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残業代を計算する際の「時給」の求め方

2018年09月25日 公開
残業代を計算する際の「時給」の求め方のアイキャッチ

残業代を求める際、次の計算式で算出することが出来ます。

「時給(1時間あたりの賃金)×割増賃金×残業時間」

 残業代を計算するためには、まず時給(1時間あたりの賃金)を算出する必要があります。月給制等で働く正社員の方は、特に自身の時給を把握していないのではないでしょうか。
そこで、本記事では時給の求め方についてお伝えいたします。

月給の場合の時給の算出方法

 はじめは、月給制の場合を例にして時給の算出方法をご説明させていただきます。月給制では次の計算式で時給を求めることが出来ます。

時給=基礎賃金÷月間平均所定労働時間

 「基礎賃金」と「月間平均所定労働時間」は、どのように求めることが出来るのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。

「基礎賃金」の求め方

 労働基準法37条では、「基礎賃金」について以下のように定められています。

家庭手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。

 

1.別居手当

2,子女教育手当

3.住宅手当

4.臨時に支払われる賃金

5.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

つまり、基礎賃金とは給与から手当等を除外した額をいいます。
しかし、手当の種類によって除外の可否が異なります。これは、個人的事情で支払われる手当かどうかで判断されます。

除外される手当

 例えば次に紹介する手当の場合は除外されます。

■家族手当
 家族手当とは、配属者や子供のいる社員に対して支払われる手当です。別称、扶養手当もしくは子女教育手当とも呼ばれています。

■通勤手当
 通勤手当とは、言うまでもなく会社への通勤にかかる費用に対して支払われる手当のことを指します。
 営業職の人が、クライアント先に訪問する際にかかった交通費も通勤手当に含まれます。

■別居手当
 別居手当とは、扶養している家族と転勤等で別々に暮らさなければならない従業員に対し、別居に伴う生活費の増加分を補うために支給される手当のことを指します。別称、単身赴任手当とも呼ばれています。

■住宅手当
 住宅手当とは、会社が従業員の生活に配慮し住宅費用を支給する手当のことを指します。会社が家賃の一部を負担する場合や、従業員の持ち家の住宅ローン返済を補助する場合等に、この住宅手当は支給されます。

■結婚手当
 結婚手当とは、言うに及びませんが入籍した際、結婚祝いとして支払われる手当のことを指します。

■半年または1年に1度等の頻度で支払われる手当
 勤務手当や精勤手当、奨励加給手当、能率手当、ボーナス等が、半年または1年に1度等の頻度で支払われる手当に該当する可能性があります。

除外されない手当

 一方で、以下のような手当は、会社側が考慮して支払っている性質が強いため、除外されないでしょう。

■地域手当
 地域手当とは、都市部等物価が高い一定の地域に勤務する従業員に対して支払われる手当のことを指します

■役職手当
 部長や課長等、役職に付いている従業員に対して支給される手当が役職手当です。この役職手当は、役割や責任の重さ等に対して支払われます。

■職務手当
 職務手当とは会社が必要とする”特別な職務”に就く従業員に対して支払われる手当のことを指します。特別な技術や資格を保有する従業員等を対象に、この職務手当が支払われるケースが多いことから、資格手当、あるいは技術手当と呼ばれることもあります。

基礎賃金の計算例

 ここで、Aさんを例に挙げて、基礎賃金を算出してみます。

Aさんの月給は265,000円です。その内訳は、

基本給210,000円
地域手当40,000円
住宅手当10,000円
通勤手当5,000円

です。
住宅手当と通勤手当は基礎賃金から除外されます。よって、Aさんの基礎賃金は以下のように計算されます。

265,000-10,000円-5,000円=250,000円

「月間平均所定労働時間」の求め方

 続いて、「月間平均所定労働時間」の求め方についてご説明させていただきます。
 「月間平均所定労働時間」は次の計算式で算出することが出来ます。

{(365日―年間所定休日)×1日の所定労働時間}÷12ヶ月

 「年間所定休日」と「1日の所定労働時間」の確認方法をそれぞれお伝えします。

「年間所定休日」の確認方法

 「年間所定休日」とは、各会社が定める年間の休日日数のことをいいます。「年間所定休日」は、土・日曜日等、1週間に定める休日に加え、次のような休日によって日数が決定されます。


◇土・日曜日
◇祝日
◇ゴールデンウィーク
◇お盆休み・夏季休暇
◇年末年始休み・冬期休暇
◇創立記念日等の会社が独自で定めた休日

 「年間所定休日」の定めについては、就業規則や雇用契約書等の書面に記載されています。一般的に、年次有給休暇は「年間所定休日」に含まれません。

「1日の所定労働時間」の確認方法

 「1日の所定労働時間」とは、労働者が会社から指定されている1日の労働時間のことを指します。その時間は、就業規則や雇用契約書等に記載されています。
 例えば、始業時刻が9時、終業時刻が18時、休憩が1時間とすると、「1日の所定労働時間」は8時間です。

月間平均所定労働時間の計算例

 以上を踏まえ、Bさんを例に挙げて、月間平均所定労働時間を算出してみます。

Bさんが働く会社の年間所定休日は、土・日曜日と祝日、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始休暇です。

それらを合計すると120日です。そして1日の所定労働時間は8時間です。

この条件を月間平均所定労働時間の計算式に当てはめると算出可能です。

 

{(365日-120日)×8時間}÷12ヶ月

=163.33333…

=163時間

 

時給を計算する過程で、小数点以下の数字が発生する場合、0.5円未満は切り捨て、0.5円以上は切り上げする等の対応が法的に認められています。そのため、今回の例では切り捨てます。

計算式のまとめ

 これまでの説明をまとめると次の計算式で時給を求めることが出来ます。

時給=(月給-手当)÷{(365日―年間所定休日)×1日の所定労働時間}÷12ヶ月

みなし残業代(固定残業代制)の場合の時給計算

 では、みなし残業代制(固定残業代制)の場合は、どのように時給を算出するのでしょうか。以下のように、月給制の場合の時給計算を基に算出します。

(給与総額-みなし残業代-手当)÷[{(365日―年間所定休日)×1日の所定労働時間}÷12ヶ月]

 一例を挙げて計算してみましょう。以下のみなし残業代制で働くCさんがいるとします。

給与総額290,000円

■内訳
基本給200,000円
30時間分のみなし残業代50,000円
扶養手当10,000円
住宅手当10,000円
職務手当10,000円
交通費10,000円
年間所定休日110日
1日の所定労働時間8時間

 以上の条件から時給を算出すると

(290,000円-50,000円-10,000円-10,000円-10,000円-10,000円)÷[{(365日-110日)×8時間}÷12ヶ月]
=200,000円÷{(255日×8時間)÷12ヶ月}
=200,000円÷(2040÷12ヶ月)
=200,000円÷170
=1176.47058…
=1176円

と計算出来ます。

日給の場合の時給計算

 打って変わって、日給の場合の時給計算は以下の計算式で算出出来るため簡略的です。

日給÷1日の所定労働時間

 例えば、日給10,000円、1日の所定労働時間8時間のDさんがいるとすると

10,000円÷8時間=1,250円になります。

時給制の場合のよくある疑問点

 時給制の場合は、元の時給を基に残業代の計算をするのですが、ときに複雑な例もあります。その代表例が時間帯によって時給が異なる場合は、どの時給で残業代を計算すればよいのか、という疑問点です。
ただ、これについては法的な規定はありません。

 例えば、通常時給は1,000円、6~8時の早朝の時間帯に限っては1,050円という方式を採っている勤務先があるとします。その場合、通常時給の1,000円を基に残業代の計算をしても問題ありません。

終わりに

 これまでご説明させていただいた内容で時給の計算方法をご理解いただけたでしょうか。計算式さえマスターすれば、時給の算出は難しくありません。
 もし、本記事に載っていないような給与形態で時給の求め方が不明という方は、残業代請求に強い弁護士に相談するのも一手でしょう。

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