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これで解決!変形労働時間制の残業代の計算方法のアイキャッチ

これで解決!変形労働時間制の残業代の計算方法

これで解決!変形労働時間制の残業代の計算方法のアイキャッチ

様々な働き方が増えるに伴い、フレキシブルに労働時間の調整が可能な変形労働時間制を導入する会社が増えています。厚生労働省が平成29年に発表した「就労条件総合調査」のよると、変形労働時間制を採用している会社は57.5%と過半数を占めているのです。

しかし、複雑な仕組みの変形労働時間時間制を悪用して不当に残業代を支払わない会社は少なくありません。
 そこで、正しい変形労働時間制の残業代の計算方法についてお伝えしたいと思います。

「法定労働時間」と「36協定の上限」

 労働基準法では、労働者に「原則、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えた労働をさせてはならない」という規定があります。これは、長時間労働から労働者を守るためです。
法定労働時間を超えた時間外労働をさせたい場合は、労使間(労働者と会社の間)で36協定を結んだ上で、割増賃金を支払わなくてはなりません。

 しかし、36協定を結んだとしても制限なく労働させることは出来ません。36協定では下記のように法定労働時間を超えた時間外労働(残業)の上限が設けられています。

【法定労働時間を超えた時間外労働の上限】

  上限
1週間 15時間
2週間 27時間
3週間 43時間
1ヶ月 45時間
2ヶ月 81時間
3ヶ月 120時間
1年間 360時間

上記の各上限内であれば労働者に時間外労働をさせることが可能です。
 但し、時期によって労働時間が極端に増え、上限内に時間外労働を抑えることが難しい業態もあります。そんな業態に応えるためにつくられた制度が変形労働時間制なのです。

変形労働時間制とは

 変形労働時間制とは、1週や1ヶ月、1年といった一定に期間でみた際に、平均の労働時間が法定労働時間を超えていなければ、特定の日(週)に1日8時間(1週40時間)を超えた労働をしても時間外労働と見なさない、という制度のことをいいます。
 つまり、一定期間で平均したときに法定労働時間を下回っていれば残業代の支払いが必要ないのです。

 そのため、建設業等の繁忙期と閑散期が発生する業態等では、変形労働時間制を導入して残業代を抑えています。
 変形労働時間制では、以下のように法定労働時間を超えた時間外労働の上限が設けられています

【法定労働時間を超えた時間外労働の上限】

上限
1週間 14時間
2週間 25時間
3週間 40時間
1ヶ月 42時間
2ヶ月 75時間
3ヶ月 110時間
1年間 320時間

変形労働時間制を導入出来る条件

但し、変形労働時間制は例外の規定になるため、以下2つの条件を満たさなければ導入することは出来ません。

【導入条件①】一定の項目を定めた労使協定を結ぶ

主に下記に列記する項目を労使協定(労働者と会社の間で交わす書面による協定)で定めることで、変形労働時間制の導入が可能になります。


・導入する期間について
・変形労働期間中の労働日や休日、労働時間について
・労使協定の有効期間

【導入条件②】労働基準監督署に届出をする

また、変形労働時間制を導入することを労働基準監督署に届出する必要があります。ですので、届出をせず「以前から変形労働時間制を導入していました」と言ったとしても効力を発揮しません。

3種類ある変形労働時間制

変形労働時間制は、


・1年単位の変形労働時間制
・1ヶ月単位の変形労働時間制
・1週単位の変形労働時間制

の3種類あります。いずれも、繁忙期に労働力を集約させて閑散期に労働時間を減らす等して、対象期間内での労働時間の削減を目的としています。

【種類①】1年単位の変形労働時間制

「1年単位の変形労働時間制」とは、1ヶ月以上、1年未満で労働時間を設定する制度を指します。年間の平均労働時間を1日8時間・1週40時間にするための制度です。
1年単位の変形労働時間制については、労働基準法32条では次のように定められています。

労使協定を締結し、対象期間として定められた期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、特定された日又は特定された週に法定労働時間を超えて労働させることが出来る

つまり、「会社が1ヶ月以上1年未満で期間を定め、その期間中を平均した際、1週間の労働時間が40時間以内であれば、業務の閑散に応じて労働時間や労働日数を分配することを認める」ということになるのです。
シーズンごとに繁忙期・閑散期がある会社は、1年単位で就業時間を設定する変形労働時間制を採用しているケースが多いです。

但し、閑散期にまとまった連休を取り繁忙期に全く休日がない、といったことが起こらないように以下のような制限が設けられています。

年間労働日数 280日まで
労働時間数 365日…2085.7時間以内

366日(うるう年)…2091.4時間

6ヶ月(183日の場合)…1045時間

4ヶ月(122日の場合)…697.1時間

3ヶ月(92日の場合)…525.7時間

年間休日 85日以上
1日の労働時間 10時間まで
1週間の労働時間 52時間まで
原則連続で労働出来る日数 連続6日
特定的に連続で労働出来る日数 1週間に1日の休み(最大連続12日)

1年単位の変形労働時間制を導入出来る条件

1年単位の変形労働時間制を導入するには、労使協定で以下の(1)~(3)を定める必要があります。

(1)対象労働者の範囲を定める
「全従業員を対象とする」等、対象者が誰であるかを明記する必要があります。

(2)変形労働期間を1年以内で定め起算日(変形労働がはじめる期間)を決める
期間は1年の他に、3ヶ月や6ヶ月があります。

(3)対象期間内における各週・各日の労働時間を具体的に特定する
シフト表等で期間内の全ての労働日ごとの労働時間を定めなければなりません。
特定方法は次の2種類が考えられます。

【Ⅰ】対象期間内の全労働日の所定労働時間を定める
【Ⅱ】区分期間を設ける方法

(4)労使協定の有効期限
(2)で定めた期間より長い有効期限で労使協定を定める必要があります。1年単位の変形労働時間制を適切に運用するためには、1年程度で有効期限を定めるのが好ましいです。

【種類②】1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月単位で平均労働時間を法定労働時間内に収める制度をいいます。1ヶ月単位の変形労働時間制については、労働基準法32条で下記のように定められています。

1ヶ月以内の一定の期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、当該変形労働時間においては、1日及び1週間の法定労働時間に関わらず、これを超えて労働させることが出来る

この制度は休日や労働時間の制限がないため、休日の少ない会社や長時間労働になりがちな業態が導入する傾向にあります。
また、1ヶ月の労働時間数は以下に収めなければなりません。

1ヶ月の日数 1ヶ月単位の変形労働時間制の上限労働時間 ※()内は常時の労働者数が10名未満の商業等が対象
31日 177.1時間(194.8時間)
30日 171.4時間(188.5時間)
29日 165.7時間(182.2時間)
28日 160.0時間(176.6時間)

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入出来る条件

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定で次の(1)~(3)が定められていなければなりません。

(1)対象労働者の範囲
対象の労働者に制限はありませんが、その範囲を定めなければなりません。

(2)対象期間と起算日
変形労働期間は1ヶ月以内で定め起算日を決める必要があります。対象期間を4週間単位、20日単位等にすることも可能です。
【例】毎月1日を起算日とし、1ヶ月を平均して1週間当たり40時間以内とする

(3)対象期間内における各週・各日の労働時間を具体的に特定する
シフト表等で期間内の全労働日の労働時間を定めます。
例えば以下のように定めます。
・3月1日 9時間 8~18時(休憩1時間)
・3月2日 5時間 9~14時

(4)労使協定の有効期間
(2)で定めた期間より長い労使協定を定める必要があります。1ヶ月単位の変形労働時間制を適切に運用するためには、3年以内程度で有効期限を定めるのが好ましいです。

【種類③】1週単位の変形労働時間制

従業員の数が少なく、閑散期に人数を削減することが難しい小企業等に採用されるのが1週間単位の変形労働時間制です。
1週間単位の変形労働時間制は、対象期間を1週間と一時的に変形労働をさせられるメリットがあります。

例えば、特定の曜日の労働時間を長くする代わりに、他の曜日を短時間勤務にする等の運用方法が挙げられます。

1週単位の変形労働時間制を導入出来る条件

1週単位の変形労働時間制を採用する際は、以下の条件を満たしていなければなりません。

・小売業や旅館、飲食店の事業で、かつ従業員の人数が30人未満のもの

・労使協定で1週間の所定労働時間を40時間以内で定める

変形労働時間制には対象者制限がある

変形労働時間制には次の対象者は制限が設けられています。

妊産婦
妊娠中、または産後1年以内の女性は身体への負担が考慮され変形労働時間制について制限されています。本人からの要望があれば会社は妊産婦を変形労働時間制で働かせることは出来ません。

年少者(15~17歳)
1日8時間、1週48時間を超えなはならないと制限されています。

育児や介護を行っている方
育児や介護の時間を確保するために配慮が求められています。

変形労働時間制と残業

変形労働時間制と残業

それでは、変形労働時間制の考え方についてお伝えいたします。

【考え方①】所定労働時間の繰り越しは出来ない

労使協定で定めた所定労働時間を変動することは出来ません。
例えば、労使協定で所定労働時間を8時間に定めたとします。その場合、9時間働いたとしても「翌日の所定労働時間を1時間減らして残業扱いにしない」という繰り越し処理は出来ません。

【考え方②】残業時間を計算する際は就業時間と照らし合わせる

残業時間を計算する際は、必ず労使協定と照らし合わせながら算出する必要があります。
例えば、所定労働時間が8時間で定められている労働条件で、ある日に10時間働いたとします。その場合、所定労働時間を超えた2時間は残業時間に該当します。
また、ある日には6時間勤務します。その場合は早退扱いになるのです。

【考え方③】所定労働時間が法定労働時間を超えている

そして、労使協定等で定めた所定労働時間が法定労働時間を超えている分に関しては残業扱いになる可能性があります。
法定労働時間を基にした1ヶ月単位と1年単位の労働時間の上限は以下のように定められています。再度ご紹介します。
【1ヶ月単位の変型労働時間制の上限労働時間】

31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

 

【1年単位の変型労働時間制の上限労働時間】

365日 2085.7時間
366日(うるう年) 2091.4時間

1ヶ月単位の変形労働時間制の時間外労働ルール

法定労働時間では1日8時間・1週40時間と、日・週で上限が設けられています。そのことが関係し、 1ヶ月単位の変型労働時間の時間外労働は、日と週、そして変形労働期間でそれぞれルールが定められています。

【ルール①】1日単位の時間外労働

1日単位の時間外労働を計算する場合は次のようなルールが定められています。


・所定労働時間が8時間以上の場合、時間外労働の基準は所定労働時間
・所定労働時間が8時間未満の場合、時間外労働の基準は法定労働時間(8時間)

このルールに則って考えると次のような場合が時間外労働に当たります。

 

合計
所定労働時間 9 9 7 9 6 40
実労働時間 8 9 8 10 9 44
時間外労働 0 0 0 1 1 2

月曜日…実労働時間が所定労働時間よりも少ないため時間外労働は発生しません。
火曜日…所定労働時間と実労働時間が同じため時間外労働は発生しません。
水曜日…所定労働時間を超えた実労働時間ですが、法定労働時間(8時間)以内のため時間外労働は発生しません。
木曜日…実労働時間時間が所定労働時間を超えているため、超過した1時間が時間外労働に該当します。
金曜日…所定労働時間が8時間以下のため、法定労働時間の8時間を基準に時間外労働が算出されます。よって、実労働時間は法定労働時間から超過した1時間が時間外労働に当たります。

【ルール②】1週単位の時間外労働

1日単位と同様、1週間単位の場合も法定労働時間(1週40時間)を基準に時間外労働であるかどうかを算出します。


・所定労働時間が40時間以上の場合、時間外労働の基準は所定労働時間
・所定労働時間が40時間未満の場合、時間外労働の基準は法定労働時間(40時間)

このルールに則って考えると次のような場合が時間外労働に当たります。

1週目 2週目 3週目 4週目 合計
所定労働時間 30 50 30 50 160
実労働時間 35 52 48 48 183
時間外労働 0 2 8 0 10

1週目…実労働時間が所定労働時間を超えていますが、所定労働時間が法定労働時間内のため時間外労働は発生しません。
2週目…実労働時間が所定労働時間を超えているため、2時間が時間外労働に該当します。
3週目…実労働時間が法定労働時間(40時間)を8時間超過しているため、超えた時間分が時間外労働に該当します。
4週目…実労働時間が法定労働時間を超えているものの、所定労働時間を超えていないため時間外労働は発生しません。

【ルール③】変形労働期間の時間外労働

変形労働期間の時間外労働は 1日・1週単位で算出した時間外労働を除いて計算します。そして、そこで法定労働時間を超えて労働した時間が変形労働期間の時間外労働になります。
例えば、1ヶ月の日数が30日の場合、171時間が法定労働時間です。実労働時間が185時間、1日単位の時間外労働時間合計が2時間、1週単位の時間外労働時間が10時間の場合、(185時間-2時間-10時間)-171時間=2時間になります。

1年単位の変形労働時間制の時間外労働

1年単位の変形労働時間制の時間外労働は、前項のルール①②は同じ考え方です。
但し、ルール③の変形労働の全期間に関しては考え方が異なります。変形労働の全期間の時間外労働は下記の算出式を用いて計算をします。

実労働時間―(40時間【1週の法定労働時間】×変形期間の週数)

変形労働時間制の残業代計算方法

では、前出のルール①~③に基づいて、変形労働時間制の時間外労働の計算方法をみていきましょう。
変形労働時間制の時間外労働の計算方法は下記の4ステップに沿って行います。


【ステップ①】…1日単位で時間外労働を特定する
【ステップ②】…【ステップ①】で特定した時間を除外して、1週単位で時間外労働を特定する
【ステップ③】…【ステップ②】で特定した時間を除外して、1ヶ月単位で時間外労働を特定する
【ステップ④】…【ステップ①】+【ステップ②】+【ステップ③】=1ヶ月の総時間外労働賃金

例を交えてご説明させていただきます。以下は1ヶ月の日数が31日で時給1,000円の場合です。

【第1週 所定労働時間40時間】
第1週 所定労働時間40時間
【第2週 所定労働時間36時間】
第2週 所定労働時間36時間
【第3週 所定労働時間42時間】
第3週 所定労働時間42時間
【第4週 所定労働時間38時間】
第4週 所定労働時間38時間
【第5週 所定労働時間17時間】
第5週 所定労働時間17時間

 
エンジ色で塗られた部分が所定労働時間です。
1ヶ月の総所定労働時間は

40(第1週)+36(第2週)+42(第3週)+38(第4週)+17(第5週)=173時間

のため、法定労働時間の177.1時間以内です。ですので、オレンジ部分には時間外労働がありません。
 しかし、白塗りのA~Gの部分は所定労働時間を超えて労働した時間に該当します。A~Gを合わせると総実労働時間は183時間になります。

【ステップ①】1日単位で時間外労働になる時間を特定

 まずは1日単位で時間外労働になる時間を特定していきます。

①8時間を超える所定労働時間を定めた日で、それ以上働いた時間

 所定労働時間が8時間を超えている日で、それ以上の労働をしたのは18日(9時間)と20日(9時間)、30日(9時間)です。その内、20日のEの部分は1日の所定労働時間を超えているため、時間外労働になります。

② ①以外の日で1日の法定労働時間(8時間)を超えて働いた時間

 ①以外で1日の法定労働時間(8時間)を超えて働いているのは27日(9時間)です。ですので、Aの部分が時間外労働に該当します。

【ステップ②】1週単位で時間外労働になる時間を特定

 次に1週単位で時間外労働になる時間を特定していきます。

①40時間を超える所定労働時間を定めた週で、それ以上働いた時間

 所定労働時間が40時間を超えているのは第3週(42時間)です。同週は実労働時間が44時間のため、16日のDの部分が時間外労働に該当します。
 20日のEの部分は「1日単位で時間外労働になる時間を特定」で時間外労働に数えているため、カウントしません。

② ①以外の週で1週の法定労働時間40時間(40時間)を超えて働いた時間

 ①以外で1週の法定労働時間(40時間)をして働いているのは第4週(42時間)です。所定労働時間を4時間超えていますが、「1週単位で時間外労働になる時間を特定」で時間外労働に数えられているAの部分は除外します。
 するとBの部分は法定労働時間の範囲に収まっているため、時間外労働には当たりません。よって、Cのみが時間外労働に該当します。

【ステップ③】1ヶ月単位で時間外労働になる時間を特定

 続いて、これまで特定した時間外労働を除いて、1ヶ月の総労働時間を算出すると下記のようになります。

第1週…40時間
第2週…40時間
第3週…D、Eを除外して42時間
第4週…A、Cを除外して40時間
第5週…17時間

40+40+42+40+17=179時間になります。31日の法定労働時間の177.1時間を1.9時間超えています。そのため、31日のHの部分が時間外労働に当たります。但し、ここで算出された時間外労働に対しては、割増の25%の部分のみ賃金が発生します。

【ステップ③】合計して時間外労働賃金を算出する

 では、時間外労働を合計していきます。

A+C+D+E+H=5.9時間

時間外労働に関しては25%割増になります。
 また、13日のFと14日のG、28日のBは時間外労働ではなく法定時間内残業に該当するため割増賃金の発生はありません。

 これらを考慮して計算をすると、残業代は次のようになります。

【A・C・D・E】時給1,000円×4時間×1.25=5,000円
【H】時給1,000円×1.9時間×0.25=475円
【B・F・G】時給1,000円×6時間=6,000円
5,000円+475円+6,000円=11,475円

実労働を伴わない時間は所定労働時間から控除する

実労働を伴わない時間は所定労働時間から控除する
変形労働時間の計算をするためには、1つ留意しなければならないことがあります。それは実労働を伴わない時間は所定労働時間から控除することです。
例えば、有給休暇を取得した月の場合は、休暇を取った時間分を1ヶ月の所定労働時間から差し引きます。所定労働時間が176時間だったとします。実労働時間が176時間、有給休暇を1日(8時間)とったとします。
 そのような場合、時間外労働は以下のように計算されます。

176(実労働時間)-[176(所定労働時間)-8(有給休暇)]=8時間

 有給休暇の他に半休や欠勤、遅刻、早退等、実労働を伴わない時間は所定労働時間から控除されます。
 また、1度発生した時間外労働を半休や遅刻・早退等で相殺することは出来ません。

違法な変形労働時間制

 変形労働時間制は、業務量に応じた労働時間の設定が出来るため人件費のコストが期待出来ます。労働者にとっても仕事は少ない時期は労働時間を減らし、業務が増えた際には集中して働く、といったメリハリのある働き方が可能です。

 しかし、一方で変則的な働き方を悪用し違法に残業をさせられているケースは少なくありません。

所定労働時間があやふやにされる

 所定労働時間を曖昧にして違法に残業をさせている会社は少なくありません。
 例えば、1日の所定労働時間を6時間と10時間の2パターン設定されている変形労働時間制があるとします。その場合、就業規則等で周知されている必要があります。
 しかし、それをせず毎日10時間労働を強いられ残業代が支払われないことがあります。
 このようなケースは違法の可能性は否定出来ません。

所定労働時間が法定労働時間を超過している

 労使協定で設定した所定労働時間が法定労働時間を超過している場合も違法の可能性があります。
 そのような場合、たとえ会社で定めた基準では残業でなくても、法定労働時間を超えた労働時間に対しては残業代が支払われなくてはなりません。

 また、労使協定で年間休日が法的に定められた基準より少ない場合も違法の可能性が考えられます。

変形労働時間制の残業が払われなかったら

 変形労働時間制は前述の4ステップを踏んで、給与計算がされるため複雑です。そのため、複雑さを悪用して残業代の支払いから免れるケースは少なくありません。
 そのような場合は違法の可能性があります。

変形労働時間制で未払いの残業代を請求する方法

法定労働時間を超えた労働を強いられている変形労働時間制の方は、残業代の計算をすると未払いの残業代が多額であることに気付く方も少なくありません。
 もちろん、今までに支払われていなかった残業代を請求することは可能です。

 とはいえ、未払いの残業代を請求するためには、残業をした証拠が必要です。これは立証責任(確実な証拠で証明する責任)が請求者にあるためです。変形労働時間制の場合、勤怠管理等で正確な労働時間を把握していないケースは少なくありません。
 そのような場合は、以下に列記したものも実労働時間を把握する証拠になり得ます。

・業務用メールの送受信履歴
・日記等の備忘録
・日報や週報
・勤怠表
・業務日誌
・オフィスビルへの入館記録

 まずは、以上の証拠になり得るものを入手したうえで、下記の記事を読んでみてください。残業代請求に向けてするべきことが理解出来るでしょう。

終わりに

 世の中には様々な業態があり、土日出勤やシフト制、夜勤等のカレンダー通りに労働をしない仕事は多くあります。
 得てしてそのような仕事ほど「うちの業界は休みが少ない、労働時間が長い」ことが当たり前になり労働環境は過酷です。

とはいえ、どの仕事にも法的に労働時間の上限が決められています。上限を超えた労働に対しては残業代が支払われなければなりません。もし違法に残業をさせられているようであれば残業代の請求を検討してみてください。

 また、変形労働時間制を自動計算してくれるエクセルソフトも用意されています。あなたの変形労働時間制の計算が合っているか確認したい方はコチラから計算してみましょう。

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編集部 (弁護士)編集部

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