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「正社員はサービス残業が当たり前」は誤り!歴とした違法である

2018年09月18日 公開
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サービス残業が問題視されるようになって久しいですが、依然として改善がされていない会社が存在します。「正社員はサービス残業が当たり前」という考えが今もなお強く根付いていることは否定出来ません。
 
 そこで今回は、サービス残業が行われるようになった理由とその違法性、そしてサービス残業の対策方法についてお伝えいたします。

残業の実態

 まず、はじめに現在の残業の実態についてお伝えします。

残業をする人の割合

 会社で働いている1,000人を対象に行ったアンケート調査(※1:詳しくは記事末尾を参照)によると、残業をした経験がある人の割合は60~80%いることが分かりました。
 20、30代に限っては80%以上もの人が残業している事実が明るみになったのです。

平均残業時間

 残業をする人は、1ヶ月で平均何時間の残業をするのでしょうか。前出のアンケート調査をまとめると、以下のような結果になりました。

・月20時間以上…30~50%
・月40時間以上…10~20%
・月60時間以上…5~10%
・月100時間以上…4%
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 過労死ラインである月80時間以上の残業をする人が4%を超えていることが明らかになったのです。
また、雇用別で見ると月20時間以上の残業をする労働者の割合は、パートやアルバイト等の非正規社員より正社員の方が10%ほど高いことも判明しました。

 以上の実態を見る限りでは、当然のごとく行われているのが残業であるということが明白になりました。

サービス残業の実態

 お待たせしました。ここからサービス残業の実態についてご説明させていただきます。

サービス残業の経験がある労働者の割合

 サービス残業とは、定時を超えてする労働に対して賃金が支払われない残業のことを指します。ケースによっては違法になります。

 このサービス残業はどの程度行われているのでしょか。
 2014年に日本労働組合総合連合会が3,000人を対象に行った「労働時間に関する調査」(「https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20150116.pdf」)によると、サービス残業をしたことが「ある」と回答した労働者の割合は42.6%、対して「ない」が57.4%という結果が出ました。実に4割以上もの従業員がサービス残業を行っているという実態が浮き彫りになったのです。

この結果を見る限りでは、「正社員はサービス残業はやって当たり前」という悪しき風習が生まれてしまうのも仕方ないと言えるのではないでしょうか。
 ただ、一方で過半数がサービス残業をしていないため、「正社員はサービス残業が当たり前」とは言い難い面もあるでしょう。

平均のサービス残業時間

 では、サービス残業をしたことが「ある」と答えた労働者は1ヶ月に平均何時間のサービス残業を行っているのでしょうか。
 同調査によると、 1ヶ月に16.7時間であることが明らかになりました。非正規雇用社員の平均は9.5時間であるため、いかに正社員が多くのサービス残業をしているのかがうかがい知れます。

サービス残業が発生するようになった理由

 そもそも、サービス残業はなぜ行われるようになったのでしょうか。それには次に挙げる数々の理由が挙げられます。

【理由①】法令順守に対する意識の低さ

 会社の経営者が法律に関する知識が乏しいと、法令順守(法律等の規定に従うこと)に対する意識が低い傾向にあります。そのため、サービス残業が違法の可能性があることに対して意識が低く、労働者に残業代を支払うことを怠ってしまうのです。

【理由②】コストカット

 業績が思わしくない際、会社はコストカットを検討します。まず、その対象になるのが人件費です。そこでよくあるのが、記録上は残業をしていないのに、実際は残業をしているというケースです。労働者にサービス残業をさせることで人件費のカットが出来るのです。

【理由③】利益が増える

 サービス残業は、いわゆる”タダ働き”になるため人件費を抑えられます。労働者にサービス残業をさせることで会社の利益は増加します。

【理由④】上司の意識の問題

 サービス残業はバブル期の1980年代後半も当たり前のように行われていました。ただ、現在と異なるのは会社のためにサービス残業を行えば雇用の安定やボーナスの増加、昇進等、それ相応に見返りが保障されていました。
そんなバブルを謳歌した上司にはサービス残業をすれば報われるという悪しき過去の習慣が根付いています。そんな上司の下で働く部下はサービス残業が押し付けられる傾向にあります。

【理由⑤】「仕事が出来ない」というレッテルを貼られるのを恐れる

 まだ仕事に慣れていない新入社員等は、定時までに仕事を終わらせることが出来ないと、自己責任でサービス残業をしがちです。
 これは「仕事が出来ない」というレッテルを貼られるのを恐れて起きるサービス残業と言えるでしょう。

【理由⑥】業務量過多

 残業時間は36協定により上限が設けられており、会社は労働者に月45時間の残業をさせてはならないと定められています。ですが、業務量過多により労働者は月45時間を超える労働をせざるを得ない場合もあります。
そのような際、月45時間を超えた残業に関しては、なかったことにする会社は少なくありません。業務量過多もサービス残業の一因になっているのです。

【理由⑦】上司の評価のため

 残業が多い部署では、上司の仕事配分のミスが原因と見なされるケースが多いです。上司は部下の残業の多さが自信のマイナス評価にならないように、部下にサービス残業を強制する傾向にあります。

【理由⑧】日本特有の評価の仕方

会社に利益をもたらし最も評価されるべき人材とは、残業をせずに大きな成果を上げられる労働者でしょう。ですが、日本では「成果」より「仕事に対する姿勢」を評価する傾向にあります。
残業をする人を高く評価し定時内でしっかりと成果を出す労働者はやる気がないという烙印を押される、というねじれ現象が起こっているのです。

こういった間違った評価の在り方が残業を助長し、延いては人件費のかからないサービス残業を行なえば、さらに評価されるのではないかという誤った考えが広まっているのです。

【理由⑨】1つの会社に縛られ続けてしまう環境

 近年は、1つの会社に留まる必要はないという考えが広まっています。しかし、一方では入社したら定年まで勤め続けることが素晴らしいという古い考えが未だに残っています。
 そのような考えの持ち主には、サービス残業等の不都合が生じても会社を辞めるという選択には至りません。それが、サービス残業は当たり前という雰囲気を作り出し、会社全体で違法な残業が自然と広がっていくのです。

よくあるサービス残業事例

 では、よくあるサービス残業にはどのようなケースがあるのでしょうか。
 一口にサービス残業と言っても様々なケースがあります。次に挙げる方法はサービス残業の可能性があるでしょう。

【事例①】タイムカードを定時で切る

 残業の有無に関わらず「タイムカードを定時で切らなければいけない」と決まられている会社では、サービス残業が横行しているでしょう。労働者にタイムカードを切らせることで、残業をしている事実をもみ消しているのです。

【事例②】残業申請の拒否

 残業の申請を拒否される場合もサービス残業に該当する可能性があります。残業申請の拒否は、”タダ働き”も同然なのです。

【事例③】30分単位でないと残業代が出ない

 会社によっては「30分未満は切り捨て」等として残業代の支払いに対して独自のルールを設けている会社は少なくありません。ですが、労働者は働いた時間の代償として賃金が支払われなければならないため、たとえ1分でも賃金を支払う必要があります。もし、例えば15分の残業を労働時間と見なされていない場合はサービス残業に該当するでしょう。

【事例③】残業時間の上限が設けられている

 前項で触れましたが、36協定では残業時間の上限が45時間と定められています。そのため、サービス残業が蔓延る会社では、「月45時間以上の残業はさせない」ではなく「月45時間以上の残業に対しては残業代を出さない」という姿勢をとっているケースがあります。
また、会社独自の制限を設け「月15時間までの残業代しか出さない」等、上限を設けている会社もあります。

【事例④】自己啓発の名目

スキルアップをするための残業を労働時間と見なさず、サービス残業にするケースは少なくありませ。これは一見労働時間ではないように見えますが、仕事の役立つために行うスキルアップは労働時間になる可能性があります。

【事例⑤】会議

定時内はみっちり業務に没頭させ、終業時間から会議の予定を入れるという会社は少なくありません。業務とは一線を画しているように見えますが、会議も歴とした労働時間です。
定時を超えて行われる会議が労働時間に数えられていない場合はサービス残業に当たるでしょう。

【事例⑥】持ち帰り残業

 定時内で終わらなかった仕事を自宅に持ち帰ってする”持ち帰り残業”もサービス残業に該当します。
 職場でない自宅に持ち帰って仕事をさせることで、一見残業をさせていないように見えます。そして、「あくまでも自主残業である」という恰好にすることさえ出来ます。しかし、場所はどこであれ残業は残業なのです。

【事例⑦】早朝出勤

 サービス残業といえば、いわゆる就業時間を過ぎて働く労働のことを指します。ですが、始業時間前に働く労働もサービス残業に当たるケースがあります。「今日は仕事が終わりそうにないから早く出勤する場合」や「始業時間前にミーティング」等もサービス残業に当たるかもしれません。

【事例⑧】休日出勤

 休日出勤もサービス残業の代表例と言えるでしょう。「仕事が終わらないから自己責任で休日出勤をしている」と考える労働者は多いでしょう。しかし、そもそも休日に残業をしなくてはならないほどの業務量を課す会社に責任があるとも考えられます。
よって、休日出勤もサービス残業に当たる可能性があるのです。

【事例⑨】名ばかり管理職

 2010年頃からは”名ばかり管理職”というワードが出始めました。”名ばかり管理職”とは十分な権限や待遇を与えられていない部長や課長等の役職者のことを指します。このような役職者には、労働基準法41条で定められている「管理職には残業代の支払いは対象外」といった内容が適用されています。そのため、”名ばかり管理職”はサービス残業をさせられているのです。

【事例⑩】みなし残業

 みなし残業とは、事前に決めた時間分の残業代が給与に含まれている給与形態のことをいいます。
 しかし、事前に決めた時間分の残業をしても「給与に残業代が含まれているから」という理由で残業代の支払いから免れ、サービス残業を余儀なくされる労働者は少なくありません。

サービス残業は違法である

 以上、数々の理由が挙げられますが、本来働いた分の賃金は支払われなければなりません。
 そもそも労働時間には定義があります。労働基準法32条で「労働者は使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」といったような規定があります。
 つまり、「会社の指揮命令下」にも関わらずサービス残業をしている場合は違法に該当するのです。

サービス残業をなくすために対策

サービス残業当たり前
では、サービス残業に対して労働者はどのような対策をすればよいのでしょうか。それにはいくつもの対策があるので以下をご覧ください。

【対策①】上司に訴える

部署の上司等に、「サービス残業した分の残業代を出して欲しい」あるいは「残業が発生しないよう業務量を調整して欲しい」と訴えてみましょう。行動力のある上司でしたら対応してくれるかもしれません。

【対策②】周囲の従業員に宣言する

 周囲の従業員に残業をしないことを宣言するのも一手です。まずは自分が真っ先にサービス残業をしない姿勢を周囲に見せることで、サービス残業が”当たり前”から”当たり前ではない”労働環境に良化させることが出来るかもしれません。

【対策③】業務の効率化を図る

 周りの従業員と協力して業務の効率化を図るのも一案です。部署全体で業務の優先順位を決めて行動したり、ルーチンワークをシステム化したり等が効率化に向けた行動に挙げられます。

【対策④】残業代請求を出来る準備をしていることをアピール

 勤怠状況を個別で記録していることをアピールするのも手段です。これは、残業代請求をするために証拠が必要なためです。サービス残業をしたとしても後に未払いの残業代を請求出来る状態であることを周囲に知らせましょう。そうすることで、会社は当たり前になっているサービス残業の改善に乗り出す可能性が考えられます。

【対策⑤】労働組合を通して改善を試みる

 労働組合を通して会社と交渉をする方法もあります。
 労働組合とは、労働者の権利や利益の保護を目的として、労働者同士で結成された団体のことを呼びます。一般的に、労働組合は社内にありますが、ない場合もあります。
 その場合は企業に属さないユニオン等の一般労働組合と協力しながら、会社に対しサービス残業の改善を訴えることは有効な手段と言えるでしょう

【対策⑥】労働基準監督署に相談

 会社を管轄する労働基準監督署に相談するのも一手です。サービス残業の事実があるかもしれないという判断が下れば、労働基準監督署は会社を調査し、もし違法が明確になれば会社に指導や是正勧告が行われます。

【対策⑧】転職する

 改善の望みがないなら今の職場に見切りをつけ、この機会に転職をすることも選択肢の1つに入れてみてもいいでしょう。
その際は、出来るだけサービス残業が少ない業界に転職をした方がよいかもしれません。
転職サイトの「転職会議」が掲載している「サービス残業が多い業界ランキング」に以下のようになっています。

ランキング 業界
1 百貨店

量販店

2 チェーンストア

スーパー

コンビニ

3 医療

福祉

介護

4 自動車

運輸

輸送機器

5 レジャー

アミューズメント

フィットネス

量販店やスーパー等、消費者を相手にする接客業等にサービス残業が多い傾向にあることがこのランキングから分かります。
 転職をしようと考えている方は以上のランキングを1つの指標にしてみてください。

【対策⑨】残業代を請求する

 最後の対策です。
労働者にとっては働いた分の賃金を請求することは当然の権利です。サービス残業によって発生した未払いの残業代は、やはり請求した方がよいでしょう。
未払い残業代の請求方法については下記の記事で詳しく説明をしています。請求するまでの流れを理解出来るでしょう。

まとめ

 インターネットを見ると、「ゆとりはすぐ残業を拒否する!会社のためにサービス残業は当たり前だ!」という意見等が散見されます。しかしながら、サービス残業は歴とした違法です。ゆとりが上司にサービス残業を拒否する姿こそが、本来の労働契約の在り方なのではないでしょうか。
もしサービス残業に苦しんでいるのでしたら、労働環境を良化するために本記事でご紹介させていただいた対策を参考に行動を起こしてみてください。

※1:以下のアンケート調査を総合して算出したデータ。
・日本労働総連合会の委託で調査会社が実施した「労働時間に関する調査(2015年)」、「36協定に関する調査(2017年)」
・インターワイヤー株式会社が実施した「長時間労働に関するアンケート(2017年)」
・株式会社イマ―ジョンが実施した「残業実態調査(2017年)」
・連合総研が行った調査「勤労者短観(2017年10月)」

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