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医師必見!残業代請求は労働環境を良化するのアイキャッチ

医師必見!残業代請求は労働環境を良化する

医師必見!残業代請求は労働環境を良化するのアイキャッチ

近年、従業員に対し劣悪な環境での労働を強いるブラック企業が大きな問題となっていますが、この問題は、医師業界も例外ではありません。
 病院に勤務する医師は通常勤務の後、当直を継続して行い長時間労働を強いられているのが現状です。

 しかし、当直でも場合によっては残業代が出ることをご存知でしょうか?今回は、医師の当直残業についてご説明させていただきます。

当直とは

 当直とは、当番制で宿直あるいは日直を担当することをいいます。宿直は、所定労働時間(労働時間を1日8時間または1週間で40時間以内にするという規定)とは別に、救急患者の外来等の緊急事態に対応出来るよう、夜間に病院に泊まり込みをすることです。また、日中に病院で待機をすることを日直といいます。
入院施設がある病院では、医療法によりこの当直が義務付けられているのです。

 また、当直に該当する条件は以下の5つであると労働基準法41条で定められています。

➀医療行為・外来対応を行う必要がほとんどないこと
②日勤業務の延長ではないこと
③仮眠休憩設備があること
④手当が支払われること
⑤1週間に1回以内であること

当直は、あくまでも医療行為を行うために拘束される時間ではないため、15時間拘束も許可されているのです。

 しかし実際のところは、「医療行為・外来対応を行う必要がほとんどない」当直でなく、通常に近い業務をこなすことが少なくないのが現状です。

勤務医の労働時間の実態

 病院で働く勤務医は、当直があることから長時間労働になりがちです。「国立保健医療科学院タイムスタディ」の調査によると、勤務医がどれほどの長時間労働をしているのかは下記グラフのような結果となりました。

【勤務医の1週間の労働時間数】

出典元:http://www.huffingtonpost.jp/koichiro-yuji/post_4867_b_3363253.html
画像:zangyo_ishi1

 このグラフは、アンケートの結果ではなく、労働時間を厳密に測定したものであるため実労働時間の結果です。過労死認定基準(過労死ライン)にあたる週60時間以上もの労働をしている勤務医が、女性は50歳前まで、男性は60歳過ぎまでいます。

このことから、医師業界では過労死ラインを超えて働くことが当然のこととされているのです。本来、当直は日中業務の延長ではないにも関わらず、通常業務の後も継続して夜間の宿直を行う36時間連続勤務ということが日常茶飯事になっています。

 ではなぜ、連続36時間勤務のような長時間労働が恒常化しているのでしょうか。それは、医師不足が大きな要因となっています。それにより、交代勤務を前提とした医師数が雇用されなかったり、交代で休みを取ることが不可能だったりとするため、過労死ラインを超えた労働を強いられているのです。
 また、交代要員が不足していることから、当直であっても事実上は通常に近い業務をこなさざるを得ないのです。

医師は管理職ではない

 医師は病院に雇われている労働者です。したがって、医師にも当然、労働基準法が適用されます。そのため、労働時間に対して残業代が支給される権利が医師にもあるのです。

しかし、病院によっては、「医師は管理職に当たる」という理由で、残業代の支払いから逃れようとする風潮があります。確かに、医師は医療行為をするにあたっては、他の医師や看護士等に指示を出すため、その行為は一見、管理監督と言えそうです。
 
 しかし、労働基準法41条で規定されている管理職というのは、人事労務の指揮監督権限があることや、自己の労働時間をコントロールする権限が与えられている者のことを指します。そのため、医療行為の管理監督する医師は管理職には該当しないのです。

→管理職については「こちらの記事」で詳しく説明をしています。

 よって、医師は残業代を支給される権利があるのです。

当直は労働時間に該当するのか

ここで重要となるのが、当直が労働時間に該当するかどうかということです。当直が労働時間であると見なされれば時間外労働は大幅に増えます。
 では、当直が労働時間と見なされるケースというのはどのような時を指すのでしょうか?以下の判例を見てみましょう。

三菱重工業長崎造船所事件(平成12年3月9日)最一小判
労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することが出来るか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものでないと解するのが相当である。

この裁判は、作業に入る前の「着替え・散水の時間が労働時間に該当するかどうか」が争われた事件でした。当直とは異なりますが、労働時間に当たるかどうかの判断する基準となります。

 この判例によれば、「使用者(病院)の指揮命令下に置かれている時間」が労働時間であるとされています。
当直は医師が自主的にやっているものではなく、病院からの指示により当番制で行っているものです。このことから当直は、「病院の指揮命令下に置かれている時間」=「労働時間」と言えるでしょう。

不活動仮眠時間が労働時間に当たるのか

 当直の中で、宿直の場合は仮眠時間が設けられていることがあります。この仮眠時間中に、緊急の業務が発生して実際に対応をしたのであれば、その時間は労働時間に該当します。
 一方で、業務を行わなかった不活動仮眠時間は労働時間に該当しないのでしょうか。これに関しては、以下の判例を見てみましょう。

星ビル事件(平成14年2月28日)最一小判
不活動仮眠時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということは出来ず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することが出来る。したがって、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には、労働基準法上の労働時間に当たるというべきである。そして当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。

 この判決では「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には、労働基準法上の労働時間に当たるというべき」としています。このことから、緊急の業務が発生したら対応しなければいけない医師の不活動仮眠時間は、労働からの解放が保障されていないと言えるため、労働時間に該当すると考えられます。

当直の「労働基準法規定の適用除外」

 前項で「当直は労働時間に該当すると考えられる」と述べましたが、ここからがポイントです。

実は、当直を労働時間から除外出来る制度があるのです。

労働基準法施行規則23条において、「断続的労働」に該当している場合に限り、労働時間や休憩、休日の規定がない「労働基準法規定の適用除外」という制度を、病院が利用することが出来ます。但し、この制度を利用するためには行政官庁(労働基準監督署長)からの許可が必要です。
 「労働基準法規定の適用除外」では、断続的な時間外・休日労働であれば、残業代や休日手当等は発生しません。一般的に、病院ではこの制度の適用許可がおりています。

 では、「断続的労働」というものはどういったものなのでしょうか。これは労働基準監督署長からの行政通達で基準が設けられています。
 「断続的労働」は、業務自体が途切れ途切れ行われるものであり、かつ、待機時間が長い労働を指す。
例えば、定期的巡視、緊急の文書や電話の対応、非常事態に備えての待機等を目的としたものに限って「断続的勤務」が該当します。

断続的勤務に該当しない当直の場合

 しかし、「労働基準法規定の適用除外」の認可がおると、病院は残業代の支払いから逃れるために、事実上、断続的労働に該当しない勤務を医師に強要していることがあります。

そのため、客観的に見て当直が「断続的勤務」に該当しない場合はサービス残業をさせられている可能性があるのです。

 過去の判例(奈良病院事件判決・大阪高裁平成22年11月16日)において、労働基準監督署長から「労働基準法規定の適用除外」の許可を受けているものの、実態は断続的労働とは言えないとして、病院側に当直の全てに対して残業代を支払うように命じたケースがあります。

 したがって医師は、当直が断続的勤務に該当しないと考えられるのであれば、サービス残業をさせられている可能性があるのです。では、この場合の未払いの残業代請求を検討してみましょう。

医師の残業代請求には証拠の確保が必要

 未払い残業代を請求するためには、残業をした証拠が必要です。これは立証責任(確実な証拠で証明する責任)が請求者にあるためです。
 医師は、実労働時間が分かる以下のようなものが残業証拠として挙げられます。

・タイムカード
・業務記録
・医療記録
・カルテ等
・病院への入退室記録
・パソコンのログデータ(ログの取得方法については「こちらの記事」で詳しく説明をしています)

まずは、以上の証拠になるものを入手したうえで、こちらの記事「会社に荒波を立てずに残業代を請求する方法」を読んでみてください。残業代に向けてするべきことが理解出来るでしょう。

まとめ

 当直を労働時間扱いにされず、サービス残業を余儀なくされている医師は少なくありません。無理にでも長時間労働をしている医師は非常に多いです。

 しかし、無理をして長時間働くことは、業務効率や、医師としてのパフォーマンスの低下につながります。過度な長時間労働になっているのであれば、思い切って未払いの残業代を請求し、現在の医師に重圧と負担がかかるシステムを病院に再考させるきっかけとなるかもしれません。

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