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派遣従業員の残業代が出ないってホント?

更新日:2020年12月25日
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 残業がないイメージのある派遣の従業員。仕事後のプライベートを充実させるために、派遣社員や派遣のアルバイトとして働く方も少なくありません。
 しかし、派遣の方とて、繁忙期になれば残業をしなければならないケースがあります。

 そこで今回は、派遣の社員・アルバイトの残業代についてお伝えします。

「派遣の残業代は出ない」は誤解

 「派遣の残業代は出ない」とまことしやかに言われていますが、それは誤解です。派遣の方も所定労働時間(労働者と会社の間であらかじめ決めた労働時間)を超えた労働をした場合、残業代が支払われなければなりません。

 例えば、所定労働時間が9時から18時(休憩1時間)で、19時まで残業をしたとします。その場合、18時から19時の1時間に対しては、残業代が発生します。

残業代の計算方法

 続いて、派遣の方の残業代の計算方法を、手順を追って説明していきます。

【計算①】1時間あたりの賃金を求める

 はじめに、「1時間あたりの賃金(=時給)」がいくらなのかを求めていきます。派遣アルバイトの方は時給制のため、求める必要はありませんが、派遣社員のように月給制等の方は、1時間あたりの賃金の算出は欠かせません。
 1時間当たりの賃金を算出するための計算式は、次の通りです。

1時間あたりの賃金=基本給÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間

基本給とは
 残業代や電車代、役職手当等の各種手当、歩合給等のインセンティブ給与を除いた基本賃金のことを指します。

 例えば、基本給が18万円で1ヶ月の所定労働時間が160時間の場合、1時間あたりの賃金は、

180,000÷160=1,125円

になります。

【計算②】法定時間内残業と法定時間外労働

 次いであなたの残業が、法定時間内残業と法定時間外労働のどちらに該当をするのかを見ていきましょう。
 法定時間内残業とは、所定労働時間(労働者と会社の間であらかじめ決めた労働時間)を超えた労働のうち、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)の範囲内で行われた残業のことをいいます。
 対して法定時間外労働とは、法定労働時間を超えて行われた残業のことを指します。

 法定時間内残業と法定時間外労働について、一例を挙げてお伝えしましょう。
 例えば、10時から18時までの勤務で休憩時間は1時間だとします。その場合、労使間(労働者と会社の間)で定めた所定労働時間は、1日7時間です。
 ある日、21時まで残業したとします。その場合、

・18時から19時までの1時間は、所定労働時間を超え法定労働時間の範囲内で行われた残業のため、法定時間内残業
・19時から21時までの2時間は、法定労働時間を超えて行われた残業のため、法定時間外労働

となります。

 あなたが行った残業が法定時間外労働の場合は、1時間あたりの賃金に割増した賃金が支払われる必要があります。これは、労働基準法で「法定時間外労働をした場合、割増した賃金を支払わなければならない」と定められているためです。割増賃金の詳細は次項で説明させていただきます。
 また、法定時間内残業に対しては割増した賃金を支払う必要はありません。

【計算③】割増賃金の計算

 割増賃金の割増率は条件によって、下記の表のように変動します。

残業の種類 賃金割増率 備考
法定時間外労働 25%
1ヶ月60時間を越えた残業 50% 代替休暇取得の場合は25%
深夜労働 25% 22時から翌5時までの間を労働した場合
法定休日労働
※法定休日…労働基準法で定められている、1週のうち1日、あるいは4週を通じて4日取得しなければならない休日
35% 休日労働では、8時間を越えても時間外労働の25%割増は加算されない
残業+深夜労働 50%
1ヶ月60時間を越えた残業+深夜労働 75%
休日労働+深夜労働 60%

 例えば、1時間あたりの賃金が1200円で3時間の法定時間外労働をした場合、残業代は

1200×1.25×3時間=4500円

になります。

よくある派遣社員の残業代未払い

 派遣先企業によっては、残業代の支払いを免れるために、サービス残業を強要する場合があります。しかし、労働者には働いた分の賃金を支払われる権利があります。
 派遣の方によくあるサービス残業は、以下が挙げられます。

【未払い①】1時間未満の残業代は15・30分単位での支払い

 派遣社員の方は、1時間未満の残業代に関して、15分単位や30分単位で支払われているケースが少なくありません。
 果たして、15分単位等の支払いは法的に妥当なのでしょうか。それについては下記に挙げる、労働基準法の規定を見ると判断が出来ます。

■労働基準法37条
使用者(会社)が、労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない

■労働基準法24条
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない

 以上の規定を端的にまとめると、「労働時間を延長し、または休日に労働させた場合、その働いた時間分の賃金を全額労働者に支払わなければならない」になります。
 つまり、残業代は1分単位で支払わなければならない、ということが言えるでしょう。同時に、 15分単位での残業代の支払いは違法の可能性が考えられます。

 端数の残業時間の扱いについてはこちらの記事「法律上、残業代を15分単位で支払うのは違法である」で詳しく説明をしているので併せてご覧ください。

【未払い②】割増賃金なし

 法定時間外労働に該当するにも関わらず、割増なしで賃金が支払われているケースも少なくありません。その場合は、正当な残業代が支払われていない可能性が考えられます。

【未払い③】管理職

派遣社員の方でも、部長等の管理職の地位に就いている方もいます。しかし、その管理職は、「名ばかり管理職」に該当するケースもあります。
 その場合は、本来支給されなければならない残業代が、支払われていない可能性が考えられます。

派遣社員の残業代請求に判例

 ここで派遣社員の未払い残業代請求の判例を2つご紹介させていただきます。

【判例①】阪急トラベルサポート事件

 添乗員のAさんは、ある海外ツアーにおいて、就業条件明示書に記載されている就業時間以上の労働をしていたため、派遣会社に対して残業代の支払いを行いました。

 それに対し、派遣会社は、添乗員の業務が労働基準法第38条の「労働時間を算定し難い」に該当するとし、事業場外みなし労働時間制に適用されると主張しました。

 しかし、裁判で派遣会社の主張は認められず、添乗員に未払いの残業代が支払われました。

【判例②】テックジャパン事件

 派遣社員のBさんは、派遣会社に対して未払いの残業代の支払いを求めました。
 それに対し、派遣会社は「月間総労働時間が180時間を超えた場合は残業代を支払うという契約を結んでいる。ただ、月間総労働時間180時間未満のついての残業代については、既に基本給の41万円に含まれている」と主張。

 判決では、基本給の41万円に残業代が含まれている旨が、雇用契約書に明示されていないとして、派遣会社は未払い分の残業代を支払うよう裁判所に命じられました。

給与はどこから支払われる?

 さて、派遣従業員は、どこから給与が支払われるのでしょうか。それを把握するためには、派遣契約の仕組みを把握する必要があります。

 派遣契約は、派遣従業員と派遣会社、派遣先企業の三者の間で契約が取り交わされます。派遣契約における三者の関係をまとめると以下にようになります。

・派遣従業員は派遣会社と雇用契約を結ぶ
・派遣従業員が働く場所は派遣先企業
・派遣従業員に対して、業務の指揮命令権を持っているのは派遣先企業
給与は、派遣会社から派遣従業員に支払われる

 三者は以上のような関係になるため、未払い残業代の支払い先は派遣会社になります。

未払い残業代の請求手順

 では具体的にどのように残業代を請求すればよいのでしょうか。

【請求①】証拠を集める

 残業代を請求する場合、はじめに残業があった事実を証明するための証拠は自身で集めなければなりません。これは、立証責任(確実な証拠で証明する責任)が請求者にあるためです。残業代の証拠になるものは、以下が挙げられます。

■タイムカード
■メール
■日報・週報
パソコンのログイン記録
■派遣先管理台帳(派遣先企業が就労を管理するための台帳)

上記の他にも、残業をした証拠になる得るものがあります。詳しくはこちらの記事『未払い残業代請求は「証拠集め」が肝心:証拠がない場合の請求方法も紹介』をご覧ください。

【請求②】派遣会社に請求

 残業をした客観的証拠が集めたら、給与の支払い元である派遣会社に、未払い分の残業代を請求しましょう。その際は、こちらの記事「会社と荒波を立てずに残業代を請求する方法」 をお読みください。
請求に向けての細かい手順が載っているので参考になるでしょう。

終わりに

 「派遣従業員は残業代が出ない」と言われていますが、それは誤解です。派遣従業員も働いた分の残業代は支払われる権利があるのです。もし、残業代が支払われてないなら、派遣会社に対して未払い残業代の請求をすることを検討してみてください。

 また、未払い残業代請求について、残業代請求に強い弁護士に相談をするのも一手です。残業代請求に向けてするべきことを助言してもらえるでしょう。

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編集部

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