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これが残業の定義:残業許可が下りないと残業代が出ないのは違法かも

更新日:2019年03月12日
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どの業界でも、仕事をするうえで残業というものはつき物ですよね。ですが、あなたは残業の定義をご存知ですか?「どこからが残業か」が分からず、普段遂行している仕事が、実は残業だったりするかもしれません。

現在は様々な形の残業が存在しています。そこで、今回は残業の明確な定義を法律に沿って説明していきます。

2種類の残業

 はじめに、残業には「法定労働時間外労働」と「法定時間内残業」の2種類あることについて触れていきます。

【種類①】法定時間外労働

法定時間外労働とは、労働基準法で決められた法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働のことを指します。
法定労働時間外労働には割増された賃金が支払われます。

【種類②】法定時間内残業

法定時間内残業とは、所定労働時間(会社が法定労働時間内で自由に定めた労働時間)を超え、法定労働時間内の範囲で行われた残業のことをいいます。
 例えば、所定労働時間が1日6時間の会社があるとします。6時間を超えて2時間の残業をした場合、その2時間は法定労働時間の1日8時間以内の残業なので、法定時間内残業に該当します。

 法定時間内残業には後でお伝えする割増された賃金は支払われません。

労働時間の定義を満たせば残業に該当する

 但し、法定時間外労働と法定時間内残業をすれば残業扱いになるとは限りません。労働時間の定義を満たしていなければ、残業には該当しないのです。
 それでは、労働時間の定義とはどのようなものなのでしょうか。

 労働基準法32条では「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間と規定する、といった内容の記述がされています。
「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」とはどのような時間を指すのか、例を挙げて説明させていただきます。

■昼休み中の来客・電話対応
 昼休み中に来客や電話に対応しなければならない環境にある場合は、「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」に該当する可能性があります。

■仮眠時間中の警報・電話対応
 仮眠時間中に警報や電話等に対応しなければならない場合も「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」に該当する可能性は否定出来ません。
 これは、昼休み中の来客・電話当番と同じ見解です。

■教育訓練・研修等
 教育訓練・研修等に参加せざるを得ない場合も、「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」に当たる可能性が考えられます。

■更衣時間
指定の制服や作業服等の着用が義務づけられている場合、その更衣時間は「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」に該当するかもしれません。

「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」について、さらに詳しく知りたい方は「労働時間の定義を知って違法残業を見抜こう」をご覧ください。

残業が許される条件

 ただ、会社は条件なしに労働者に残業をさせる権限はありません。労働基準法で定められている下記の3つのいずれかに該当する場合に限り、会社は労働者に残業を命じることを許されます。

①災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合において、使用者が行政官庁の許可を受けた場合(事態急迫の場合は、事後に届け出る。)(労働基準法第33条第1項)

②官公署の事業(一部の事業を除く)に従事する国家公務員及び地方公務員が、公務のために臨時の必要がある場合(労働基準法第33条第3項)

③使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。(労働基準法第36条第1項)

①②の場合、臨時的であったり職種が限定されていたりします。多くの会社では③を満たすと、労働者に残業を命じることが可能になります。

36協定と上限

 ③では「労働者に法定労働時間を超えて働かせる場合、あらかじめ労働組合または、労働者の代表と協定を結ばなければばらない」と定められています。この協定のことを「36(サブロク)協定」と呼びます。
 この36協定には、労働者に法定労働時間を超えた労働を命じることが出来る一方で、過重労働を防ぐために以下の通り、残業時間の上限が設けられています。

【36協定の残業上限時間】

期間 1週間 2週間 4週間 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 1年間
残業時間の上限 15時間 27時間 43時間 45時間 81時間 120時間 360時間

代表的なのが月45時間の上限です。みなさんの中にも上司から「残業は月45時間を超えないように」と言われている方もいるのではないでしょうか。

 労働者に上限時間を超えた残業をさせた会社は労働基準法違反になり罰せられる可能性があります。そのため、上限時間を超えないよう、残業の事前許可制を採用している会社も珍しくありません。

残業の事前許可制度とサービス残業

 残業の事前許可制度とは、労働者が残業をする場合、事前にその旨を「残業届」「残業許可・承認書」等で申請しなければならない制度のことを指します。
 しかし、残業の事前許可制度には落とし穴があります。

 労働者が事前の申請なしに残業を行うと、残業代が不当に支払われないサービス残業が発生するという事象が多く発生しているのです。
 また、残業せざるを得ない状況にも関わらず会社から許可が下りず、やむなくサービス残業をしている、という方も少なくありません。

 しかし、労働基準法には「会社から承認が下りない場合、時間外労働をしても残業代は支払われない」という内容の規定はありません。本来は、承認の有無に関わらず残業代は支払われなければならないのです。

様々なサービス残業

サービス残業は、残業の事前許可制度によるものだけではありません。
 会社は、残業代の支払いを抑えるために様々な残業の形をとっています。それにより、あなたも何気なくサービス残業をしてしまっている可能性があります。
そこで、会社が残業代を抑えるために行っている、よくある残業ケースについて説明します。

①見て見ぬふり

サービス残業として一番よくあるのが、例えばタイムカードを定時で打刻し、その後も労働者を残業させ、それを見て見ぬふりをする方法です。

上司から残業の指示がなかったとしても、明らかに残業をしないと終わらないような仕事量を任されたり、会社の風潮で残業する流れになってしまったり等、客観的に見て残業せざるを得ない状況であれば、上司から残業を指示されたと同等の扱いになります。

②持ち帰り仕事

仕事がどうしても終わらず家に仕事を持ち帰らざるを得ない場合も残業の扱いになります。その時は、メールの履歴等、家で何時までの作業をしたのかを証明するものだったり、仕事を持ち帰らざるを得なくなった証拠があったりすれば、残業と認められます。

③朝残業

残業と言ったら、定時を過ぎた時間を働くことをいうイメージがありますが、上司から「始業時間より早く来て資料作成をするように」と指示されて早めに出勤する場合や、朝礼があるから出社時間の30分前に出社している場合も労働時間と見なされます。その内容も考えて、法定時間を越えるようなら、それは残業しているといえる可能性があります。

④研修の強制参加

例えば休日、強制的に研修に参加させられる場合も労働時間なので、残業や休日出勤の扱いになります。これは「強制」という場合に当てはまることであって、「参加・不参加」が選べる研修で参加を選んだ場合は労働時間の扱いになりません。

⑤みなし残業

こちらは制度の問題になりますが、実際に働いた残業とは無関係に、この時間残業したと「みなし」てみなし残業代として「あらかじめ残業代は支払っている」としている会社があります。例えば、あらかじめ基本給の〇〇円分は〇〇時間分の残業代として含まれる制度のことです。

しかし、このみなし残業代には問題があって、労働者の給料が初めて支払われた後に気がついたり、何時間残業しても残業代が変わらなかったりと問題が生じてしまいます。

⑥名ばかり管理職

全国各地にある小規模な事業所の事務所長や、小売業や飲食業の店長などが当てはまることが多い例ですが、簡単に管理職の役職を与えるだけ与えて残業代を支払わないという「名ばかり管理職」という方法で、残業代をうまく抑える方法がとられている場合があります。

労働基準法では「管理監督者」には残業代を支払う義務はないという規定は確かにあります。しかし、この「管理監督者」に該当する労働者は経営の方針などに大きく関わるような人物のことをいうのであって、事業所の事務所長や店長は、これに当てはまらない可能性が高いです。

その結果、元々残業が多いプロジェクトリーダーや店長等の責任者が残業しても給与は変わらないという問題が生じてしまいました。

⑦年俸制

前もって年間で決まった金額を12ヶ月で割って、支給していく年俸制を取り入れている会社もあります。年俸制に残業は関係ないという先入観から、残業代という概念がなく多くの残業をさせる会社もあります。しかし、年俸制であっても、「労働時間」はしっかりと管理しなければならないので、残業代もしっかりと支払わなくてはなりません。

残業代はしっかりもらうべき

このように業種・職種によって、残業が当たり前になっているところがありますし、労働時間が長い企業ほど何かしらの方法で残業代を抑えている可能性があります。もし残業が多いのに、残業代が支払わなれていない場合は、まずは自分がどれくらいの残業をしているのかを把握するのがよいかと思います。

なお、残業代の計算方法についてはこちらを参考にしてみてください。

弁護士が残業代を計算してくれる

大体の計算はこちらを読んでいただければ計算は可能ですが、いざ計算してみるとタイムカードや給与明細とにらめっこしてしまい、「この場合はどれに当てはまるんだろ?」という細かい疑問が出てくる可能性があります。

特に「不当に支払われていない残業代が多くて残業代請求を考えている」という方は、弁護士に相談してみることをお勧めします。残業代の細かい計算から請求の手法まで相談にのってくれます。特殊な契約で隠れている残業代や遅延金なども見つけて計算してくれます。

自分で残業代を計算した時よりも高額な未払い残業代が発覚するケースも多々ありますので弁護士に相談することは有効な手段といえます。

未払い残業代の請求は、請求した日から過去2年(24ヶ月)まで遡って請求することが出来ます。そのため、自分で未払い残業代の請求をしようと準備をすると、どうしても時間がかかってしまうため、本当は24ヶ月請求出来るところを、23ヶ月しか請求出来なくなってしまうこともあります。
そうなってしまうと損するのはあなたなので、そうならないためにも、まず弁護士に相談することはお勧めです。

まとめ

残業が多いとされている現代ですが、さらに問題になっているのが正当な残業代が支払われていないことや、残業しないと生活が出来ないほどの基本給の設定になってしまっている背景があります。
しかし、そのような問題から労働者を守るために労働基準法があります。しっかりとした証拠があって、知識があればこれらの問題は必ず解決出来ます。

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