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残業代請求の時効は2年しかない…そこで知っておいた方が良い2つのことのアイキャッチ

残業代請求の時効は2年しかない…そこで知っておいた方が良い2つのこと

残業代請求の時効は2年しかない…そこで知っておいた方が良い2つのことのアイキャッチ

 最近、某大手広告代理店が問題になりましたが、サービス残業をさせているブラック企業が非常に多いです。残業代を支払われていないなら、労働者は会社に過去の分も含めて残業代を請求出来ることをご存知ですか?

 そこで気をつけていただきたいのは、残業代の請求には「時効」があるということです。残業代請求を考えている方の中には「気まずいから退職する時にまとめて残業代を請求しよう」「残業代の請求の仕方が分からないから色々落ち着いたら考えよう」等といって、残業代の請求を後回しにしている人が多いようです。

 それでは、後回しにしているうちに時効が進んで損をします。そこで、残業代請求の時効についてと、時効にとって知っておいた方がよい2つのことについて説明していきます。

残業代請求の時効は2年

 労働基準法115条では「賃金や災害補償その他の請求権は2年間」とあります。残業代請求については、これが該当します。

 つまりは、残業代の請求権(時効)は2年しかないということを意味します。過去の残業をまとめて請求しようとしても基本的には2年前までしか請求を遡れません。それは同時に、残業代の請求を後回しにしていると、請求出来るはずの残業代が徐々になくなってしまうということを意味します。

 それでは、実際に残業代請求の時効について例を出してみます。

 現在を2017年4月1日とします。
時効は2年なので2014年4月中の残業代は請求可能です。しかし、残業代の請求を5月…6月……8月と、どんどん先延ばしにしてしまうと、請求出来る残業代の期間も24ヶ月…23ヶ月……21ヶ月と減っていきます。

例えば、1ヶ月で1日1時間の残業代が20日間払われていなかったとします。1時間当たりの賃金を1,200円で給料を計算すると

「20時間(1ヶ月の残業時間)×1200(1時間あたりの賃金)×1.25(割増率)=30,000」

となり、1ヶ月で30,000円分の損してしまうことになります。未払い残業代が多い人はもっと損をすることになります。

例外で時効が2年以上になる

 しかし、一部例外で残業代請求の時効が2年以上になる場合もあります。

不法行為で残業代が未払いだった場合

残業代の未払いが悪質であり不法行為に該当すると認められた場合は、残業代請求の時効が3年になることがあります。

ここでいう不法行為とは、会社が残業の発生を把握していながら残業代を故意に払っていないことや、残業時間も含めた勤怠管理が出来ていないこと等が該当します。不法行為が認められると、残業代(賃金)として請求をするのではなく、損害賠償として請求することになり、時効が3年になります。

そうなると、ほとんどの未払い残業代が不法行為に該当すると思われるかもしれませんが、実際のところは、残業代請求で3年間と認められた事例は少ないです。
そのうえ、不法行為として会社と話をすると揉めてしまい、裁判に発展することも考えられるため、3年間で請求することはあまり現実的でありません。

それでも3年間で請求したいというのであれば、弁護士と話し合って、3年間分を遡って請求してみるのも一手です。

会社が「時効の援用」をしなかった場合

 残業代の時効は2年となっていますが、正確に言うと、会社が「時効の援用」をした時に時効2年が成立します。「時効の援用」とは、時効の制度を利用する意思を相手に伝えることです。

 この場合だと、会社が労働者に「残業代請求は時効2年」であることを伝えることに当たります。しかし、労働者が10年分の残業代を請求して、会社が「2年の時効」を知らずに10年間の残業代の支払いにうっかり応じてしまった場合、2年以上の残業代を受け取れることがあります。

 但し、ほとんどの会社では、社会保険労務士や顧問弁護士を雇っているので、時効のことを知らずにそのまま応じてしまうことは、まずあり得ないと思った方がよいです。

知っておいた方が良い2つのこと

 これまでは時効について説明してきましたが、ここからは、時効があることで、あらかじめ知っておいた方がよい2つについて説明していきます。

⒈ 「証拠」を集めている間も時効が進む

 残業代の請求をするためには、まず「証拠」を集めなければいけないのですが、その前に知っておいた方がよいこととして、この証拠集めをしている間に時効は進むという点です。

 しかし、ほとんどの場合、請求をしようと思ったその時に、十分な証拠が揃ってはいない可能性が高いです。そして、何が証拠になるのかを把握していなければ、証拠を集めること自体にも時間がかかってしまい、時効もどんどん進んでしまいます。

 そうならないためにも、何が証拠になるのか?何が証拠にならないのか?について説明していきます。
まず始めに、証拠を集めるためには以下のポイントに注意が必要です。

・隠される可能性があるので、証拠集めは慎重にやる
・コピーが自分の手元にあることが最低条件
・証拠がない状態で未払い請求は出来ないに等しい

 上記のことを念頭に置いておいてください。

未払い残業代請求に有効な証拠

 証拠に出来るものには様々なものがありますので、その中で有効な証拠4つを紹介します。

① 雇用時の書面

 入社した時に交わす「雇用契約書」や「労働契約書」などは有効な証拠です。これには給与の計算方法や残業代支給についての取り決めが記載されているからです。
これが交付されている場合は保管しておくとよいでしょう。

② 就業規則のコピー

 就業規則とは、労働時間や給料、休憩時間、休暇、罰則の条件等、会社の規則が規定されている書類、つまり労働者と会社の間のルールブックです。
これらの情報は未払い残業代の請求のために必要な情報になるので、その写しがあると有効な証拠となります。

③ 始業・終業時刻を立証する資料

 未払い残業代を請求するためには、労働者側で実際の労働時間を証明する必要があります。そのため、実働労働時間の証拠となる始業・終業時刻を立証する資料を持っていることは必須条件になります。
具体的には以下の4つがあります。

(1)タイムカード・勤怠記録・日報
 会社が労働者の労働時間を管理・把握する方法には色々ありますが、それに用いる手段としてタイムカードや勤怠表、申告書、日報等があります。これらは労働時間を算出する証拠としては有効です。

 しかし、これらの方法を使っていても、しっかりと労働時間の管理・把握をしていない会社もあるため、その場合は、算出が難しく証拠として不十分な可能性があります。

(2)業務用メールアカウントの送受信履歴
 メールは、送受信する度にその時間が記憶されます。業務で使用していたメールアカウントでの送受信履歴も、その時間労働していたと見なすことができるので、証拠として有効です。

(3)帰宅時のタクシー使用履歴(領収書)
 終電がなく、やむなくタクシー等で帰宅した時、会計時にもらった領収書も証拠として有効です。これは、多くのタクシー会社の領収書は乗車時間帯が記載されているため、退社時間を証明出来ます。

(4)日記などの備忘録
 労働者が日々つけている日記等の備忘録の中で始業・終業時間を記載しているものがあれば、それも労働時間の証明になり得るので、証拠として有効です。

④ 残業時間中の労働内容を立証する資料

 もし退勤時刻を証明できたとしても、「勝手に残ったんでしょ?」「それまでの間、遊んでたんじゃない?」等の言い分で会社から反論される可能性もあります。
そうなった時のために、労働者側では残業時間中の労働内容を証明できる資料があることが有効です。
具体的には以下2つの資料です。

(1)残業指示書や残業承諾書
・上司などからの残業指示書や指示メール、指示を走り書きしたメモ
・残業を承認した内容の書面

上記の資料は、上司の指示の下、残業をした証拠として、証明するには有効なものになります。

(2)残業時間中の業務内容が分かる書面
・残業時間中に送信した業務的なメール履歴
・業務日報等、残業時間中の業務内容が分かる資料
・上司が残業を認識していることを裏付けできる資料等

このような資料も、残業時間中に実際働いていたことを証明出来るので、証拠として有効です。

未払い残業代請求の証拠になりにくいもの

以下のような2つは証拠になりにくいです。

① 走り書きメモやアバウトすぎるメモ
 日記や備忘録は残業代請求をするのに証拠となり得ますが、これが走り書きで、本人以外の人が見たら何のことを書いているか分からない場合や、メールの送信時刻や勤怠記録と著しく矛盾があり内容に不正確さがあると、証拠になりにくいです。

また、一度作成した日記や備忘録をあとになって修正するのは、正確性に欠けるので極力避けた方がよいです。

② 私的なメール送信記録
 業務用アカウントでも、友人との間で業務に関係のない私的なやり取りの記憶は、労働時間の算出をする証拠としては弱いです。

未払い残業代請求するための証拠がない場合

 上記のような証拠が手元にないからと言って、残業代の請求が出来ないわけではありません。会社には、労働時間の管理をする義務があり、労働時間の記録を3年間は保存する義務があります。

 そして、労働者が会社に対して「労働時間の管理・把握に関する資料」を要求してきたら、会社はその要求を受け、労働者に資料を提出する義務があります。そのため、手元に証拠となる資料がない場合は、会社側に請求をすることで証拠資料を集めることが可能です。

 しかし、会社が管理しているからといって、労働者側で何もしなくてもいいという考えはしない方がよいです。なぜなら、裁判において立証する責任は請求する側にあるからです。そのため、会社に証拠資料の請求をして集まらなかった場合、請求は認められない可能性があります。

 但し、このような場合、残業代の未払い請求とは違った方法で、請求することも可能です。例えば、労働時間の管理・把握をしていないことを不法行為として訴える方法等があります。
なので、自分で証拠が集められない場合や、証拠集め自体に手間取っている場合なども含めて弁護士に相談してみることをお勧めします。

 弁護士でしたら、証拠の集め方から残業代の細かい計算、残業代請求の手法まで相談にのってくれるうえに、特殊な契約で隠れている残業代や遅延金等も見つけて計算してくれます。もちろん時効についても詳しく教えてくれますので、弁護士に相談することは得策といえます。

⒉ 時効を止める方法がある

 証拠が集まって、残業代請求について会社と話し合いが始まったからといって、そこで時効が止まるわけでありません。その間も時効は進んでいきます。
しかし、実は時効を止める方法があります。残業代請求を考えている方は、このことも知っておいてください。

 時効を止める方法には、裁判を起こすか、会社との話し合いの中で時効中断の承認をもらう方法等があります。
時効期間の満了間際で、裁判を起こす時間がない場合は、「催告」で時効を止めることも出来ます。催告には、時効を6ヶ月間成立させない効果があるためです。

 また、会社に残業代の請求をすることで、6ヶ月間時効を延ばすことも出来ます。残業代請求では、話し合いが長引くこともあれば、裁判にまで発展することもあります。そうなるとさらに時間がかかります。

 しかし、この延長期間内に裁判を起こさなければ、そもそも、時効の権利は消えてしまうので、気をつけておいた方がよいです。
この時効を止める方法についてはこちらで詳しく説明しているので併せて読んでみてください。

まとめ

 時効が2年しかないことから、残業代請求をするのに時間がかかってしまうと時効が過ぎてしまうことがあります。
そうなると損をしてしまうのは労働者です。損をしないためにも、事前に証拠は取っておくとよいでしょう。ぜひ、検討してみてください。

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