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僧侶の未払い残業代に見る宗教法人に勤務する職員の労働基準法の適用可否

更新日:2020年08月11日
僧侶の未払い残業代に見る宗教法人に勤務する職員の労働基準法の適用可否のアイキャッチ

 2017年4月、伝統仏教教団「真宗大谷派」が本山・東本願寺で雇用する僧侶に残業代を支払わず、最長で1ヶ月130時間の残業を強いたことがニュースになったことにより、宗教法人に勤務する職員の長時間労働問題が明るみになりました。
 一般企業であれば、残業をしたら残業代が発生するのは当然ですが、宗教法人で働く職員は、仕事の性質上、労働基準法が適用されるかどうかの基準が難しく、残業をしても残業代が発生しないケースは間々あります。

 そこで、今回は宗教法人で働く職員に残業代が発生するかどうかを、僧侶の未払い残業代問題のニュースから紐解いていきたいと思います。

僧侶の未払い残業代問題

 冒頭のニュースでは、伝統仏教教団「真宗大谷派」が勤務していた非正規雇用の男性僧侶2名に、2013年11月から2017年3月までの未払い残業代、計660万円の支払って決着がつきました。
 この事件はなぜここまで、未払い残業代が膨れ上がったのでしょうか。

 この事件が起きた原因は、「修行」と「労働」の線引きが曖昧な僧侶の仕事の性質が関係していたのです。
 2人の僧侶の職種は「補導(ほどう)」です。補導の仕事内容は、泊まりがけで奉仕に訪れる門徒(もんと:同じ宗派を信仰している人)を東本願寺境内の研修施設で世話をする係です。夜の講義や座談会、早朝の勤行(ごんぎょう)等にも同席します。

 大谷派の主張は、「僧侶というのは出家(世俗の生活を捨てた)人だから、雑務は修行であって仕事ではない。したがって、本来給料は出ない。未払い残業代などはもっての他。」でした。

宗教法人と労働基準法

 宗教法人の職員に労働基準法が適用されるかどうかについては、厚生労働省は、昭和27年2月5日に「宗教法人又は宗教団体の事業又は事務所に対する労働基準法の適応について」という行政通達によって、3つの観点から判断するとしています。
この行政通達では、宗教法人で働く人のうち、労働基準法が適用されるかどうかの線引きについて明記しています。

宗教上の儀式、布教等に従事する者、教師、僧職等で修行中の者、信者であって何等の給与を受けず奉仕する者等は労働基準法上の労働者ではないこと。

②一般の企業の労働者と同様に、労働契約に基づき、労務を提供し、賃金を受ける者は、労働基準法上の労働者であること。

③宗教上の奉仕乃至修行であるという信念に基づいて一般の労働者と同様の勤務に服し賃金を受けている者については、具体的な労働条件就中給与の額、支給方法等を一般企業のそれと比較し、個々の事例について、実情に即して判断されたいこと。

以上を要約すると以下のように言えるでしょう。

①神職(神社に仕えて神事に従う者)は、労働基準法が適用されない
②労働契約に基づき労務と引き換えに賃金を受け取る者は、労働基準法が適用される
③一般の労働者と同様、賃金を受け取りながら宗教上の奉仕または修行をしている者は、労働条件や給与形態によって労働基準法が適用されるかどうかが判断される

僧侶と労働基準法の適用

 では、僧侶の場合は労働基準法は適用されるのでしょうか。
 僧侶は、一般的に「お寺に対して労務を提供する代わりにお寺から報酬として賃金をもらう」という関係が成り立っています。、そのため、②に該当すると考えられ、労働基準法が適用される可能性があります。
 そのことから、今回の事件では未払い残業代の支払いが命じられたと考えられます。

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