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管理職の「過労死」と「勤怠時間の把握義務」

更新日:2024年02月13日
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 2016年、某大手製薬会社の部長のAさんが自殺したことがニュースで話題になりました。天満労働基準監督署によると、Aさんは、労災認定の基準とされている過労死ライン(月80時間の残業)を上回る、月100時間超の残業等が原因で過労自殺しました。

 なぜ、このように管理職の方は、過労死ラインを超えるような残業を強いられるのでしょうか。

管理職と管理監督者

 現在、部長等の管理職の人は、労働基準法で定められている管理監督者と見なされているケースが多いです。管理監督者と見なされていることこそが、管理職の長時間労働に大きく関係しているのです。

 管理監督者は、労働基準法で定められている労働時間、休日、休憩に関する規定が適用されません。
 労働基準法では、労働時間、休日、休憩について以下のような内容の規定があります。

■労働時間…時間外労働、休日に労働した場合は割増賃金を支払わなければならない(労働基準法第37条)
■休日…会社は労働者に毎週少なくとも1日の休日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない(労働基準法第35条)
■休憩…労働時間が、6時間を超え8時間以内の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならない(労働基準法第34条)

 上記の規定が管理監督者には適用されません。そのため、管理監督者として見なされている多くの管理職は、労働時間が長い傾向にあるのです。

管理職にしわ寄せ

 そのような中、2019年4月から働き方改革関連法が施行されました。その一環である「時間外労働の上限規制の導入」によって、管理職の長時間労働に拍車がかかったと言われていいます。
「時間外労働の上限規制の導入」の内容は、「時間外労働の上限を月45時間、年360時間を原則とする」というものです。残業時間の規制により、管理監督者と見なされない役職等に就いていない労働者の労働時間は短くなりました。

 しかし、社内の業務量は減っていません。一般職の労働時間減少のしわ寄せは管理監督者と見なされる管理職にきているのです。

管理職になりたくない人は多数

過去にはこんなデータがあります。
 厚生労働省が発表した「平成30年度労働経済の分析」によると、役職に就いていない社員等の昇進希望の割合は「管理職以上に昇進したい人」は38.9%です。それに対し、「管理職に昇進したいと思わない人」が61.1%と上回っているのです。
 管理職になりたくない理由として、次のような意見が挙げられています。

・責任が重くなる
・業務量が増え、長時間労働になる
・現在の職務内容で働き続けたい
・部下を管理、指導出来る自信がない
・職責に見合った賃金が支払われない

管理職の長時間残業に拍車がかかっていると言われる今、管理職になりたくない人もさらに増えるのではないか、と予想されます。

管理職の労働時間の把握の義務化

 そんな懸念がされる一方で、働き方改革関連法の1つに「管理監督者の労働時間の把握義務」があります。これは、以前まで管理監督者が適用除外とされていた、労働基準法109条の「使用者(会社)は労働者名簿、賃金及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」という規定が、適用になるのを受けてのことです。

 つまり、会社は管理監督者と見なしている管理職の労働時間の把握をしなければならなくなったのです。
 それにより、管理監督者の長時間労働に歯止めがかかるという期待の声も上がっています。

 いずれにせよ、これ以上の過労死事件が起こらぬよう、管理職の労働環境の改善が急がれています。

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