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ワタミの新卒求人が、背筋が凍るほどヤバかった!?合法なのか、徹底考察!

更新日:2024年02月10日
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ワタミの新卒求人が、背筋が凍るほどヤバかった…

大手居酒屋チェーン「ワタミ」が以前大きく取り上げられた事件を覚えていらっしゃいますか?それは、2008年6月の従業員による過労自殺です。
この事件は、2008年4月に入社したての社員が6月に過労により自殺したとして、遺族が「ワタミ」を提訴しました。後に和解成立で収束したこの事件は、「ワタミ=ブラック企業」という印象を世間に鮮烈に残しました。

しかし、現在、ワタミは新たな問題で取り上げられ話題となっています。それが「現在募集中の新卒求人の条件がヤバすぎる」です。

新卒求人の記載内容がヤバすぎる

 ワタミグループの公式ホームページに記載されているリンク先の「リクナビ」を見ると、以下のような条件の求人が出ているのです。


・初任給
基本給202,100円(月間127時間分の深夜みなし手当30,000円、営業手当10,000円含む)
※127時間を超えた時間外労働については追加支給

この中で「ヤバすぎる」と話題になっている部分は

「月間127時間分の深夜みなし手当30,000円」

です。
この文章を見る限り、127時間もの深夜残業が発生したとしても、たった3万円しか残業代が支払われず、しかもそれが基本給に含まれているのだ、と解釈されてしまいます。

・みなし手当とは
 実際の労働時間に関わらず、あらかじめ一定の時間を労働したとみなす手当のことをいいます。

 この解釈の仕方が合っているのであれば、ワタミの求人は明らかな違法行為になります。
その理由は以下の2点です。

➀最低時給を下回る

例えば、127時間の深夜残業をして3万円しか支払われないのであれば、単純計算をすると時給はたったの236円ということになります。
厚生労働省では、最低賃金制度を設けていますが、全都道府県の最低賃金は、宮城県と沖縄県の時給714円です。そのため、時給236円というのは明らかに違法になります。

②36協定の規定を上回る

 「月間127時間分の深夜みなし手当30,000円」が支給されるということは、月127時間の深夜残業をする可能性があるということを示唆します。しかし、この月127時間の残業は、36協定で定められている月の残業時間を超えているため違法行為です。

→36協定については、こちらの記事で詳しく説明をしています。

 以上のことから、まさかワタミがリクナビにわざわざ違法な求人を出すということは到底考え難いです。つまり、127時間の深夜残業代がたった3万円という解釈は間違っている可能性が高いと言えます。

 では、「月間127時間分の深夜みなし手当30,000円」とはどういった意味なのでしょうか。

「月間127時間分の深夜みなし手当30,000円」の考察

「月間127時間分の深夜みなし手当30,000円」

問題は、"深夜みなし手当"という言葉にあります。確かにこの言い方では時間外労働(残業)が127時間分と受け取られてしまいます。しかし、これは基本給に含まれる時間内労働に対して支払われる「深夜労働の25%割増部分」を指しているのでしょう。

「深夜労働の25%割増部分」とは

文章のみだと分かりづらいかと思いますので、「深夜労働の25%割増部分」をワタミの初任給を元に計算をしていきます。

基本給202,100円(月間127時間分の深夜みなし手当30,000円、営業手当10,000円含む)

上記は手当を含んだ基本給です。手当を含まない、本来の基本給を割り出していきましょう。

202,100円―30,000円(深夜みなし手当)―10,000円(営業手当)=162,100円

基本給が明らかになったところで、1時間あたりの賃金(時給)を割り出していきます。1ヶ月の出勤日数を20日とした場合、

8時間(1日の労働時間)×20日(1ヶ月の出勤日数)=160時間
162,100円÷160時間=1,013円

これで、1時間あたりの賃金(時給)が1,013円となりました。ここから「深夜労働の25%割増部分」を計算で割り出していきます。
時給1,013円の場合、深夜労働をすると25%割増(1.25倍)になります。つまり以下のようになります。
 
1,013円×1.25倍=1,266円

ここから、以下の計算で「25%割増部分」を出していきます。

1,266円(深夜時給)-1,013円(通常時給)=253円

つまり、253円が「深夜労働の25%割増部分」を指しているのです。

「127時間分の深夜みなし手当30,000円」の妥当性

「深夜労働の25%割増部分」を説明したところで、「127時間分の深夜みなし手当30,000円」の妥当性について説いていきましょう。

仮に、最大の127時間深夜労働をした場合、1時間あたりの深夜みなし手当は、30,000円÷127時間=236円です。
 そのため、先程計算で出した253円というのは、月20日出勤した場合の時給の割り出しであって、月21日では241円、月22日であれば230円です。
 よって「127時間分の深夜みなし手当30,000円」は合法といえるでしょう。

なぜ「127時間分」なのか?

 しかし、ここで気になることがもう1つあります。それは「なぜ中途半端に見える127時間なのか?」という点です。
深夜みなし手当が該当する時間は深夜労働時間の22~翌5時です。
ここで仮に毎日深夜に働くAさんがいるとしましょう。Aさんは、21:00~翌6:00(休憩1時間)のため、1日に深夜労働をする時間は6時間です。Aさんの出勤時間21日だとすると、6時間×21日=126時間になります。

Aさんの例から分かる通り、毎日深夜に働く従業員がいることも考えて127時間と設定したのでしょう。

以上「『月間127時間分の深夜みなし手当30,000円』の考察」「『127時間分の深夜みなし手当30,000円』の妥当性」「なぜ『127時間分』なのか?」と考察したところから、「月間127時間分の深夜みなし手当30,000円」とは、時間外労働(残業)に対する手当ではなく、基本給に含まれる時間内労働に対して支払われる「深夜労働の25%割増部分」を指しているのでしょう。

Twitterではこのような声も上がっています。

 しかし、ここまで考察出来る方はまずいないでしょう。見たら当然に勘違いをします。さらにTwitterではこのような声が上がっています。

 やはり、「127時間分のみなし残業代が30,000円」と勘違いしている方が多いようです。

労働問題に関する困りごとは弁護士への相談も検討しよう

職場選びをするうえで、その会社が違法行為を行っていないか慎重に見極めなければなりません。

すでに会社から不当な扱いを受けている方は、すぐに信頼のおける第三者に助けを求めてください。中でも、もっとも頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、労働上で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

労働トラブルに詳しい弁護士に事前に相談しておくのがおすすめです。

弁護士費用が不安な方は"弁護士保険"の加入がオススメ

弁護士に相談する前に、弁護士費用が不安な方はベンナビ弁護士保険の利用を視野に入れてみましょう。

あらかじめトラブル発生する前に弁護士保険に加入しておくことで、いざという時の高額な弁護士費用を補償してくれます。

弁護士保険なら月々2,250円〜加入できるベンナビ弁護士保険がオススメです。

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