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不当なみなし残業の廃止:無周知と不利益変更は法律違反

更新日:2019年04月02日
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 実際の労働時間に関わらず、あらかじめ決められた時間分の残業代が支払われる「みなし残業代制」。残業時間の管理や残業代の計算等をする手間が省けるというメリットがあるため、みなし残業を取り入れる企業は多いです。

そんな中、人件費の削減が叫ばれ、その対象はみなし残業代制の労働者に及んでいます。
とりわけ、事前に決めた残業時間を働いていない労働者を擁している会社は、みなし残業代制を廃止している傾向があります。

 ただ、このみなし残業に廃止により給与が減る等、労働者に不利益を被るケースが発生し、問題になるケースがあります。果たして、それは違法に当たらないのでしょうか。

みなし残業の廃止に関わる法律

みなし残業の廃止については、ある法律が関わっています。それは労働契約法です。労働契約法では、労働契約に関する基本的な事項が定められています。

労働契約法第9条によると、「使用社(会社)は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは出来ない」のです。

 分かりやすく、同条を「①労働者と同意することなく、就業規則を変更することは出来ない」という部分と、「②就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは出来ない」という部分に分けて説明させていただきます。

①労働者と同意することなく、就業規則を変更出来ない

 これは労働契約法第8条の「労働者及び使用者は、その合意により労働契約の内容である労働条件を変更することが出来る」という規定に基づいています。
 つまり、会社は労働者の同意なしにみなし残業の廃止をすることは出来ないのです。

②就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは出来ない

 会社はみなし残業を廃止する際、給与が減給する等、労働者に不利益が被る変更をしてはなりません。これを不利益変更と言います。

違法の可能性があるみなし残業の廃止

上記の①②を踏まえると、次の3パターンのどれかに該当するみなし残業の廃止は、違法の可能性が考えられます。

●会社から周知がなかったみなし残業の廃止
●会社から周知はあったが、労働者が不利益を被るみなし残業の廃止
●会社から周知もない上に、労働者が不利益を被るみなし残業の廃止

 以上の3パターンに該当する場合は、不当なみなし残業の廃止と見なされる可能性があります。

不利益変更でも許される場合

 但し、上記の3パターンに該当したとしても、必ず不当なみなし残業の廃止になるとは限りません。次の2通りに該当する場合は、正当なみなし残業の廃止に該当しない可能性があります。

経過措置

 一定期間の経過措置を設ければ違法に当たらない可能性があります。
 経過措置とは、みなし残業の廃止で不利益変更が生じる労働者に対し、著しく給与が減額にならないように、一定期間手当を支給する措置のことをいいます。
 経過措置の期間について、法律では定められていません。

合理性を有している

 労働契約法10条では「労働条件の変更について、合意性を有する場合は労働者の同意なく就業規則を変更することが出来る」という内容が記されています。例えを用いて説明します。

 70人いる会社で全員が30時間分のみなし残業代が支払われているとします。しかし実際は、30時間分の残業をしている社員はいなく、平均の残業時間は10時間です。そのため、労働者の合意なくみなし残業代制を廃止しました。

 このような場合、「労働条件の変更について、合意性を有する場合は労働者の同意なく就業規則を変更することが出来る」に該当する可能性があります。
というのも、そもそも残業代は実際の残業時間に基づいて支払われるべきものです。この場合、実際に働いていない分の残業代まで支払われていることになります。その分を支払わずに済むよう、会社がみなし残業代の廃止をする行為は合理性を有していると考えることが出来るのです。

様々なみなし残業の廃止

 みなし残業の廃止には様々なケースが考えられます。「このような場合は、不当なみなし残業の廃止に当たるかどうか」が分からなくなるケースが多いと考えられます。
 ケース別にみてみましょう。

【ケース①】減額分に対して経過措置が短い

●1ヶ月に5時間ほどの残業しかしていなかったが、みなし残業代を毎月30時間支払われていた
●みなし残業の廃止に際して、経過措置として15時間分の残業代が半年間に渡って支払われた

 上記の場合、経過措置が支払われるとはいえ、元々30時間分の残業代が支払われていたのが15時間分に減額したため差額が大きいです。経過措置の期間について、法律で規定はありませんが、差額が大きいので数年程度の経過措置が必要と考えられます。

【ケース②】何時間分のみなし残業が支払われていたのか不明

●基本給25万円(みなし残業代5万円を含む)といったように、何時間分のみなし残業代が支払われていたのか不明だった中、みなし残業が廃止された

 会社がみなし残業代制を導入する場合は、就業規則や雇用契約書、労働条件通知書等の書類に、「月額30万円(45時間分のみなし残業代8万円分を含む)」といったように、あらかじめ決めたみなし残業時間と金額の内訳を記載する必要があります。
 記載されていない場合は違法の可能性があります。

違法なみなし残業代の廃止の場合は弁護士に相談を

 不当なみなし残業の廃止で苦境の立たされているようでしたら弁護士に相談をしてみてください。そのみなし残業の廃止が違法なのかどうかや、今後どのようにすればよいか等のアドバイスをもらえるでしょう。苦しんだままにいず、まず弁護士に相談してみることをオススメいたします。

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残業代請求弁護士ガイド 編集部

残業代請求に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 ぜひ残業代請求の参考にしてみてください。 悩んでいる方は一度弁護士に直接相談することをおすすめします。 今後も残業代請求に関する情報を発信して参ります。

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