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事業場外みなし労働時間制とは?違法に残業させられている可能性がある

更新日:2019年07月09日
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営業マンの間でこのような話をよく聞きませんか?

「うちの会社は『みなし労働時間制』だから、残業代が出ないんですよね。」

 外回り等で労働時間の管理が難しい営業マンには「事業場外みなし労働時間制」という給与形態が採用されるケースが少なくありません。
 そこで今回は、「事業場外みなし労働時間制」についてお伝えしたいと思います。

みなし労働時間制について

 まず「事業場外みなし労働時間制」を説明する前に、「みなし労働時間制」について知る必要があります。

みなし労働時間制とは

 「みなし労働時間制」とは、労働時間の算出を実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めておいた時間を労働したものとみなし制度のことをいいます。この時間のことをみなし時間と言い、実際に働いた時間とは異なったとしても、みなし時間働いたものとして扱われます。

みなし労働時間制が適用される条件

 このみなし労働時間制が適用される条件として、以下の2項目が両方必須となります。

1.労働者の労働時間の全部または一部を会社の外で仕事している場合
2.上司などから具体的な指示を受けず、自身の決定で仕事をしていて、かつ会社からの監視がないために労働時間の算出をすることが難しい場合

業務によって3つのみなし労働時間制に細分される

 みなし労働時間制は業務の特徴によって3つに細分されます。その中の1つに冒頭でも触れた事業場外みなし労働時間制が含まれます。

■事業場外みなし労働時間制…直行直帰する営業職や出張等の臨時の事業場外労働のように社外勤務が多い労働者に適用される
■専門業務型裁量労働制…業務の性質上、手段や方法、時間の配分等の決定をほぼ労働者に任せる必要がある場合に適用される
■企画業務型裁量労働制…事業方針等の重要な決定が行われるような会社の本社で、立案や企画、分析、調査を行う事務系の労働者に適用される

事業場外みなし労働時間制について

 それでは、みなし労働時間制をさらに深掘りしていきましょう。

事業場外みなし労働時間制とは

 事業場外みなし労働時間制とは、会社以外で仕事をする場合に、所定の時間労働したとみなす制度のことをいいます。会社は、社外で業務を遂行する機会が多い労働者の労働時間を管理することが難しいです。そんな労働者に対し、会社は事業場外みなし労働時間制を採用します。
また、労働時間の計算を簡略化出来るため、事業場外みなし労働時間制を導入する会社が少なくありません。

事業場外みなし労働時間制が認められる条件

 事業場外みなし労働時間制を導入するためには以下の2つの条件を全て満たしていなければなりません。

■会社の外で業務に従事している
■労働時間の算定が困難である

会社の外で業務に従事している

 「会社の外で業務に従事している」労働者とは、添乗員や営業、新聞記者等の仕事をしている者のことを指します。また、自宅勤務や出張も「会社の外で業務に従事している」に該当するでしょう。

 会社の外で働いているのは、労働時間の一部で構いません。

労働時間の算定が困難である

 「労働時間の算定が困難である」とはどのような状態のことをいうのでしょうか。換言すると「労働時間の算定が出来ない状態」と言えるでしょう。

 では、「労働時間の算定が出来ない状態」を分かりやすくするために、「労働時間の算定が出来る状態」がどのような場合を指すのかについて見ていきましょう。
 『「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために』という行政通達によれば、下記の①~③に該当する場合は、「労働時間の算定が出来る状態」としています。

①複数人で事業場外勤務する際に労働時間の管理をする者がいる
②無線やスマホ等で随時、会社から指示を受けながら事業場外で労働をしている
③会社から訪問先や帰社時刻等の具体的な指示を受けた上で、事業場外勤務をしている

 つまり、上記とは異なる下記の⑴~⑶の場合が「労働時間の算定が出来ない状態」=「労働時間の算定が困難である」と言えるでしょう。

⑴複数人で事業場外勤務をする際に労働時間の管理をする者がいない
⑵無線やスマホ等で会社から指示を受けることなく事業場外で労働をしている
⑶会社から訪問先や帰社時間等の具体的な指示を受けず、自身の裁量で事業場外勤務をしている

就業規則と労使協定と届出

 事業場外みなし労働時間制を導入する場合、就業規則にその旨を記載しなければなりません。但し、労使協定では事業場外みなし労働時間制についての記載は必要ありません。

 また、みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える場合は、労働基準監督署に届出をしなければなりません。

事業場外みなし労働時間制が適用されない場合

 事業場外みなし労働時間制が認められないケースがあります。次のような場合は事業場外みなし労働時間制は適用されない可能性があります。

会社の指揮監督を受けている

 会社の指揮監督を受けている場合は、「労働時間の算定が困難である」とは言えないため、事業場外みなし労働時間が適用されない可能性があります。
例えば、時間管理をする上司等が同行するケースや、携帯電話で随時指示を受けるケース、帰社したら報告する等、会社の監視の下で働いている場合等が会社から指揮監督を受けている状態と言えます。

年少者・妊産婦等にひっかかる

 労働基準法では年少者と妊産婦は、事業場外みなし労働時間が適用されない、と定められています。ですので、18歳未満の方と妊産婦は適用されません。

事業場外みなし労働時間制が認められなかった判例

 過去には事業場外みなし労働時間制が認められなかった判例があります。それが以下です。

【海外ツアーの添乗員への適用が否定されたケース(最決平成26年1月24日)】
 7日間のわたる海外ツアーの添乗業務について、直行直帰、単独で行動、時間管理者も同行していなかったものの、事業場外みなし労働時間制の適用が認められませんでした。その理由は以下の通りです。

・業務内容が具体的に決定していた
・旅程の指示やマニュアルによる業務指示、旅行日程に変更がある場合は会社の報告することが義務づけられていた
・帰国後、日報で詳細な報告を求められていた

この判例では、事前に指示があり、場合によっては業務途中でも報告をしなければなりませんでした。また、業務終了後に報告を求められていたことから、「労働時間の算定が困難」とは見なされず、事業場外みなし労働時間制が認められませんでした。

【営業社員への適用が否定されたケース】
広告会社の営業社員が事業場外みなし労働時間制を導入されていました。しかし、現状は以下のように労働時間の管理がされていたため、事業場外みなし労働時間制は認められませんでした。

・始業終業時刻を定めていた
・IDカードによって労働時間を管理していた
・会社から貸与した携帯によって利用時間を管理していた
・営業日報の作成を義務づけられていた

この判例では、会社が社員の時間管理を行っており、「労働時間の管理が難しい」とは言えないため、事業場外みなし労働時間制は認められませんでした。

【出張への適用が否定されたケース】
 出張の際に、事業場外みなし労働時間制を適用する会社がありました。
しかし、現状は出張に行くメンバーの中に管理監督者がいたり、1日のタイムスケジュールを作業報告書に記入することを義務づけられたりしていました。
そのため、事業場外みなし労働時間制が認められませんでした。

時間の管理を行える管理監督者が同行していたこと、作業報告書の作成を義務づけられていたことから、「労働時間の管理が難しい」と見なされず、事業場外みなし労働時間制の適用は認められませんでした。

違法の可能性がある

 上記の判例を見る限り、事業場外みなし労働時間制が適用されるかどうかの最大の可否は、「労働時間の管理が難しいかどうか」にかかっていると考えられます。
 もし、上記の判例のように労働時間の管理をされている労働環境にも関わらず、事業場外みなし労働時間が適用されている場合は、違法の可能性があります。
 延いては、違法なサービス残業をさせられている可能性があります。

 違法なサービス残業をさせられるのは以下の場合が考えられるためです。
 みなし労働時間が8時間の場合、実際の労働時間が10時間であっても、所定労働時間の8時間を働いたとみなされます。逆に、4時間しか働いていなくても8時間働いたとみなされます。
 だからといって、毎日15時間や20時間働いたとしても8時間とみなされるかというと、それは違います。1ヶ月の総労働時間が1ヶ月分の所定労働時間を超えていたら残業代は発生します。

弁護士が残業代請求について相談に乗ってくれる

 計算をしてみて残業代が発生するようでしたら、労働者は、未払いの残業代を請求することが出来ます。そのためには、まずは弁護士に相談することが有効な手段です。弁護士なら残業代の計算から請求の手続まで、その人にあった的確なアドバイスをしてくれます。そして残業代を裁判で回収するケースになれば、弁護士は裁判の際も代理人として本人の代わりに活動してくれます。

 また、未払い残業代の請求は請求した日から過去2年(24ヶ月)までしか遡れないという時効制度があります。そのため、退職まで待ったりすると時効で請求が出来ない可能性があるので早めに行動することをお勧めします。

まとめ

 事業場外みなし労働時間制について理解が深まったでしょうか。
 仕事量が多く長時間の労働になりがちな人は、不当に残業代が支払われていない可能性が高いです。その場合は残業代の請求を考えた方がよいです。そのためにはまず、残業代の請求が出来るよう、こちらを見て準備をしてみましょう。

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残業代請求弁護士ガイド 編集部

残業代請求に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 ぜひ残業代請求の参考にしてみてください。 悩んでいる方は一度弁護士に直接相談することをおすすめします。 今後も残業代請求に関する情報を発信して参ります。

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