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会社の強制参加の飲み会・イベントには残業代が出る!その判断基準とは?

更新日:2024年02月19日
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 近年ライフスタイルの多様化が進み、プライベートを大事にしながら仕事をする人が増えてきました。
そんな中、アベノミクスの影響か、飲みニケーションが盛んになっています。新入社員を対象にしたアンケートでも、75%近くが上司と飲みたいと答え、その影響を受けてか、飲み会を企画する会社が増えてきました。そのため、「上司と部下の親睦を深めるために風通しの良い会社にしよう!」を合言葉にコミュニケーションの場を飲み会に求める風潮があります。

確かに、働きやすい環境を作るためにはコミュニケーションは大切です。しかし、一方ではこんな声もあります。


【35歳女性会社員Aさんの声】
私は、勤務時間外は全てプライベートだと思っています。だから、仕事場の飲み会はなるべく参加したくありません。だけどこの前、歓送迎会があり、「全員参加ね!」と上司からしつこく言われ、嫌々参加しました。

そしたら、最悪の歓迎会で…。会社では偉そうにしている上司のオジサンたちが、お酒の場では“ただのオジサン”と化していました。それで、会社ではキャリアウーマンな先輩女性が、まるでキャバ嬢のようになっていました。

そんな中、私は隅っこで一人飲んでいたら「Aちゃん、こっちおいで~」とオジサンに呼ばれる派目に…。
「早く終わらないかなぁ」と時間ばかりが気になりましたが、「業務命令」だと自分に言い聞かせて、なんとかやり過ごしました。

残念だったのは翌日です。てっきり残業代が付くと思っていたら、「残業代なんて付くわけないじゃん」とバッサリ言われ、逆に「そういえば参加費まだ払ってなかったよね?」と飲み会の費用とお花代として、5000円も徴収されました。
これって、おかしくないですか?なんで、職場の行事で「全員参加」と強制的に参加させられ、残業代が付かないのか理解出来ません。

飲みニケーションが盛んになっているがゆえに、一方でこのような声があるようです。確かに強制参加させられて、こんなセクハラみたいな飲み会だったら辛いですよね。

Aさんが言うように、実は会社で強制参加させられた飲み会やイベントは、場合によっては残業代が出る可能性があります。その「場合」というのは、「残業の定義」から紐解いていくことによって、残業代が出るかどうかが決まってきます。

残業の定義とは

残業の定義は、基本的に法定労働時間である1日8時間を超えて働くことをいいます。
ここでテーマになっている、強制参加させられた飲み会やイベントが残業扱いになるためには、まず社内の労働時間と合わせて8時間を超えていなければいけません。

労働時間の定義とは

労働時間とは「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」とされています。すなわち、会社に命令され場所を拘束されている全ての時間が労働時間に該当します。

強制であれば残業の対象になる

それでは、強制の飲み会やイベントが労働時間と言えるのかどうかについては、以下の判例を基準に解説していくと分かってきます。

三菱重工長崎造船所事件(平成12年3月9日)最一小判
労働時間とは労働者が指揮命令下に置かれている時間をいい、客観的に判断する。
そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段のない限り使用者の指揮命令下の置かれたものと評価できる。

この判例は、作業に入る前の「着替え・散水の時間が労働時間にあたるか」が争われた問題でした。強制飲み会やイベントとは違いますが、労働時間にあたるかどうかの判断する基準となる判例です。

少し分かりづらいので、この判例を要約するとこのようになります。


作業に入る前の着替え・散水を、社内で行うように、会社から命令された場合や社内でせざるを得ない場合は、この作業は、特別な事情がない限り会社の指揮命令下に置かれたものとして扱う。
この行為が所定労働時間外で行うものとされている場合であっても同じである。

労働時間かどうかは、やはり「指揮命令下に置かれている」かどうかが大きなポイントになってきます。
それでは、「指揮命令下の置かれている」とはどのような状態なのでしょうか?

この判例では、「①会社で行うように」「②会社から命令された場合や社内でせざるを得ない場合」の2つの条件が揃った時に「指揮命令下の置かれている」としています。
ちなみに、①については必ずしも社内である必要はなく、会社から場所の指定をされていれば条件は満たします。また、仕事の内容として「作業に入る前の着替え・散水」が挙げられていますが、これはあくまでも例であって、もちろん仕事の内容は問いません。

飲み会やイベントの誘い方による

ここでは実際に、この基準に合わせて、強制飲み会やイベントが労働時間に該当するのかどうかをみていきます。
上述の、「①会社で行うように」、「②会社から命令された場合や社内でせざるを得ない場合である」の2点を一つずつ紐解いていきます。

①会社で行うように

➀については、飲み会やイベントは場所を指定して開催されるものです。よって、会社から場所の指定をされているので条件は満たします。

②会社から命令された場合や社内でせざるを得ない場合

②は、飲み会やイベントの場合に言い換えると「②会社から行くように命令された場合や行かざるを得ない場合」となりますよね。
すなわち、強制参加させられていたら②の条件を満たすと言っていいでしょう。

しかし、飲み会やイベントの誘われ方によって条件を満たすか満たさないかは変わってきます。そして誘われ方も様々なため判断が難しいところです。

強制参加には2通りあり「直接的な強制参加」「間接的な強制参加」に分かれます。

「直接的な強制参加」とは、例えば次のような場合です。
・会社からの命令で、絶対に参加するようにいわれている。
これは②の「会社から命令された場合」に該当します。

また「間接的な強制参加」とは、以下のような場合です。

・「自由参加」ではあるが、不参加だと給料を減額されたり、賃金を控除されたりする。
・「自由参加」ではあるが、参加しないと怒られる、注意されるなどパワハラの標的になる。
・「自由参加」ではあるが、参加しないと無視されるなど職場いじめがある。
・「自由参加」ではあるが、不参加だと「協調性がない」といわれ、協調性不足という人事評価をされる。
・社会行事、イベントの幹事、実行委員会などの指名をされ、欠席できない。

これらは②の「行かざるを得ない場合」に当てはまります。

したがって、「直接的な強制参加」の場合も「間接的な強制参加」の場合も労働時間になります。

「強制参加であること」の証拠を収集する

強制参加に該当するとして、残業代請求を考えている人は、まず請求をするための証拠を集める必要があります。したがって、飲み会やイベントに強制参加させられていることが分かる証拠が必要です。
証拠は以下のようなものが有効です。

・上司から飲み会やイベントへの参加を強要する命令をされた内容のメール、LINE
・社内行事へ不参加となったことを理由に行われたパワハラ、人事処分、評価などを示すもの

残業代はしっかりもらうべき

今回は強制参加の飲み会やイベントの場合の残業について説明してきましたが、もしこのような強制参加を強いられていることが多いようであれば、強制参加の分も含め自分がどれくらいの残業をしているのか把握してみるのがよいでしょう。

また、未払いの残業代があるから請求したいという方は、請求した日から過去2年(24ヶ月)までしか遡れない時効制度があることに気をつけなければいけません。
そのため、退職を待ってからでは時効で請求が出来ない可能性があるので早めに行動することをお勧めします。

残業代に関する困りごとは弁護士へ相談を

飲み会やイベントへの参加を強制された場合、残業代が支払われなくても従ってしまう方が多いようです。

しかし、労働時間外に行われたり参加を強制されたりすれば、飲み会やイベントがいかに会社のコミュニケーションに役立つものであっても残業代は支払われるべきものです。

残業代請求できるか不安な方は、信頼のおける第三者に助けを求めることが重要です。

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労働トラブルに詳しい弁護士に相談し、自分の身を守りましょう。

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