を余儀なくされるというケースが往々にしてあるのです。

理由②突然の入院と急変対応

 前出のとおり、患者の突然の入院や急変の対応も残業の理由に挙げられます。
 突然の入院であれば、患者やその家族に入院・病歴をヒアリングしなければならないため急に人手を割かれます。また、それにより他業務の人手不足に影響し、職場全体の残業の原因につながる可能性が考えられるのです。
 急変対応も同様の原因で残業になる理由になります。

理由③人員不足

 慢性的に人手不足の職場では、1人あたりの業務量が増えてしまい、勤務時間内に仕事を終わらすことが出来ず残業が発生しがちです。また、休憩もなかなか取れず、過酷な労働環境になります。

理由④終了間際の受診

 患者が診療時間の終了間際に来院してきて、診察が長引き残業になるというケースも往々にしてあります。特にクリニック等で多いパターンです。

理由⑤勉強会と委員会

 定時後の行われる勉強会や委員会等も残業の理由に挙げられます。近年では、勤務時間内に実施する病院が増えているものの、大規模な急性期病棟等の場合は、日々の業務で手一杯になってしまいます。そのため勤務時間外に実施されがちなのです。

労働時間の定義

看護師
 以上のように様々な理由から看護師の残業は発生しています。
 しかし、「残業したことを申請しにくい雰囲気がある」「サービス残業が当たり前になっている」という雰囲気に流され、賃金が発生しないと知りながら泣く泣く残業をしているという方も多いのではないでしょうか。

とはいえ、働いた時間分の賃金をもらうというのは労働者にとっては当然の権利です。残業が労働時間と認められれば残業代は発生する可能性はあります。

 ではどういった場合が労働時間に当たるのでしょうか。

 以上のように様々な理由から看護師の残業は発生しています。
 しかし、「残業したことを申請しにくい雰囲気がある」「サービス残業が当たり前になっている」という雰囲気に流され、賃金が発生しないと知りながら泣く泣く残業をしているという方も多いのではないでしょうか。

とはいえ、働いた時間分の賃金をもらうというのは労働者にとっては当然の権利です。残業が労働時間と認められれば残業代は発生する可能性はあります。

 ではどういった場合が労働時間に当たるのでしょうか。労働基準法32条では「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間と規定する内容の記述がされています。

これを看護師に当てはめると、「➀病院が行うように」「②病院から命令された場合や病院でせざるを得ない場合」の2つの条件が揃った場合に、労働時間と見なす、ということを示しています。
ちなみに、➀については必ずしも病院内である必要はなく、病院側から場所の指定をされていれば条件を満たします。

→さらに労働時間の定義について知りたい方は、こちらで詳しく説明をしています。

看護師と残業

 前述の①②を基に、看護師はどういった場合に、残業に該当する可能性があるのかを見ていきましょう。

■勉強会や委員会
 勤務時間外に行われる勉強会や委員会は病院側から参加するように言われていたり、参加せざるを得ない状況だったりするようあれば、「指揮命令下に置かれている」とも言えます。そのため、残業時間に該当する可能性が考えられます。

 但し、自主的に勉強会等に参加する場合は、残業にはならないかもしれません。

■記録業務
 定時までに手をつけられず時間外に記録業務をせざるを得ないという場合は、労働時間に該当することが考えられます。これは「➀会社が行うように」と②の「社内でせざるを得ない場合」に該当することが考えられるためです。

■勤務前の早出
始業前より早めに出勤をして働く“前残業”は、明示的に「早出をしなさい」と言われている場合には労働時間に該当する可能性があります。

 上記の3つを例に挙げましたが、残業をするように命令がなくても、働かざるを得ない状況下であれば残業代は発生する可能性があるということが言えます。

残業手当

 時間外労働が労働時間に該当する場合、残業手当はどのような賃金で発生するのでしょうか。これについては以下のように定められています。

残業の種類

賃金割増率

備考

時間外労働

25%

 

時間外労働(1ヶ月60時間を越えた場合)

50%

代替休暇取得の場合は25%

深夜労働

25%

22時から翌5時までの間を労働した場合

休日労働(法定休日に郎等した場合)

35%

休日労働では、8時間を越えても時間外労働の25%割増は加算されない

法定時間外労働+深夜労働

50%

 

法定時間外労働(1ヶ月60時間を越えた場合)+深夜労働

75%

 

休日労働+深夜労働

60%

 

 残業手当の具体的な計算方法についてはこちらで詳しく説明をしているので、併せてご覧下さい。

残業の時間数等によって割増率は異なります、そのため、未払いの残業代が発生していると感じている方や、過労死ラインを超えるような過重労働をしている方等は多くの未払い残業代が発生しているかもしれません。

残業代請求をする手順

 未払いの残業代があるようであれば、こちらの記事「会社と荒波を立てずに残業代を請求する方法」を読んでみてください。残業代請求に向けてするべきことがお分かりいただけるでしょう。

看護師の残業問題対策

 また、残業の多い職場で働く看護師は以下のような対策を行った方がよいかもしれません。

対策➀業務改善の提案

 業務改善の提案をするという方法があります。勇気がいることかもしれませんが、「残業が出ないのは当たり前」という風習はよいとは言えないでしょう。師長やリーダーに相談し声をあげてみるのも今後の職場全体の改善につながるかもしれません。

対策②労働基準監督署に相談

 労働基準監督署(労基署)とは、労働条件の保障や改善、労災保険の給付等を行う組織です。相談したときに力になってくれる厚生労働省の機関です。
 労基署に相談することにより職場に指導、是正勧告が行われる場合もあります。

→労基署についてはこちらで詳しく説明をしています。

まとめ

 サービス残業をしている看護師は少なくありません。その状況に流され「残業代が出ないことは看護師にとっては当たり前なこと」と諦めている方もいるでしょう。
 しかし、無理をして長時間働くことは、看護師としての業務効率の低下や重大なミスにつながりかねません。

 そのため、未払いの残業代を請求してみるのも一手と言えます。そして、請求することにより残業が“当たり前化”している悪しき風習のある医療業界にテコ入れするきっかけになるかもしれません。

この記事の著者

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編集部

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