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失敗しない労働基準監督署での相談方法は「証拠を持って窓口相談」のアイキャッチ

失敗しない労働基準監督署での相談方法は「証拠を持って窓口相談」

失敗しない労働基準監督署での相談方法は「証拠を持って窓口相談」のアイキャッチ

長時間労働に苦しみ、会社のストレスで体調を崩し、近年このような問題を抱えながら仕事をしている方は少なくありません。
そんな悩み相談に耳を傾け、解決に動いてくれるのが労働基準監督署です。

 とはいえ、何の相談なら対応してくれて、解決に向けてどのように動いてくれるのか等、把握していない方も多いでしょう。
 本記事では労働基準監督署に相談する方についてお伝えしたいと思います。

労働基準監督署とは

労働基準監督署とは厚生労働省の出先機関であり、労働基準法を著しく守れていない企業を監視・指導をする役割を担っています。厚生労働省の下部組織である都道府県労働局(全国47か所)のさらに下部組織として、全国に300か所以上設置されています。

労働基準監督署に相談するメリット

 労働基準監督署への相談には以下の2つのメリットがあります。

【メリット①】労働基準法に則った具体的なアドバイスをもらえる

 労働基準監督署に相談をすると、「自身の抱えているトラブルは法律上どのような扱いのものなのか」を労働基準法に則って正しい知識を教えてもらえます。
 また、今後どのようにするか等のアドバイスももらえます。

【メリット②】悪質な場合は解決のために動いてくれる

 相談内容が悪質の場合は、解決のために企業を調査したり是正勧告をしたり等、解決に向けて動くケースもあります。
 労働基準監督署には強力な権限を持っている労働基準監督官が在籍しています。労働基準監督官は、「臨検監督」という権限と「司法警察官」としての権力を持っているのです。

 臨検監督とは、裁判所の許可が下りていなくても労働基準法違反の疑いがある会社に、直接立ち入って調査出来る権限を指します。
 また、司法警察官とは労働基準法に違反する会社に対して、警察官と同じように逮捕や強制捜査を行える者のことを呼びます。

労働基準監督署に相談するデメリット

 一方で、次のようなデメリットも挙げられます。

【デメリット①】相談内容によって対処されない

 労働基準監督署と労働局には年間100万件もの相談が寄せられます。それに対し、労働基準監督官は全国で3000人のみです。
人員が不足しているため、危険を及ぼす作業や労働災害等、人命に関わる相談が優先して対処されます。しかし、サービス残業や長時間労働等、比較的人命の関わりから遠い相談は後回しにされた結果、対処されない可能性があるのです。

【デメリット②】事実が確認出来ないと動かない

 また、証拠等がなく「労働基準法違反」の事実が確認出来ない相談に対しては、労働基準監督署は動きません。「情報提供」として扱われる可能性が高いのです。

労働基準監督署に相談出来る内容

 では、労働基準監督署にはどのような内容を相談出来るのでしょうか。
 労働基準法に従って企業を監督する労働基準監督署は、以下の内容を相談出来ます。


□給与や残業代、退職金の未払い
□月の残業時間が80時間を超える等の長時間労働
□安全への配慮が不十分な危険を伴う現場作業
□労働条件が雇用契約と異なる
□突然の会社倒産
□休日が少ない
□有給休暇の取得が出来ない
□不当な解雇・懲戒処分
□不当な減給・一方的な減給

 以上のケースの他にも、「この場合は相談出来るのか」という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
長野労働局のホームページでは、「労働基準監督署へ多く寄せられる相談事例」を紹介しており、それらの相談に対する回答を載せられています。それについてはコチラ
からご覧になれるので、労働環境に悩みのある方は同じ相談内容があるかどうかをチェックしてみてください。

証拠がないと労働基準監督署は動かない

 以上のような内容が相談出来るものの、1つの情報提供として処理され、労働基準監督署が解決に向けて動かないケースもあります。
労働基準監督署は、相談内容が労働基準法違反かどうかを証拠から判断します。そのため、明確な証拠がない相談は断られる可能性が考えられます。

 例えば、残業代の未払いがあったとします。何も準備せず労働基準監督署に「残業代の未払いがあります」と相談をしても「会社に未払い分の残業代を請求してみてください」と一蹴されてしまう可能性があります。

労働基準監督署に動いてもらう相談のコツ

労働基準監督署に動いてもらう相談のコツ

以上のようなケースがあるため、労働基準監督署に動いてもらうためにはコツがいります。
ここからは、対応してもらうような労働基準監督署への相談方法の流れをご説明させていただきます。

【流れ①】証拠集め

 まずは、労働基準法違反である事実が労働基準監督署に分かるように証拠を集めましょう。必要になる証拠は相談内容によって異なります。

■給与や残業代等、賃金の未払い
・雇用契約書
・就業規則
・賃金規定
・給与明細

■残業時間
・タイムカード
・シフト表
・業務日報
パソコンのログ
・メールやFAXの送信履歴

■不当な解雇・懲戒処分
・解雇通知書
・解雇や懲戒処分を明示しているメール

■労働条件に関するトラブル
・雇用契約書
・給与明細

■有給休暇が取得妨害
・社内規定をコピーしたもの
・出勤日数や有給休暇の消化状況等が記録されたもの
・取得妨害をされたことが分かるメールや音声等

■パワハラやセクハラ
・パワハラやセクハラ行為が分かるメール
・ICレコーダーやスマホ等で録音した音声
・スマホ等で撮影した動画
・被害が確認出来る診断書

【流れ②】相談内容の整理

 相談をする内容を整理しておくと労働基準監督署の窓口でスムーズに話を進められます。それにより、適切な解決策を案内されやすくなります。
 具体的に以下を整理しておきましょう。

・どのような内容なのか
・いつから問題が起きているのか
・どのような被害が発生しているのか

【流れ③】労働基準監督署に告発

 流れ①~②の準備が完了したら労働基準監督署に相談をします。この相談する行為を告発といいます。
 告発方法には次の3つがあります。


・電話
・メール
・窓口

電話

 電話で相談をしたい場合は、労働条件相談ほっとライン(TEL:0120-811-610)に電話をしましょう。
 労働条件相談ほっとラインとは、違法な時間外労働や過重労働による健康障害、賃金未払い等、労働に関する問題について、専門知識を持った相談員が電話でアドバイスを行う機関のことをいいます。
 全国どこからでも無料で利用出来ます。

受付時間は月・火・木・金曜日の17~22時、土・日曜日の10~17時です。平日の日中が仕事の方にも対応出来るような時間帯を受付時間にしています。
電話での相談は解決方法等のアドバイスをもらえるのみです。ですので、労働基準監督署に調査や是正勧告を行ってもらうためには、電話したのち、監督署の窓口に出向く必要があります。

メール

 メールの場合は、厚生労働省が設けている労働基準関連情報メール窓口の送信フォームから相談をしましょう。メールですので時間を問わず送信可能です。
 但し、送られてきた相談内容は、労働基準監督署が立ち入り調査をするための参考資料として活用されるに留まります。メールをきっかけに是正勧告等を行う可能性は低いと言えるでしょう。
動いてもらいたい場合は、やはり直接労働基準監督署に出向かなければなりません。

窓口

 労働基準監督署は全国に321署あります。労働基準監督署の窓口で相談をする場合は、会社の所在地を管轄している監督署に行きましょう。以下から探すことが出来ます。

■北海道地方
北海道

■東北地方
青森県 岩手県 宮城県 秋田県 
山形県 福島県

■関東地方
茨城県 栃木県 群馬県 
埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県

■中部地方
新潟県 富山県 石川県 福井県 
山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 
愛知県

■関西地方
三重県 滋賀県 京都府 大阪府
兵庫県 奈良県 和歌山県

■中国地方
鳥取県 岡山県 広島県 山口県

■四国地方
徳島県 香川県 愛媛県 高知県

■九州地方
福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 
大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県

但し、労働基準監督署の窓口の受付時間は平日の8:30~17:15です。平日の日中働いていてビジネスマンは、会社を休む等の都合をつけて、窓口へ向かう必要があります。

告発は匿名で出来る

告発方法①~③は、匿名ですることが可能です。ですが、実名と連絡先を明らかにした告発が優先的に対応されます。匿名で受け付ける体制もありますが、信憑性があり悪質なものでないと対応されない傾向にあります。
告発するのであれば、やはり実名の方がよいでしょう。

告発後どうなる?

 では告発をし、労働基準監督署が対応をする場合どのような動きになるのでしょうか。基本的には以下のような流れで動きます。

(1)法律に則った具体的なアドバイスをされる

(2)調査員が会社に立ち入り調査

(3)違法があった場合は指導や是正勧告

(4)従わず、悪質性が高い場合は逮捕

 (1)については前述しているので、(2)~(4)を1つずつ見ていきましょう。

(2)調査員が会社に立ち入り調査
労働者からの相談や申告に会社の違法行為が疑われる場合、調査員が事実確認のために会社に立ち入り調査を行います。立ち入り調査では賃金台帳等の資料のチェック、経営者や労働者へのヒアリング調査が行われます。

(3)違法があった場合は指導や是正勧告
立ち入り調査により違法があった場合は是正勧告が行われます。

(4)従わず、悪質性が高い場合は逮捕
是正勧告後、「再監督」という再立ち入り調査で、改善が見られない場合、経営者や会社への罰則が与えられることになります。
 とはいえ、実際に罰則を受ける会社はごく一部です。

 平成27年のデータを見ると、『労働基準監督署へ労働者からの申告件数は26,280件です。その内、調査や是正勧告等が行われたのは22,312件、そこから書類送検されたのは996件』(『http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/roudou/20170316/170316roudou02.pdf
』)です。申告件数に対して書類送検されたのは僅か3.6%なのです。

会社で働く労働者以外に相出来る対象者

 労働基準監督署に相談が出来る対象者は、会社で働く労働者だけでなく以下のような方も相談が可能です。

職場問題で悩む事業主

会社を経営する事業主も相談が可能です。退職勧奨や部署の配置転換、労働条件の引き下げ等でお悩みの事業主は相談するとよいでしょう。

業務委託

 会社と業務委託契約を結んでいる場合は、いち個人事業主としての扱いになるため労働基準法に基づいて行動をする労働基準監督署の相談者対象外になります。
 しかし、業務内容が事実上、労働者である場合は相談出来る可能性があります。そのため、労働者に該当することが分かる以下のような証拠を用意しておくとよいでしょう。

・仕事内容や業務時間を指示されたメール
・報酬の支払いの実態が分かる通帳等
・勤務表

当事者の家族

 労働問題を抱えている当事者の家族が相談にいくことも可能です。その際は、当事者の家族であることを証明出来る健康保険証や運転免許証等を持っていきましょう。
 但し、本人でない限り真相が分からないというのが労働基準監督署側の見解です。そのため、郎等基準監督署に動いてもらうためには、やはり本人が出向かないと対応されない可能性が考えられます。

派遣社員

 派遣社員の方で、派遣先の会社で労働問題に苦しんでいる方も相談は可能です。その際も、労働違反であることが分かる証拠を持っていきましょう。

外国人も相談可能

 郎等基準監督署や労働局では、労働環境に悩む外国人向けに「外国人労働者相談コーナー」が設置されています。対応言語は

英語
中国語
ポルトガル語
スペイン語
タガログ語
ベトナム語

です。設置されている労働基準監督署や労働局に関してはコチラから確認出来ます。

 全ての労働基準監督署に「外国人労働者相談コーナー」は設置されていません。ですので、最寄りの労働基準監督署にそのコーナーがない場合は、極力通訳の方と一緒に窓口に向かった方がよいでしょう。

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まとめ

 労働基準監督署は人命に関わりのあるものを優先します。
 そのため、ただ悩みを報告しただけでは動いてもらえません。証拠を集めて窓口で告発することで労働基準監督署に行動してもらう可能性が高くなるでしょう。
労働基準監督署への相談を考えている方にとって本記事でお役に立っていただけたら幸いです。

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編集部 (弁護士)編集部