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未払い残業代請求の時効は「5年」ではなく「3年」:その理由とは?

更新日:2020年06月03日
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 2020年4月、未払い残業代請求の消滅時効(一定期間が経過することによって権利が消滅すること)の期間が2年から3年に延長されました。なぜ3年に延長されたのでしょうか。

残業代請求の消滅時効期間は2年

 そもそも、なぜ未払い残業代請求の消滅時効は2年だったのでしょうか。
 それは、労働基準法115条で「残業代を含む賃金関係の請求権は2年で消滅時効にかかる」と定められているためです。
未払いの残業代が発生して2年が経過すると回収出来なくなります。

5年ではなく3年になった経緯

 そんな中、2020年4月に民法改正が施行され、債権の消滅時効期間が原則5年に統一されます。債権と見なされる残業代請求権も5年に延長するべきではないか、という議論がなされるようになりました。
 しかし、実際に延長された期間は3年です。なぜ5年ではなく3年なのでしょうか。それは、次のような経緯があったためです。

【経緯①】労働者側は5年にするよう求めていた

 改正前の民法第174条では、「賃金債権の時効消滅は1年」と定められていました。それにしたがい、元々の残業代請求の消滅時効も1年でした。
ですが、1年では短すぎるという反発を受けて、労働者を保護する目的で、労働基準法第115条で「この法律の規定による賃金(退職金を除く)、災害補償その他の請求権は2年間」と定めたのです。
 つまり、残業代請求の消滅時効2年は、民法ではなく労働基準法で定められていたのです。

 そんな中での今回の民法改正。「賃金債権の時効期間は1年」と定められた民法174条は削除され、「賃金債権の時効期間は5年(民法第166条)」に延長されました。

 ともなれば、本来、民法によって時効期間が定められていた残業代請求権も5年になるべきである、と労働者側は求めていたのです。

【経緯②】企業側は従来通り2年を主張

 対して、企業側からは「 5年は負担が大きすぎるので、従来通り時効期間は2年のままでいい」という主張が多く寄せられました。
 それもそのはず。これまで最長2年分の未払い残業代の支払いで済んでいたのが、2.5倍の期間に当たる5年分も支払わなければならないためです。
 負担を考えたら、企業が5年に反対するのは無理もありません。

【経緯③】折衷案の3年

 双方の意見は対立していました。そこで国は、企業側に配慮しつつ労働者の意見も取り入れて、消滅時効は当面3年とする折衷案で話をまとめたのです。

 以上のように経緯で、残業代請求の消滅時効は「当面3年」に改定されたのです。

今後、3年から5年に延長される可能性

 しかし、あくまでも「当面3年」です。これは暫定的な措置と言えるでしょう。本来は民法で定められている債権の時効期間5年に残業代請求の時効消滅も合わせるべきと考えられているためです。

 そこで、2020年4月の民法改正施行後、国は「今後5年間の様子を見て、残業代の時効期間を5年へ延長するかどうかを検討する予定」と表明しました。

 5年後の2025年には、残業代の消滅時効を5年にするかどうかの議論が活発になるでしょう。企業側の反発が強ければ3年で継続されるかもしれません。ですが、労働者側が時効延長の声が多く寄せられれば、5年に延びる可能性も十分に考えられます。

 今後どのような動きになるのか、注目されます。

3年分を請求出来るのは2023年4月以降

 2020年4月1日になったら、直ちに過去3年分の未払い残業代を請求出来ると考える方もいるのではないでしょうか。
 しかし、3年の消滅時効が適用されるのは、2020年4月以降に支払われる賃金です。例を挙げて説明していきます。

■2020年4月に未払い残業代を請求した場合
請求が可能な期間は2018年4月~2020年3月の2年間

■2021年4月に未払い残業代請求をした場合
請求が可能な期間は2019年4月~2021年3月の2年間

■2022年4月に未払い残業代請求をした場合
請求が可能な期間は2020年4月~2022年3月の2年間

■2022年10月に未払い残業代請求をした場合
請求が可能な期間は2020年4月~2022年9月の2年6ヶ月間

■2023年4月に未払い残業代請求をした場合
請求が可能な期間は2020年4月~2023年3月の3年間

つまり、労働者が3年分の未払い残業代を請求出来るのは、2023年4月以降になります。

現時点でも3年まで遡って未払い賃金請求が認められるケースあり

 さて、2020年時点では未払い残業代を請求出来るのは2年分です。しかし、過去の判例では、3年分の未払い残業代請求を命じられた例もあります(杉本商事事件・広島高裁平成19年9月4日)。
 これは、会社が意図的に労働時間を把握しない等の事実が見受けられ、民事法上の「不法行為」が認められました。それにより、損害賠償請求権の時効である「3年」が適用されたのです。

まとめ

 残業代請求の消滅時効は3年に延長されたことにより、会社の負担は大きくなりました。ですが、働いた分をもらうことは労働者にとって当然の権利です。支払われずにいた賃金の請求期間が2年から3年になるのは、よい方向に進んでいると言えるのではないでしょうか。
 労働者の不当に支払われない悩みが少しでも減ることをお祈り申し上げます。

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