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その裁量労働制、残業代の請求が可能!弁護士への相談がオススメ

更新日:2019年02月05日
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未払いの残業代を請求したら戻ってくる。近年では、珍しい話ではなくなっています。
 しかし、特殊な給与体系の方は「自分には残業代が出ないだろう」と諦めているケースが少なくありません。特に、裁量労働制を採用されている労働者にその傾向が多いようです。

「その裁量労働制、本当に残業代は出ない?」

 今回は、これをテーマにしてお伝えしたいと思います。

裁量労働制とは

 裁量労働制とは、時間で賃金を決めることに馴染まない労働者に対し、実働時間に関わらず「労使協定(労働者と会社の間で取り決めした内容を書面化したもの)」を結んで合意した時間数(所定労働時間)を1日の労働時間とみなす」制度です。

 このあらかじめ決められた労働時間のことを「みなし労働時間」と言います。実働時間が、「みなし労働時間」を上回ったり下回ったりしたとしても、「みなし労働時間」を働いた扱いになります。
 例えば、「みなし労働時間」が1日8時間だとします。その場合、実働時間が7時間だとしても8時間働いたと見なされます。

裁量労働制の導入条件

 裁量労働制には3つの導入条件があります。それらを全て満たしていた場合に裁量労働制が適用されます。

【条件①】労働者自身に仕事量や勤務時間の裁量がある

 裁量労働制が適用される労働者は、自身で仕事量や勤務時間を決定出来ます。そのため、会社が裁量労働制の労働者に出勤時間を指定したり、業務量を指示したりすることは出来ません。

【条件②】両者の同意が必要

 裁量労働制は、労使間(労働者と会社の間)で同意の上、労使協定を結んだ場合に限り適用されます。労使協定を結ぶことなく一方的に会社が裁量労働制を採用し、労働者がそのことを認知していない等の場合は、裁量労働制は適用されないのです。

【条件③】適用が許される職業である

 採用労働制の適用に際しては、「適用が許される職業」でなければなりません。
それを「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類の裁量労働制を紐解いていきながら説明させていただきます。

専門業務型裁量労働制

 専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、労働者に仕事の裁量を委ねる必要がある場合に対して適用される裁量労働制のことを指します。専門業務型裁量労働制が適用される労働者は、専門性が高いことから、業務の遂行方法・時間配分について具体的な指示を受けないのが特徴です。
厚生労働省では、専門業務型裁量労働制の適用職種として以下の19業務に限り、裁量労働制の導入が許されています。

(1)新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2)情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務
(3)新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
(4)衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5)放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6)広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
(7)事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
(8)建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
(9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10)有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
(11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12)学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
(13)公認会計士の業務
(14)弁護士の業務
(15)建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16)不動産鑑定士の業務
(17)弁理士の業務
(18)税理士の業務
(19)中小企業診断士の業務

引用元:https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/

 (1)~(19)をそれぞれ噛み砕くと、次のような職業が専門業務型裁量労働制に適用される、としています。


(1)システムエンジニア
(2)情報処理・通信技術者
(3)記者・編集者
(4)デザイナー
(5)制作プロデューサー・ディレクター
(6)コピーライター
(7)システムコンサルタント
(8)インテリアコーディネーター
(9)ソフトウェア開発者
(10)証券アナリスト
(11)金融商品者
(12)大学教授
(13)公認会計士
(14)弁護士
(15)建築士
(16)不動産鑑定士
(17)弁理士
(18)税理士
(19)中小企業診断士

企画業務型裁量労働制

 企画業務裁量労働制とは、企業の中核を担う部門で企画立案等を行う労働者に対して適用される裁量労働制のことをいいます。専門業務型裁量労働制と同様、業務の性質上、仕事の裁量を労働者に委ねることから裁量労働制が適用されます。
 厚生労働者では、そのような労働者は以下のイ~二までの要件を全て満たしている者、としています。

イ…業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること(例えば対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすもの、事業場独自の事業戦略に関するものなど)
ロ…企画、立案、調査及び、分析の業務であること
ハ…業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、「業務の性質に照らして客観的に判断される」業務であること
二…企画・立案・調査・分析という相互に関連し合う作業を、いつ、どのように行うか等についての広範な裁量が労働者に認められている業務であること

引用元:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-8a.pdf

 上記は具体的にはどのような業務をしている者のことを指すのでしょうか。
 厚生労働省の指針「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」(平成11年12月27日労働省告示第149号、改正:平成15年10月22日厚生労働省告示第353号)によると、次のような業務をしている者のことを指す、としています。

①経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務
②経営企画を担当する部署における業務のうち、現行の社内組織の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな社内組織を編成する業務
③人事・労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務
④人事・労務を担当する部署における業務のうち、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修 計画を策定する業務
⑤財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査 及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
⑥広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務
⑦営業に関する企画を担当する部署における業務のうち、営業成績や営業活動上の問題点等について調査及び分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
⑧生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料 等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

引用元:https://www.mhlw.go.jp/www2/info/download/19991227/bet3p.pdf

要するに、経営企画・人事・労務・経理・財務部等で、調査や分析を行い企業全体に関わる計画を策定するような者が適用されます。

 以上、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」で挙げられた職業でなければ、裁量労働制は適用されません。

残業代が出るケース

 では、どのような場合に裁量労働制でも残業代が発生する可能性があるのでしょうか。

【ケース①】深夜残業

 深夜労働をした場合、裁量労働制が適用された労働者にも深夜割増賃金が発生します。もし、深夜に働いているのにも関わらず別途で賃金が支払われていない場合は、残業代が支払われるかもしれません。

【ケース②】休日出勤

労働基準法では「会社は労働者に週1日の休日を与えなければならない」と定められています。それは例外なく、裁量労働制にも適用されます。
ですので、1週間を通して休日がない等、本来の休みを返上して勤務をしている方は残業代が発生する可能性があります。

【ケース③】みなし労働時間が法定労働時間を超えている

労働基準法では、「労働者の労働時間は法定労働時間(1日8時間、1週40時間)内に収めなければならない」と定められています。
 そのため、法定労働時間を超えたみなし労働時間で労使協定を結んでいるようであれば、超過時間分の残業代が発生する可能性が考えられます。

【ケース④】裁量労働制の条件を満たしていない

 既述のように、裁量労働制は大きく3つの導入条件があります。その条件を満たしていないにも関わらず裁量労働制が採用されている場合は、実際に勤務した時間分の賃金が支払われなければなりません。

残業代請求を弁護士に依頼しよう

 以上のケースに該当しているにも関わらず、「裁量労働制だから残業代を支払わない」と言われる場合は弁護士に相談をすることをオススメいたします。
 
 労働者個人で残業代の請求をすると企業側から「裁量労働制だから残業代を支払わない」と取り合ってもらえない可能性があります。
 ですが、弁護士に依頼すれば、法律に詳しい弁護士が矢面に立って残業代請求の交渉を進めてくれるため、会社は取り合わないわけにはいきません。そのため、スムーズな交渉を期待出来ます。

 また、弁護士は法的な観点から適切なアドバイスをしてくれるため、現状を分析した上で最適な解決策を提案してくれます。

裁量労働制の残業代の計算

 ここからは裁量労働制の残業代の計算についてお伝えします。

法定時間外労働賃金

 裁量労働制で、みなし労働時間が法定労働時間を超えていた場合、超過分の法定労働時間外労働に対しては賃金が支払われなければなりません。
 法定時間外労働賃金は、「1時間当たりの賃金×1.25×超過分の法定労働時間」で求めることが出来ます。

深夜労働割増賃金

 一般の給与形態と同様、裁量労働制の労働者も深夜労働をすれば深夜割増賃金が発生します。深夜割増賃金の計算方法は以下の計算式で求められます。

1時間当たりの賃金×0.25×深夜労働時間

休日出勤分の賃金

 既出の通り、1週間を通して休日がない場合は休日出勤分の賃金が発生する可能性があります。休日出勤分の賃金の計算方法については『休日出勤が「残業扱いになるケース」と「割増賃金率の違い」』をご覧ください。

裁量労働制と固定残業代(みなし残業代制)の違い

 さて、裁量労働制に似て非なる制度として固定残業代制が挙げられます。別称、みなし残業代制とも呼ばれています。
 固定残業代制とは、基本給とは別に、あらかじめ決められた時間分の残業代が含まれている給与形態のことを指します。これだけを聞くと、裁量労働制と何ら変わりないように思えますが、導入する際の条件に大きな違いがあるのです。

 固定残業代制を導入条件は下記です。

(1)就業規則や雇用契約書等の書面に固定残業代制に関する規定が明記し労働者に周知する
(2)「〇〇時間分の残業代、〇万円を含む」といったように固定残業代の明細が記す

 裁量労働制の導入条件に挙げられる、「労働者自身に仕事量や勤務時間の裁量がある」「適用が許される職業である」がないのが大きな違いです。

まとめ

 「裁量労働制だから残業代は出ない」と諦めるのは早計かもしれません。不当に裁量労働制が適用されサービス残業をさせられている可能性も考えられます。
 本記事で「残業代が出るケース」を紹介したので、それに該当するようであれば残業代の請求を検討してみてください。その際は、ぜひ弁護士に相談をすることをオススメいたします。

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