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残業代請求の失敗例:失敗しないためにするべき3つのこと

更新日:2020年07月16日
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 残業代請求をするなら失敗をしないようにしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
 残業代請求の失敗するケースを知ると、以下のようなメリットが生まれます。

・残業代をより多く取り戻せる
・余計な手間が省ける
・請求にかかる費用を抑えられる

 今回は失敗例を紹介した上で、残業代請求をする際にするべきことをお伝えします。失敗例をおさらいして、残業代請求を成功させましょう。

残業代請求の失敗例

 まず、残業代請求の失敗例をご紹介します。

【失敗例①】弁護士に依頼せず自分で請求する

 そもそも残業代請求は、以下のような手順で進めます。

①証拠の収集
②証拠に基づく残業代の計算
③会社との交渉
④交渉で合意出来ない場合は労働審判・訴訟

それぞれの手順には、法的知識が必要になります。ですので、法律の知識を持っている弁護士に依頼をした方が成功しやすいです。しかし、法律に精通しない方が、単独で残業代請求をすると、計算を間違って未払いの残業代より少ない金額で請求したり、会社に対して有利に交渉を進められなかったり等、失敗するケースが少なくありません。

【失敗例②】証拠が不十分

 残業をした証拠が不十分で、残業代請求に失敗するケースがあります。
 残業代請求をするためには、労働時間を立証する証拠を用意しなければなりません。それは、請求者に立証責任(確実な証拠で証明する責任)があるためです。

【失敗例③】時効が消滅している

 残業代の請求には3年の時効があります。給料日から3年を過ぎると時効消滅により、残業代の請求が出来ません。
にも関わらず、時効があることを知らず退職後等に残業代請求をして、未払い分の残業代を全て請求出来ず、失敗するケースがあります。

【失敗例④】残業代請求に強くない弁護士に依頼

 残業代請求は、弁護士に依頼した方が成功する可能性が高くなります。とはいえ、弁護士は千差万別です。医師が、内科や消化器科等の専門医に分かれているように、弁護士にもそれぞれの得意分野があります。遺産相続を得意とする弁護士もいれば、離婚に関する知識が豊富な弁護士も存在します。
 ですので、残業代請求に強くない弁護士に依頼をすると、本来取り返せたはずの額より、少ない残業代しか回収出来ない等の失敗をするケースも否定出来ません。

【失敗例⑤】弁護士に依頼して赤字になる

 弁護士に依頼をする際は、赤字にならないように、弁護士費用より多くの残業代を回収出来るかどうかを見極めなければなりません。
 ですが、回収出来る残業代が少ないにも関わらず、弁護士に依頼をして赤字になって失敗に終わる可能性も考えられます。

【失敗例⑥】残業代が発生しない雇用形態

 そもそも残業代が発生しない雇用形態であることを把握しておらず、残業代請求に失敗するケースが挙げられます。
 残業代が発生しない可能性がある雇用形態は以下が挙げられます。

事業場外みなし労働制

 事業場外みなし労働制とは、実際の労働時間に関わらず、「労使協定(労働者と会社の間で取り決めした内容を書面化したもの)を結んで合意した時間数(所定労働時間)を1日の労働時間と見なす制度です。
 実際の労働時間に関わらず給与が決められているため、残業代が発生しない可能性があります。
 事業場外みなし労働制は、仕事の性質上、労働時間の把握が困難な外回りの営業マンや事業場外で勤務する労働者に適用されます。

裁量労働制

 裁量労働制とは、時間で賃金を決めることに馴染まない労働者に対し、実働時間に関わらず「労使協定(労働者と会社の間で取り決めした内容を書面化したもの)を結んで合意した時間数(所定労働時間)を1日の労働時間とみなす」制度です。
 裁量労働制は、デザイナーやシステムエンジニア等の技術職や、経営の中枢にかかわる企画立案を行う労働者等に適用されます。

 裁量労働制が採用される労働者の場合、本人の裁量に任せて労働時間を管理した方が、効率的な働き方を実現出来るので、個別に残業代をしません。

 ですので、残業代が発生しない可能性があるのです。

管理監督者

 管理監督者とは、監督もしくは管理の地位にある者のことをいいます。例えば、部署を統括する立場にある労働者や、会社経営に関与している役員等が管理監督者に該当します。

 管理監督者は、「法定労働時間を超え、または法定休日に労働させた場合は、所定の割増賃金を支払わなければならない(労働基準法37条)」が適用されません。そのため、残業をしても残業代が発生しないのです。
 それを知らずに、残業代請求をして失敗するケースがあります。

【失敗例⑦】みなし残業制

 みなし残業制とは、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ決められた時間分の「みなし残業代」を支払う制度のことをいいます。
 みなし残業制の場合、あらかじめ決められた時間を超えた残業をしない限り、残業代は発生しません。
 それを知らず、残業代請求を行い失敗するケースがあります。

【失敗例⑧】一定の残業代が含まれる年俸制

 年俸制とは、年単位で契約して労働賃金を決める制度のことをいいます。一口に年俸制といっても、「年俸には、ひと月あたり〇日分の時間外労働手当を含む」といったように、一定の残業代を含む年俸制もあります。

 その場合は、その一定以上の残業をしないと残業代は発生しません。それを把握しておらず、残業代請求をすると失敗する可能性があります。

【失敗例➈】労働基準監督署頼みにする

 「労働基準監督署なら未払い残業代に悩む労働者を救ってくれる」と考え、労働基準監督署頼みにすると残業代請求に失敗する可能性があります。
 そもそも労働基準監督署は、企業に対し是正勧告をしたり、刑事的な責任追及をしたりする機関です。
 そのため、残業代を回収する機関ではないのです。

残業代請求を失敗しないためにするべき3つのこと

 では、以上のような失敗をしないためには、どのようなことをするべきなのでしょうか。以下の3つが挙げられます。

【失敗しない①】自分の雇用形態を確認する

 既述の通り、裁量労働制や管理監督者のように残業代が発生しない雇用形態の可能性があります。ですので、残業代請求の準備をするまえに、自身の雇用形態を確認しましょう。
 雇用形態は、雇用契約書や雇用条件通知書、就業規則等で確認が出来ます。

【失敗しない②】労働基準監督署の役割を認識しておく

 残業代請求をする際、労働条件の改善等を行ってくれる労働基準監督署を頼りにしようと考える方もいるでしょう。しかし、前出の通り、労働基準監督署は企業に対し是正勧告をしたり、刑事的な責任追及をしたりする機関です。本人に代わって、残業代を回収する機関ではありません。

 このような役割を理解することで、労働基準監督署田頼みになって残業代請求に失敗するおそれを回避できます。

【失敗しない③】在籍中に残業をした証拠を入手する

 残業代請求を成功させるためには、証拠集めは欠かせません。残業をした証拠は社内に偏在しているため、退職してから集めるのは困難です。
 シフト表や日報等、残業をした証拠になる資料は、在籍中に入手しておきましょう。

残業代請求に強い弁護士への依頼も一手

 以上に挙げた、失敗しないためにするべきことを行うのも重要ですが、成功率をさらに上げる方法があります。
 それは残業代請求に強い弁護士に依頼することです。そのような弁護士は、残業代請求を多く経験しています。その経験に基づいて、交渉を有利に進めていけるノウハウを持っています。
 ですので、みなさんに代わって、会社とのやりとりを有利に進め、残業代請求を成功に導いてくれることが期待出来るでしょう。

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